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第41話 デートその3

「それじゃ、リズ、出かけようか」

「はい、クエスト様」


 屋敷から二人そろって出かける。婚約者3人とのデートの最終日、リズとのデートの日である。この連休は二人共屋敷の方へ戻っていたので待ち合わせはなく、一緒に出かけることになったわけだ。リズは俺の要望通り、メイド服ではなく私服姿だ。白のブラウスに淡黄色のスカート、ブラウスの上に薄いピンク色のストールを羽織っている。とてもよく似合っていると思う。


「リズ、よく似あってるよ」

「ありがとうございます。マリー様たちのお陰です」


 リズは嬉しそうに少しだけ頬を赤らめてうつむく。可愛らしいやつだ。そんなリズの手を握って俺は歩き出す。リズのリクエストは小物や食器などのショッピングだから商店街の方へ行こうと思っている。先輩から事前にいい感じの店を聞いて置いたからエスコートもちゃんとできる……はず。ついでに昨日覗いた露店街にもいけばいろいろな品物をみることができるだろう。


「一応聞くけど、商店街の店の方にまず行って、そのあと露店の方を見ようと思うけど、リズはそれでいい?」

「そうですね。せっかくクエスト様が考えてくださったプランなのですが、先に露店の方へ行きませんか?冒険者の方々が売っている掘り出し物があるかもしれませんし、露店で売っているものは駆け出しの方が作ったものがほとんどですので、先に商店の方へ言ってしまうと見劣りがしてしまう可能性があります」

「あーたしかにそうだな。それじゃ露店の方に先に行くか」


 たしかに言われてみれば露店で売られている商品は基本的に駆け出しや見習いの作品が多い。商店街の店舗の方はそういった人たちの師匠や先輩が作った物が売られているわけで、基本的に見劣りがする可能性が高い。ただ、たまに独自の才能がある人物が良い物を並べてたりするから面白いわけで。昨日、セリアとも回ったわけだが、昨日は出店していなかった店も今日はある可能性もあるから、楽しみといえば楽しみである。


「あれ?クエスト君、今日は別の女の子を連れているね」

「ディルム先輩、今日も串焼きですか?」

「そうだよ、彼女はどちらさまかな?セリア君とは二股?」

「いえ、三股ですよ。あ、当然全員と婚約してますけどね。っていうか知ってるでしょう、俺に3人の婚約者がいるのは」

「はじめまして、クエスト様の専属メイドをしております、リーゼロッテと申します。恐れながらクエスト様の婚約者の末席に名を連ねさせて頂いております。よろしくおねがいします」

「これはご丁寧に。ボクはクエスト君と同じ研究会に所属しているディルムって言うんだ。よろしくね、リーゼロッテ君」

「リズとお呼びください、ディルム様」


 そういえば昨日もいたんだから、今日もココにいてもおかしくないわけだ。すっかり忘れてた。俺に婚約者が3人いて、セリアがその一人という説明は研究会のメンバーは知っていることだけど、他の二人については説明していなかった。マリーも1度試食会に出ていたが、その時に婚約者だと紹介するのを忘れていた。


「先輩、串焼き2本もらえますか?今日は代金をちゃんとはらいますよ」

「ああ、構わないよ。もうちょっとで焼けるからちょっとまってね。一串20ドネーでよろしく」

「了解です」


 俺は財布から青銅貨を4枚取り出して先輩に渡す。一串200円なら安いくらいじゃないだろうか?結構なボリュームがあるし。先輩から受け取った串をリズに手渡し、昨日のように二人で食べる。タレがいい感じでやっぱり美味い。


「このタレの加減が絶妙っすね、先輩」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。教えてくれたのはキミだけどね」

「いやいや、俺が作ったものより遥かに美味しいですよ」

「ホントです。さすが料理研究会の方です」


 リズが美味しそうに食べている。案外彼女は味にうるさいのでその彼女が夢中になるということはやはりそれだけ美味しいのだろう。味にうるさいくせに、自分で料理をすると殺人料理を創りだしてしまうリズの料理の腕は未だに理解できないのだが。


