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第6話 枝豆

 村に着いた。えっと村の名前なんだっけかな?あーそうだそうだ、プラダ村だ。たしかそんな名前。城塞都市ラインバッハに最も近い農村だ。っと言っても規模はそれほど大きくない。人口はたしか100人にも満たないとか父上が言っていた気もする。

 村は簡単に作られた木の柵に一応囲われていて、入り口には派遣された兵士が二人守るようにいた。グラントは馬を降りると兵士と何やら話している。その後、村の広場のようなところを抜けて奥にある大きめ(と言っても村では)の家の前に止まる。どうやら村長の家に付いたようだ。


「久しぶりだね、村長」


「遠路はるばるお疲れ様です、領主様。そちらはご子息様ですか?」


 人の良さそうなお爺さんが俺たちを出迎える。父上の口ぶりだとどうやらこの人が村長らしい。


「ミリオン・ラインバッハの子のクエストです。よろしくおねがいします」


「こちらこそよろしくお願いします」


 村長はフォッフォッフォッっと言った感じで笑顔を浮かべながら俺の挨拶を返す。


「父上は村長さんとお話があるでしょう?ボクは村の方を見学してきていいですか?」


「ああ、農作業の邪魔にならないようにね。グラント君、一緒に付いてあげてくれませんか?」


「あ?俺かよっ!?じゃなくて、わかったよ、旦那」


 グラントは子守が嫌なのかちょっとめんどくさそうな感じだ。まぁ普通そうだよなぁ、5歳時のお守りなんて。俺はそんなグラントを無視して、畑の方に歩いて行く。どんなものを栽培しているかとても興味がある。


「あ、クエスト様、ちょっと」


「あ、グラントさん、いやグラントってボクは呼ぶからグラントもボクのことをクエストって呼んでよ。父上の前とかじゃ言いにくいなら二人だけの時とかでもいいからさ」


 なんか他人行儀過ぎていやなので、お互いを呼び捨てで呼び合わないかと提案する。5歳時に呼び捨てにされるってのもどうかと思うかもしれないが、一応身分は俺の方が上なわけで、ぶっちゃけ身分って言っても家の身分だけどw


「俺は構わないけど、いいのか?」


「ボクからの提案だしね。なんとなくだけど、グラント達とは長い付き合いになりそうな気がするしね」


 なんでか知らないけどそういった予感がした。実際、父上も彼らのことを買っているみたいな節があるし。それなりに有能なんだろうと思う。


 グラントとたわいもない話をしながら畑がある地区に到着する。と言ってもそんなに距離を歩いたわけではないんだけど。


「ん?あれは?」


 目の前の畑には緑色の豆の鞘が見える。


「大豆だな…まだ熟れてないみたいだが」


 熟れてない大豆…つまり枝豆か。そう思うと久しぶりに枝豆を食べたくなってしまう。少なくともこの5年間で食卓で枝豆をみた記憶はない。大豆はスープで煮た奴とかは見た記憶があるけど。


「グラント、大豆って緑のまま食べないのかな?」


「普通食べないと思うぞ?」


 あ、食べないのね…ってことは勝手にそんな料理っていっていいかわからないけど作っていいのかな?いやでもやっぱ食べたい。


「あの、ちょっといいですか?」


 俺は畑仕事をしてるおっさんに声をかける。おっさんはいきなり子供に声をかけられてビックリとしてる。そしてその後ろにいるグラントのいかつさに更にびっくりする。


「お金は払うんで、そこの大豆を数株分けてもらえませんか?」


「別にかまわないけど、どうするんだ?」


「塩茹でにして食べるんですよ」


「塩茹で?」


「ええ?おかしいですか?」


「聞いたことないな?ちょっと興味があるしやってみてくれないか?

 ところで、坊主は誰だ?ぱっと見、いい身なりをして……ん?」


 あ、気づかれた?平服とかされちゃうと嫌だなぁ。


「……領主様のご子息様!!??すみません、すみません、すみません」


「あ、別に気にしてないんで、普通にしてくれていいですよ?」


「あ、了解しました。ところで、ほんとにコレを塩茹でにするんですか?」


 立ち直りはやっ!!っていうかまぁいいんだけど。


「枝豆っていうんですけどね。鍋とざると塩を用意してくれれば調理してみますよ」


「じゃぁ、試しに1株よろしくおねがいします。おい、かかぁ!!ざると鍋と塩を用意してくれ!!」


 おっさんは奥さんらしいおばさんに指示を出して鍋などを用意させる。俺はその間におっさんから受け取った株から鞘を取り分ける。とりわけ終わったところでおばさんがざると鍋と塩を持ってきたので、枝豆をざるに乗せ、水魔法で水を出してさっと洗う。その後、枝豆に塩をふりかけざるにこすりつけるように揉む。鍋に水を貼り塩を入れて塩水を作り火魔法で沸騰させる。そこに枝豆を投入、数分ゆでて出来上がりってことでざるにあける。


「出来上がりか?」


「うん。でもちょっと冷まさないと熱いからちょっとまっってね」


 俺は風魔法で枝豆の粗熱を取る。熱々の枝豆ってのも悪くはないんだけど、ホントは冷やしたヤツのほうがいい。風で粗熱とったくらいじゃ鞘の中にはいったお湯が熱いかもしれないけど。


「あとはこうやって食べるんだ。ん、うまい」


 俺は食べ方って言うほどのものじゃないけど実演してみる。案の定まだ中は熱い。でも塩加減はちょうどいい。あービール呑みたいとか思っちゃうわ。俺、5歳児だけど。


「ほう、コレは結構いいな。なんとなく酒に合いそうだ」


「だな、これはいい食べ方を教わった。村のみんなにも教えてあげよう。」


「あ、父上達にも食べさせたいんで半分もらいますね。あとはそちらで食べてください」


「いいのかい、坊っちゃん?」


「はい、あ、さっき言いましたが帰りに持って帰りたいので、数株分けください。おみやげにしますんで」


「はい、麻袋に入れて用意しておきます。門番に渡しておきますのでお帰りの際にお受け取りください」


「よろしくおねがいします」


 俺は枝豆の塩茹での半分を布にくるむと、大豆畑を後にする。大豆が取れるってことはあとで味噌や醤油を作ってみるといいかもしれない。そういえば漁村も領内にあるんだし、塩田があるようならにがりを入手できるかもしれない。そうすれば豆腐も作れるかもしれない。米もできることならどこかにないものか?よくよく考えればまだ街にでる許可が出てないから、市場にいけば思いもよらないものがあるかもしれない。


「しかし、この枝豆ってのうまいな。なんていうか塩加減がいいし、止まらないぜ。エリックあたりが好きそうだ」


 ちゃっかり自分の分の枝豆を確保たグラントがうれしそうに食べている。どうやらずいぶん気に入ったようだ。これは俺が料理を作った時に試食役にちょうどいいんではないだろうか?ってもまだ小さいから料理させてもらえない気もするけど。それはさておき、次の畑に行こうか。




お読みいただきありがとうございます。


主人公が全然忍者らしいことしてない件。

そのうちそれっぽいことしますから・・・たぶん

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