第48話 ダンジョンマスター
1ヶ月以上更新しなくてすみません
あれから数ヶ月が経った。季節的には晩秋ってところか。クライン達は最初こそ俺やリズの引率での迷宮探索をしていたが、今ではランクもE+となりダンジョンの上層部ならば4人でなんとか回れる程度の実力となり、休みの日などに4人でダンジョンに籠ったり、自分達にあった依頼をこなしている。クラインにはバトルスタッフを渡してある。どうやら彼に合ったらしく、なかなか好評だった。そのうちメルフィナ用の武器を考えてやらないとな。男ども3人には武器を上げて彼女になにもやらないというのはなにか気が引ける。投げナイフが得意と言っていたし、棒手裏剣辺りのセットとかいいかもしれない。
俺の方は特になにもしていない……っというと語弊があるかもしれないが、ダンジョン行ってダンジョン食材を捕ってきたり、30階層のボスと10階層の隠しボスを倒して素材を集めたりしてる……ソロで。退治した魔物の申請をしなかったからギルドには何も言われなかった。倒した魔物の履歴は1週間放置すると消えるから。魔石の買い取りなどはパーティーでいるときに行ったり、魔石貯金としてとってある。素材などのドロップアイテムは適当に流しても問題ないわけで、基本的には俺とリズ以外の強化に使ったりしている。
今日は婚約者たちと30階層までの攻略にとダンジョンの前まで来ていた。さすがに数ヶ月鍛えたとはいえ、まだ31階層より下はマリーとセリアには少し荷が重いということで、二人で30階層までクリアできるように修行したいと言ってきた。もちろん、戦闘面に関してだが。俺たちが最小限のサポートをしながら何度も30階層クリアするという感じだ。そんなわけで、いつものようにダンジョンに篭もることにする。
「ん?」
「どうかなさいましたか、クエスト様」
入口に入ったところで妙な違和感を感じて立ち止まる。以前に10階層で隠し部屋を見つけた時のような感覚だ。それも入口から数メートル入った場所でだ。みんなにことわりを入れて、違和感のある場所を探してみる。壁の一部にかなり巧妙に隠されたスイッチを発見した。そもそももう数十回このダンジョンには通っている。それなのにいままで、俺の感知に引っかからないとかかなりの隠蔽だ。こんな入口になんで?と疑問に思いながら、スイッチを押す。俺の予想通りなら隠し扉が開くと思う。
「クエスト……床がなくなってない?」
「普通こういうのって隠し扉だよな?」
「まさかの落とし穴の罠とか……なんでよ」
スイッチを押した瞬間、床がなくなり、俺達は変な浮遊感を感じたあとに穴に落ちていく。あんなに巧妙に隠して置いたスイッチが罠とかふざけるのも大概にしてほしいものだ。しかし、落下時間が長い。そう思った瞬間、俺達は転移のような感覚を感じる。
ふと気づくと俺達は魔法陣の上にいた。俺たちのいる部屋は城の謁見の間のような感じの広く豪華な部屋だ。ただしダンジョン内ということもあるのかやや薄暗い。イメージ的にはRPGなどのラスボスである魔王の城の玉座の間といった感じだろうか。ディメルディアと戦った時は玉座の間とか行かなかったけど。だってあいつ、俺が城に近づいたら飛びかかってきたもの。
「クエスト様、なにか変なことを考えてませんでしたか?」
「いやそんなことはないぞ」
勘がいいな、リズ。女の勘ってやつか?ちょっと昔を思い出しただけじゃないか。
警戒しながら先に進む。本当に魔王の城って感じだ。なんだろう、気分が昂る。あかん、元勇者として燃える。この先にはやっっぱ魔王みたいなのがいちゃうんだろうか?この薄暗い感じで燭台に灯る火とかほんとに雰囲気を出している。
「物語に出てくる魔王の城みたいね」
「あ、やっぱマリーもそう思った?あたしも」
「実際の魔王の城は普通の城と変わりませんけどね」
「まーこの世界の魔王は普通に魔族の王さまってだけだもんな」
警戒はしてるが緊張感がない。なんだろうこれ。いい加減終点についてほしい。通路が無駄に長い。どんだけよ。
「あ、玉座っぽいものがあるよ」
