第十六話 がっしりと掴んだ
「し、試合終了!
しょ、勝者は、ルーキー! サトエ!!」
その声は静まり返った闘技場に響き渡った。
そして徐々に歓声が上がり始めた。
「おおおおおおおお!!!!」
「おいおいおいおい!! ルーキーが勝っちまったぞ!!」
「不正じゃねぇのか!?」
「いやいや、ギルド委員が審判やってたんだから、不正なんて無理だろ!」
「あのルーキーすげぇじゃねぇか!!」
「おい、ヴァン! お前に賭けたのに負けちまったじゃねぇか!!」
「あぁ、くそっ! 俺も負けちまった!」
「賭けに勝ったのはサリエルとハイローラーだけかよ!」
「二人で総取りじゃねぇか!」
「俺もルーキーに賭けりゃあ良かったぜ!」
「シシシ、ルーキーに賭けて良かったぜ!」
「チッ、ハイローラー、てめぇ、羨ましいな~。」
「しかし、それにしても、ルーキーがどうやってヴァンに勝ったんだ?」
「ヴァンが手加減してやったか、コンディションが悪ったんじゃねぇか?」
「ヴァンの自爆とかな。」
「ガハハハハ! ヴァンならありえそうだな。」
「まぁ、そうかもな。ヴァンがルーキーに負けるなんて事、普通じゃねぇもんな。」
そんな歓声と言うべきか、野次と言うべきかが飛び交っているところにギルド委員が口を挟んで叫んだ。
「試合は終了いたしました!!
冒険者の皆様は速やかに闘技場より退出してください!」
「チッ、しょうがねぇな。出るか。」
「あのルーキー、うちのパーティーに欲しいな。」
「あっ! ずりぃぞ! うちのパーティーだって欲しい!」
「それなら、うちもだ!」
「おい! 抜け駆け禁止だぞ!」
「お前ら止めとけ止めとけ。サリエルがいるんだぜ?」
「そういや、そうだったな。なら、仕方ねぇか。」
「サリエルの先着じゃあな~。」
そんな会話をしながら冒険者達は闘技場の中から出ていった。
冒険者が出ていったのを見届けたギルド委員も、
「あなた達も出来るだけ早く闘技場を退出してくださいね。」
と、言い。闘技場から出ていった。
闘技場に残ったのは、舞台に倒れたままでいるヴァンとそのパーティーメンバー、それに舞台を下りていた聖恵とサリエルだけだった。
ヴァンのパーティーメンバーである、キュラソーは一言も言葉を発しないまま、ただ聖恵を睨み付けていた。
コアンは舞台に上り、気絶しているヴァンを背負い上げて、舞台を下りてキュラソーの横に並んだ。
「どんな手を使ったのかは知りませんが、負けは負けなのでこれからは貴方達に関わらないと、話しかけないと誓いましょう。
はぁ・・・。まさかヴァンが負けてしまうとはね・・・。
それでは、私達はこれで。」
そう言ってキュラソー達は潔く闘技場を出ていった。
キュラソー達が出ていったのを確認したサリエルは、聖恵の方を向いた。
「おい! 聖恵! どうやってヴァンの野郎を倒したんだ?!」
そう、興奮した様子で聖恵の肩をがっしりと掴み言った。
「どう、って言われても・・・。
普通に顎を叩いて、頭を揺らして気絶させただけだよ?」
「それは見えてたからわかってる!
そうじゃなくって!」
「ちょっと、落ち着いてよサリエル。
ちゃんと説明するから、落ち着いてよ、ね?
ギルド委員の人に言われたし、闘技場からも出ないといけないからね。」
そう聖恵に苦笑いで言われてサリエルは、ハッとした表情になり、聖恵の肩から手を外し、深呼吸をした。
「・・・ふぅ。すまねぇな。もう落ち着いたよ。
そうだな。取り合えず闘技場から出るか。
けど、しっかりと説明してくれよ?」
「うん、勿論だよ。
ちゃんと一から全部説明するから。
って言っても、そんなに複雑な訳じゃないんだけどね。」
「じゃあ、落ち着いて話せる場所に行くか。
ギルドの受付じゃあ落ち着いて話も出来ねぇだろうから、俺のオススメの場所でいいか?」
「うん、サリエルのオススメなら僕も行ってみたいしね。」
そう言い二人は並んで闘技場を出ていった。
先週はおやすみして申し訳ありませんでした。
あれ?おかしいな、どうやって勝ったのかまで今回で書くつもりだったのにな・・・。
すいません、ガヤを書くのが楽しかったんです。
次回どうやって勝ったのか。聖恵のチートの片鱗が見えます。