「「ごちそうさまでした」」

「お粗末さまでした」


 ディルム先輩に食後のお礼を言って屋台を後にする。いつまでも俺たちがいたら他のお客さんにも迷惑だ。俺たちが立ち去ったあとにすぐに他のお客さんが購入していたし。

その後、二人で露店を覗く。リズ的には食器がほしいらしく、それをメインとする。そして、露店ではリズのお目に叶う品はなかったようで、商店街の商店の方へと移動する。


「リズはどんな食器を探しているんだ?」

「えっと、ティーセットです」

「そうすると、トリス先輩に教えてもらったアソコだな」


 俺は目的の商店へと向かう。なんでもおしゃれな食器を売っている人気の店舗だとか。


「いっらっしゃいませ、どのような品物をお探しでしょうか?」

「カップが4つ揃いのティーセットを見せていただきたいのですが」

「かしこまりました」


 店員に目当ての品を聞かれ、答えるとすぐさま、それらの商品が置かれているコーナーへと案内される。そこには高そうなティーセットが幾つか並べられていた。リズは真剣に品定めをしている。俺はそんなリズに声をかけにくく、近くにある食器などを見ていた。ティーセットのコーナーなので近くにある食器といってもティーセットだったりするわけで、好みはあるが良し悪しはわからない。そう思ってみていると1つだけ気になったティーセットがあった。ぶっちゃけて言うと急須と湯のみのセットだ。他のセットはすべて紅茶用のものなのになぜこれだけ?っと疑問に思った。


「あのすみません、このセットは?」

「ああ、それは魔族の国で使われているティーセットですね。あちらでは紅茶ではなく緑茶という物を飲むそうで、それ用の物と聞いております。こちらとは違う文化の品のためか売れてはいないんですけどね」


 店員は苦笑しながら急須と湯のみのセットのことを説明してくれる。米といいどうやら魔族の国は日本の文化に近いものがあるようだ。そのうち行ってみたいものである。というか1000年前はそんなことなかったような気がするんだけど。


「すみません、こちらのティーセットはおいくらですか?」


 どうやらリズが気に入った物があったようだ。見てみるとやや青みのかかった白いティーカップとティーポットのセットだ。形といい結構いい感じだ。でも高そうである。


「こちらの商品ですと、1万ドネーになりますが」


 10万円もするのか……いやここそれなりの高級店だしそんなもんなのか?


「リズはそのセットでいいのかい?」

「はい、それでは支払いを」

「1万ドネーだな、ちょっとまってね」

「いえ、クエスト様、こちらの商品は私が購入したいのです。クエスト様にお支払いをお願いするわけにはいきません」

「でも、婚約者にプレゼントするってのはデートでは普通なんじゃ?」

「申し訳ありません。今はまだ侍従の身分なれど、婚約者としてのわがままです。どうか聞いてください」

「そういうのなら」


 実際リズは冒険者として得た報酬や、メイドとしての給金があるためそれなりに貯えはある。1万ドネーくらいは簡単に払えるだろう。リズは金貨を1枚支払うとティーセットを梱包してもらい、自分の次元倉庫にしまう。そして店を出る。


「そういえばどうしてティーセットを買ったんだ?屋敷にもいろいろあるのに」

「クエスト様と私たち3人の婚約者でお揃いのカップを使いたいなという私のわがままです」

「そんなわがままなら歓迎さ。きっとマリーやセリアもね。それにリズが淹れてくれるお茶は最高だし」


 リズもいろいろ考えているんだなと心の中で思っておく。しかし、お茶は完璧にいれるのになんで料理はダメなのか、その疑問はいつになったら解消されるのか?いや一生無理なんだろうなぁ。


「クエスト様、今日はお付き合いありがとうございました。一度屋敷に戻って、学院の寮へ参りましょう」

「そうだな、連休ももう終わりか」


 俺たちは二人だけの時間の終わりを寂しく思いながら、屋敷へと向かった。


お読みいただきありがとうございます

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