セリアが前方を指さす。確かに一段高くなって豪盛な椅子がある。近づくとその玉座には銀色の長髪の美青年が腰掛けている。背中には片翼の白い翼。そして玉座に鎖で縛り付けられているようだ。よく見ると左手に宝玉のような物を持っており、鎖はそこから出ているようだ。自分で戒めてるのか?それにしてもこいつに対して俺の本能が警鐘を鳴らしている。こいつはやばい、今の俺でもかなわない。得体の知れないなにかがある。
「ほう…このダンジョンを作ってここまできた初めての客人だな」
俺たちが近づくと彼は突然口を開いた。なんというバリトンボイス。やばい、奥様とかならイチコロかも知れない。いやそんなことはどうでもいいんだが。
「あんたがこのダンジョンのダンジョンマスターなのか?」
「そうだ」
「あんたを倒せばダンジョンクリアになるのか…まぁ、俺たちじゃ無理だけどな」
「正直だな…それでも戦うか?」
「戦わないでいいならそうしたいものだな」
「別に戦わないのはかまわんよ。ただ、少しくらい話をしようか」
どうやら彼自体久しぶりの客に会話を望んでいるようだ。このダンジョンが出きてから初めての客とかいってたからな。500年くらい引きこもって一人だったということか。俺だったら嫌になってダンジョンから出るな。
「まずは自己紹介をしようか。私がこのダンジョンのマスターをしているカルマだ」
「クエスト・ラインバッハだ。で、右からマリーメイア、リーゼロット、セリアで3人共俺の婚約者だ」
「はじめまして」
「よろしくお願いします、カルマ様」
「…………」
なぜかセリアがカルマを睨んでいる。どうしたんだ?
「カルマ……こんなところにいたんだ?」
セリアがドスの聞いた声を発する。いつもと雰囲気が違う。これはイセリア本体が降りてきてるようだ。カルマとは知り合いなのか?
「この気配は……イセリア…様?」
「そう、この子は私の分身。あなたが見つかったのだから少しだけ体を借りてるわ」
「イセリア、知り合いなのか?」
「彼は700年ほど前に地上に私が放った使徒なのです。500年前に突然に行方不明になったと思ったらダンジョンマスターになっていたなんてね」
「申し訳ありません。500年前のあの日、私のミスでダンジョンコアに取り込まれてしまって、このようにダンジョンに縛り付けられる存在になってしまったので」
「まさか使徒を縛り付けるほどの強制力がダンジョンコアにあるとは思わなかったわ。とりあえずあなたの所在がわかったからこの事は不問にはしておくわ。その代わり、クエストに協力なさい」
「協力というと?」
「あなたはこのダンジョンマスターでしょ?彼らをココに来れるようにして、適正レベルの魔物を召喚して戦わせてレベル上げを手伝いなさい。かなりのレベルの魔物がいるでしょう?」
イセリアが俺にはありがたい提案をカルマに言う。たしかにマリーやセリアのレベルアップはしたい。そして俺とリズの底上げもしたい。だが俺たち二人のレベルに見合った魔物などほとんど見たことはない。
「たしかにこのダンジョンは最下層のここが256階。上の階のボスに設定してある魔物がレベル700ほど。クエスト君やリーゼロット君の相手をする魔物も確かに存在する。
君らがそれで良いというなら準備をしよう。ただ、システムの構築などの準備に1週間ほど時間を頂きたい」
「俺にとっては願ったりかなったりなんだが、いいのか?えっとカルマでいいよな、呼び方は?俺達のことは呼び捨てでいい」
「わかった。それではステータスカードを貸してもらおうか?ここをフロア登録しておこう。それから、利用するメンバーはこの4人でいいか?」
「うーん、数名増えるかもしれないかな」
「ならばできればだが最低でもレベル100を条件にしてほしい」
「そうだな。それまでは自分で頑張って上げてもらうさ」
レベル上げの狩場を確保した。これはありがたい。これで俺たち4人とクラウス達ラインバッハ組、あとはリュースにエピオンだな。料理研究会の先輩たちやこっちに来ることがあるならグラント達を良いかもしれない。俺たちはカルマと話を詰めたあと、ダンジョンより帰還した。
お読みいただきありがとうございました。
仕事が多忙だったり、夏バテまではいきませんが疲れが溜まって執筆意欲がわかなかったりといろいろありまして、長いこと更新せず申し訳ありませんでした。
これからは最低でも週一ペースで行きたいと思っていますが、ちょっと身内にトラブルがありましてどうなるか未定です。すみません




