第47話 クラウス達の冒険者登録
お待たせしました。
今回はちょっと趣向を代えてクラウス視点にしてみました。
――sideクラウス
ボクにとってクエスト・ラインバッハ様という方は、恩人であり将来仕えるべき主人であり現在親しくさせていただいている友人である。幼いころからよく村に視察と称して遊びに来ては、農業指導を行い村を豊かにしてくれた。それから暇な時はボクを含めた村の子供達を率いて遊んだりした。ボクが魔法の適正があると知ると魔力の制御を教えてくれたりした。村長の次男ということもあり、ボクは将来この方の役に立ちたいと幼いながら思ったものだ。そのためにはボクも王都の学院に通い、彼のために学習したいと思っていた。しかし、学院に通うには我が家では資金的に辛い。それも奨学金制度というものをクエスト様が作って下さり、同い年で4人の子供が学院に入学できた。将来的にお金は返さなければいけないが、ラインバッハ家に仕えることを条件にある程度免除されるということで、ボクは当然仕えるつもりだ。同じくガンマとベルクもそのつもりだと言った。彼らは学院に来てから知り合った同郷の友人だ。彼らは領都の出身で、どちらも父親が衛兵だという。あと一人はあまり話したことはない。唯一の女の子で、たまにリズさんと一緒に話しているのを見かけたことはある。
「皆さん、今日冒険者登録をするということで彼女のご一緒させていただこうかと」
放課後にクエスト君に連れられてギルドに行く予定で集合したところにリズさんが彼女をつれてやってきた。
「おう、構わないぞ。その子は?」
「領都のお屋敷でメイド見習いとして働いていましたメルフィナと申します。メルとお呼びください。クエスト様にはいままで面識がなく、また挨拶が今頃になってしまってすみません」
「なるほど。こいつらはクライン、ガンマ、ベルクだ。それから学院の同級生ってことで様付はやめてくれ。呼び捨てが難しいなら君でもさんでもいいから」
「そんな恐れ多い…」
「クエスト様、彼女もメイドの端くれです。私同様にお許し下さい」
「リズにそう言われちゃしかたないな」
そんなこんなで彼女とボクらは簡単に自己紹介をしたあとに、王都のギルドへと向かった。さすが王都のギルド。ラインバッハの領都のギルドも大きいと思ったが、こちらは更に大きい。時間がもう午後ということでそこまで冒険者は多くなく、多少はごった返してはいるけどボクらがいて邪魔というほどでもない。
「アイラさんどうも、この4人の冒険者登録をお願いしたいんだけど」
クエスト君は受付カウンターに座る女性にボク達を紹介し、受付の業務を頼んでいた。ボクらはカウンターの前に並ばされると、彼女が差し出した書類に必要事項を記入して、ステータスカードを渡す。彼女は手慣れた手つきで書類を処理し、ステータスカードにギルド関連の機能を付与して、こちらに返却する。
「お待たせしました。皆さんのステータスカードにギルド関連の機能を付与しました。冒険者としての詳しい内容などはカードの『ギルド規約』に書いてありますので、1度は必ずお読みください」
「へぇ、今は規約をカード内にいれてるんだ」
「1~2年前からそのようにしてるんですよ」
クエスト君が自分のステータスカードをタップしながら『ホントだ、追加されてる』ってつぶやいていた。どうやら、昔は登録時に説明したり、先輩冒険者に教育を受けたりしていたそうだ。効率化はいいことだと思う。その代わり、自己責任がつくんだけど。
「学院のガキどm『よう、クエスト、久しぶりだな』」
ボク達が登録を終わり、カウンターを離れようとした時に、ガラの悪そうな冒険者の一団がボクらに近づいて声をかけようとしたのだが、入り口から入ってきた別の冒険者の一団のリーダーらしき熟練の冒険者といった男がクエスト君に声をかけてきた。ボクは彼を知っている。『重撃』のグラント――ラインバッハ領で知らない人はいないトップクラスの冒険者だ。幼いころ何度かミリオン様について村に来たことがあるので、遠巻きにみたことはある。ミリオン様の護衛をするくらいだから、当然クエスト君とも面識があるだろう。
「あれ?グラント達じゃん。王都へ来てたのか?」
「久しぶりにタリウスのダンジョンに行こうと思ってな。そっちは?」
「ああ、俺の学院の同級生で、うちの領地出身の4人の冒険者登録さ。これから鍛えようとおもってな」
さすがクエスト君、Aランク冒険者に気後れせずに普通に世間話をしている。ボクらに絡もうとしていた冒険者達はグラントさん達の知り合いと知るとそのままギルドに併設された酒場の奥へと戻っていってしまった。どうやら彼は王都でも有名らしい。
グラントさん達との会話も終わったようで、クエスト君に連れられて近くのカフェに行く。そこで、登録祝いと今後のことについて話し合うことになった。
「こないだ言った通り、次の休みにこの5人、いやメルフィナもいれて6人でパーティーを組んで魔物相手に実戦経験なんかを積んでもらう。俺とリズは監督役と保険みたいなもんだから、実質4人で頑張ってくれ」
「ボクは魔術師だから後衛、ガンマとベルクは剣士だから前衛として、メルフィナさんはなにができるの?」
「私は、一応斥候職のようなことができます。一応短剣をつかって近接戦もできますが、それほど得意ではありません。投げナイフが使えますので基本的にはそれでの攻撃となります。あと、魔法はあまり得意ではなく初級の治癒魔法程度しかつかえません」
「治癒が使えるっすか?それは心強いっすよ」
「そうすると、クライン。彼女は後衛か中衛ってとこになるか」
「そうだね。クエスト君とリズさんを除くと4人しかいないわけだし、戦闘では二人が前衛でボクとメルフィナさんが後衛ってことで。ダンジョンなんかの移動中は斥候職ということで、メルフィナさんと二人のどっちかが前を歩くってことでいいかな?」
「それでいいかと。あと、私にさん付けがいりませんので、メルフィナとお呼びください」
ボク達は寮の門限までパーティーについていろいろと話し合った。クエスト君とリズさんはそんなボクらに助言しながら見ていてくれた。実戦はまだ経験もなく怖いけど、いつかは必要になる経験だから怖いながらも楽しみにしている自分がいた。まだまだ力不足だけど、クエスト君達が鍛えてくれる。将来はどうなるかわからないけど、彼に仕えるという目標はある。そのためにボクは頑張っていこうとこの日再び決意をした。
お読みいただきありがとうございます。
次回は普通にクエスト視点にもどります。たまに他のキャラ視点で物語を進めようかと思っています。割りと気分でですが




