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雨の日

作者: _瑠姫



出来ることならば、雨の日は家の中にいたい。

家の中で、一人がけのソファに腰掛けていたい。

聞こえるのは、雨の音だけがいい。

何も急いですることがないともっといい。

一人で、ぼうっと1日を過ごすことができれば、湿気も頭痛も気にならない。

出来ることならば、雨の日は家の中にいたかった。









6月後半。その日は雨だった。

学校に行くときは降っておらず、自転車で登校した。

ところが、2時間目あたりから静かに降り始め、今日の授業がすべて終わった今も降り続いている。

頭の深いところで痛みが強くなっていく。

早く帰りたい。

友人たちと挨拶を交わすと、鞄を持って足早に教室を出た。


下駄箱からローファーを取り出したところで気がついた。


傘を持っていない。


深いため息をつき、しょうがないかと諦めた。

走るしかない。

濡れるだろうが、学校で雨宿りをしている気分でもない。

鞄を肩にかけなおして、1歩目を踏み出した。




「あ、あの」




背後で声がした。立ち止まる。

振り向くと、同じクラスの男子がいた。




「傘……」



目と目が合う。あちらの視線が揺れた。



「貸す、から」



「ちょっ…え、あの、」



「また明日!」



クラスメイトは、そのまま走り去った。

冷たい雨は容赦なく彼の体を濡らしていった。

受け取ってしまった、傘。


明日何てお礼を言って返そう。

彼は私のことを知っていたのだろうか。

誰にでもそういうことをする優しい人。



傘を貸してもらえるなら。

一言でも、彼としゃべれたなら。

明日話しかける口実ができたなら。

雨の日も悪くないかもしれない、なんて。



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