第15話 綾香の本音(桃華side)
「橋本さん。ちょっといい?」
教室で授業の準備していると、松山さんに声をかけられた。
遠足の時のこともあって、身構えてしまう。
「なに?」
そう言いながら、松山さんについて歩く。
ーーードンっ
急に背中を押されて、空き教室にいれられた。
教室の中には数人の女子がいた。
「あんた、紗季さんのなんなの!?」
「目障りなの」
「生意気!」
口々に言う女たち。
「みんな、紗季のファンだし、好きなの。橋本さんよりも、前から紗季が好きなの。わかる?それを、橋本さんは急に来て、紗季の横にいるんだよ?」
そう言いながら、松山さんが近づいてくる。
「それに、紗季とペアストラップを持つなんて……!」
松山さんに私のスマホを盗られてしまう。
そして…………
ーーーぶちっ…
ストラップを松山さんにとられてしまった。
「橋本さんが持ってて良いものじゃないから、とってあげるね!」
松山さんは窓に近づくと、そこから、ストラップを投げ出した。
校舎の3階から投げられたストラップは、ガサッと言う音をたてて、植木のどこかに落ちた。
「これに懲りたら、紗季には近づかないで」
松山さんは捨て台詞を言いながら、教室にいた女たちと出て行った。
私が口を挟む間もなく終わった。
紗季とのペアストラップ…私の宝物…。
宝物を捨てられた怒りと悲しみの感情。
紗季に言いたいけど、言えない……。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
ーーーキーンコーンカーンコーン
授業開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
私はしばらく呆然として動けなかったが、何とか重い足を動かして教室に戻った。
さっきの出来事で頭が一杯で、授業なんか頭に入ってこない。
(これから、どうしよう……どうなるんだろう……)