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縄張り紀行「仮」  作者: 夢辺 流離
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落水 那帆 2

 その日も我輩はキャンパス内を見回っておった。

縄張りの見回りは日課、実のところ散歩なのだが得てして事件に遭遇してしまうのである。

経済学部棟から学食、共通科目棟まで一直線に続く通りを歩いていると、


「いえ、あの結構ですから」


「そんなこと言わないでさぁ。飯奢るからさぁ」


 そんな言い合いが聞こえてきて、焦れて来たのか実力行使に出ようとした男の手は、那帆(但しこの時は未だ知らにゃい)へと届くことはなかった。


 男に声をかけられてホイホイついていくようにゃら、

大学生にもなれば自己責任、社会勉強かにゃとおもわにゃくもないが、力づくでどうにかしようとしているのにゃら見過ごすわけにはいかぬ。

初速からトップスピードで駆け出すとジャンプ一閃!

空中でねこパンチ、男の手を撃墜したのである。


   「(安心せい、峰打ち(肉球)でござる)」


 警官でもいきにゃり発砲はせず、まずは警告であろう?

これで引き下がらずになお手を出してくるようなら・・・


「(今宵、我輩の三本すすきナゴ六は血に飢えておる)」


 能ある鷹ではないが、日ごろ仕舞っている爪をぬっと出し、いつでも飛び掛かれるように身を伏せ、後ろ足に力を溜める。

全身の毛は逆立って、尻尾は重力に逆らいながらクネクネとうごめいて、フーっと威嚇する。

 ちなみにこの時、那帆は目を輝かせながらシャドーボクシングのようにシュッシュッとポーズをとっていたが、

背後にかばうようにしていた “ 教 授 “には知りようがない。


 「おい、コイツ“ 教 授 “だぞ!手を出したら大学にはいられなくなるぞ」


 よく見ると、男には連れがいたようで、その内の一人が

そう叫ぶと彼らは顔を青くして、逃げ出して行った。


 那帆は入学前であったので、男の台詞の意味がわからずキョロキョロと辺りを見回していた。


 ふむ、またしても機会は失われてしまった。


「またつまらぬものを斬ってしまった」


 ーーー言ってみたかったのだが。

まぁ無用にゃ血を流さずに済んだということにしておくか。


「えっと、ねこさん。助けてくれてありがとね。ねこさんって賢いんだね」


 ああ、うん。ほかのねこ達に同じことを求めてもらっちゃ困るんだけど。


 声をかけられて那帆のほうへと振り向くと、

那帆は我輩を抱き抱えた。

どこか恐る恐るといったていで、我輩としては逆に怖いのだが。

我輩、誰にでも爪を出すと思われるのは心外である!

が、どうやら単純に触り慣れていにゃくて、

力の入れ具合とかが分からにゃかっただけのようである。


「えへへ・・・」


 我輩が暴れにゃいので安心したのか、

気持ち良さそうに我輩を触る那帆。


 まぁ、男三人に囲まれて怖かったのであろう。

しばらくはこうしていてやるか。



 用語:三本すすきナゴ六


 とあるねこ?がキャンパス内のベンチに置き忘れられた有名な小説を読んでハマってしまった。

それ以降時代小説にハマり、様々な苦労を乗り越え目的を果たす。

色々な作品が混ざり合った結果生まれた幻想の刃が三本すすきナゴ六である。


 一度振るわれれば、風に揺れる三本のすすきのような軌跡を描き、両の手計六本の刃があることから名付けられた。

元になったのは関の、「三本杉孫六」と思われる。関市は今でも包丁などで有名。


「今宵の~~は血に飢えている」の~~の部分は本来孫六ではない。

やはり" 教 授 "が言ってみたかっただけである。


 なお、置き忘れの小説は読み終わった後にちゃんと持ち主の元に届けた模様。


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