" 教授 "
やっぱりにゃんこが好きなんです。
某作品を拝見してねこ?を書きたくなりました。
我輩は "ねこ" ではない。
名前もない。
―――だが、愛称はある。
「あ、 "教授" だ。 おーい!!」
「え、あ、ちょっと!」
凍てつく冬の寒さの中、
空気を暖める日差しのような柔らかく明るい声が響き、
どこか慌てた様子だが、ちょっと低めの声が続く。
「おい那帆、幾ら顔馴染みでも目上の人にその対応はまずいって。」
少なくとも私まで巻き込んでくれるなよ、とその目が雄弁に語っていた。
できるだけ―――呼びかけた方の女性、那帆というらしい―――の影に隠れるようとしているようだが、
那帆より背が高いため、あまり効果はないようだ。
那帆の肩に手を置きながら、キョロキョロと辺りを見回している。
「雛ちゃん、どこを見てるの?こっちこっち。」
そう言って那帆が指差したのは雛が見ている方向で。
―――但し、腰より下だった。
「ねこ?」
雛がホッとしながらそう尋ねる。
最も解答を求めた訳ではなかったが。
那帆は腕を水平に上げ、人差し指だけを立てると、
チ、チ、チと自分で言いながら左右に振る。
少しイラっとしつつも雛は続きを待った。
「 "教授" はねー、ただ者、ん?ただねこ?ただニャンじゃないんだよ。
うちのキャンパスの有名ニャンにゃんだから!」
人の代わりにねこ(ニャン)は百歩譲って良いとして、
ナ行をニャにするのは会話が面倒だから止せ、と雛がヘッドロックをかける。
「痛い、痛い。ギブギブ。」
雛の手をタップする那帆を、
雛はたっぷり10秒ほどかわしてようやく手を離してやった。
「なんで、教授?」
雛は本来の寡黙な、所謂クールな自分を取り戻していた。
「それはねー、」
会話も途中で走り出した那帆。
" 教授 "は逃げる様子もなく、
那帆に脇?を抱えられて連れてこられた。
" 教授 " は基本的に黒ねこであるが、
胸元が縦に一直線に白く、また後ろ足の先も白い、
所謂 " くつした " で、
何より彼の右目の周りだけ円上に縁取るように白いのだ。
モノクル ( 片眼鏡 ) をかけた紳士の佇まいは外見だけではなく、
よっていつの間にかついた愛称(呼び名)は" 教授 "である。
「教授、今日も見廻りお疲れ様であります。」
那帆はそう言って、
フニャッとしたどこかしまらない敬礼をした。
「···なんで、見廻りしてるのが、" 教授 "なのよ」
そんなごく普通の呟きは空に吸い込まれて消えていった。
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