第十五話 試合・・・だよ?
舞台に聖恵が上がった。
すると舞台には半球の不透明な膜のようなものが張られた。
「試合は大怪我を、下手をすると死ぬこともございます。
それでも試合をするんですね?」
審判であるギルド委員からの最後の確認であった。
「そんなもん、この舞台にいるんだから決まってんだろうが!
おい! さっさと始めようぜルーキー!!」
「はい、よろしくお願いしますね。ヴァンさん。」
そう言い聖恵は頭を下げた。
「ガハハハハ! あのルーキー頭下げるなんて馬鹿だぜ!」
「まぁ、すぐに決着はついちまうだろうな~。」
「せめて一分くらいは持たせろよー! ルーキー!」
「ギャハハハハ! お前も無茶いうな!」
「どっちが勝つか賭けようぜ!」
「ハイローラーお前、賭け好きだよな~。」
けど、今回は勝ち負けでの賭けは無理だろ。
全員がヴァンに賭けちまって話になんねぇよ。」
「まぁ、ルーキーが死ぬか生きるかなら、賭けが出来るかもな。ギャハハハハ!」
「ちげぇねぇ! ガハハハハ!」
どこから来たのかわからない、野次馬の冒険者たちは下品な馬鹿騒ぎをしていた。
「・・・サトエが勝つに500。」
話に割り込むようにサリエルがそう言い放ちコインだろうものを5枚おいた。
「おいおい、サリエル正気かよ!?」
「なら、俺はヴァンに10だ!」
「俺もヴァンに30だ!」
「俺も、俺もだ! ヴァンに50!」
「俺はルーキーに賭けるぞ!」
「お前、馬鹿か!?
賭け好きな癖に負けそうなところに賭けんのかよ!」
そんな風に賭けがおこってしまい、終わりには大きな賭けになってしまったが、結局最終的には聖恵に賭けたのはサリエルとハイローラーと言う名前の冒険者だけだった。
そんな賭け騒ぎは舞台まで届いていた。
「おいおい、遂に賭けまで始まっちまったな!
まぁ、俺様が勝つことには変わんねぇがな!」
そう、ヴァンが言った後にギルド委員が試合の始めの宣言をした。
「では、お互いに向き合ってください。
制限時間は30分。
ルールはなしの、何でもありです。」
そう告げた後にギルド委員は、膜をすり抜けて舞台を下りた。
聖恵とヴァンは互いに向かい合っている。
聖恵は真顔で、しかし何かしらの思惑がありそうな顔を浮かべている。
一方、ヴァンは余裕な様子で笑みを浮かべている。
舞台を下りて、お互いが向き合っている事を確認したギルド委員は開始の合図を送る。
「では・・・試合、始め!!」
そうギルド委員が宣言した瞬間にヴァンの姿は消えた。
いや実際に消えたのではなく、ただ常人では目に追えないようなスピードで移動しただけである。
しかし、Aランクの中でも上位に位置するヴァンが移動したのを視認出来ていたのは、野次馬の観客達の中ではサリエルと極一部のAランク冒険者達だけであろう。
この時、ヴァンが視認できたAランクの冒険者達は次に見る光景は聖恵が倒れている姿であろうと誰もが思った。
ただし、サリエルを除いては。
『ドサッ・・・』
何かが倒れる音が聞こえた。
その音がした後、野次馬の観客達が見た光景は、ヴァンが気絶し地面に倒れ伏し、舞台にキスをしている光景だった。
時間にして、僅か15秒足らずの事であった。
そしてその光景を見て静まり返った闘技場の中、我に返ったギルド委員が宣言した。
「し、試合終了!
しょ、勝者は、ルーキー! サトエ!!」
その声は静まり返った闘技場に響き渡った。
長らくお休みしてすみませんでしたm(_ _)m
今回は主人公がほぼ喋ってませんね・・・。
代わりにナレーションとガヤが多かったですね。