真実
「熊方さん!」
農作業をしている男性に声をかける七菜。
男性、葉はしばらく手を止めず作業を続け、切りのいいところまでやってようやく手を止めて振り向いた。
「何度言われてももう復帰する予定はないっ」
腕を組み目をとじたままはねつける葉。
「熊方さん、お久しぶりです。ちょっと話が見えないんですけど」
「ん?おお、いつもの代理人じゃないのか悪かったな。」
ようやくこちらを見て勘違いに気づき謝る。
「七菜さんか、君が望むなら断るわけにはいかないな。こっちだ」
鍬をほっぽって小さな小屋に向かう葉。
「あの、ちょっと!」
慌てて小走りで追いかける七菜。
「君達には悪いことをしたなぁ、一度謝りたかったんだけど事務所の所長さんらに嫌われてね。テレビ局からはスカウトが来るんだけど、あれだけのことはもうできないっての。はい、これだ」
渡されたのは自分も持っていたあの番組の台本だ。但し元々は、だが。
書き込みだらけで真っ黒、追加の資料が元々の台本の3倍は厚さがある。
わけがわからないなりに受けとったソレをゆっくりと開く。
「何、これ……?」
どのクイズも覚えがあった。そしてどの問題を誰が答えるかまで、問題ごとの各チームの点数までかかれていいる。部分的に違うところもあったが、概ね台本通りにことが進んでいたことがわかる。
……つまり七菜たちが負けるところまで予定通りだったということだ。
「すまなかった!俺の夢のために君達を利用した。悪いとは思っているが後悔はしていない」
悪びれることなくそう言った葉。
「一体どうやって…」
「ちょっと貸してみろ。ええと、ここだ。一応個人情報になるかもだから自分の分だけにしてくれよ」
そう言って開かれたページには七菜自身の詳細なプロフィールが10ページ分程あったのだ。
「勘違いしないでくれよ、テレビやラジオでの発言なんかを纏めただけで危ない手段とかは使ってないからな」
苦い表情で葉が言う。
「これがあの時の参加者分あるとしたら……。あれほどの物事をなすのにこれだけの努力をされていたのですね。」
「いや、これだけ準備しても結局は出たとこ勝負だったよ。専門の学校で勉強でもしてないとわからないだろうと思っていた問題を予想外の解答者に答えられたりね。あの番組は君達の行動によってできたものだった。それが全てだ」
「今日ここに来て良かったです。でも私が来た用件は別です」
「え?」
葉の間の抜けた声が響いた。




