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第31話 ルームメイト

学院編に入って新キャラが増えていきます。

「っと、ごめん!!」


 俺は寮の自室の扉を慌てて閉める。同居人が着替えていたためだ。男同士なんだし慌てる必要があったのかといわれると確かにそうなのだが……。


「クエスト、入っても大丈夫だよ」


 部屋の扉を開けて、彼が声をかけてくれる。扉からのぞかせた顔はどう見ても少女に見える美形のエルフ顔。日本でいうところの見た目だけなら男の娘なのだ。本人は立派に男なのだが、身長は俺より低く、顔も童顔の女顔のエルフ――こいつが俺の同居人の一人のエピオンだ。最初に会った時は寮を間違えたと思ったくらいだ。元来エルフは20歳くらいまでは人間同様成長し、そのあとはゆるやかに年を取っていくらしいのだが、彼曰く、もう40歳なのにこんな姿で成長が止まってしまったらしい。ちなみにエピオンもクラスメイトである。


「ただいまっと。リュースのヤツはまだ帰ってないのか?」

「うん。なんか体を動かしてから帰るって自主練に行ったよ」

「あいつも熱心だな。明日の俺の朝練に誘ってみようかなあいつなら案外ついてきそうだけど」

「クエストの朝練か、ボクも気になるな。付き合っていい?」

「構わないよ。マリー達も一緒にやるけどいいかな」

「OK、問題ないよ」

「んじゃ、5時起きな」

「え?」


 5時起きと行ってなにか恨めしそうな目で俺を見るエピオン。自分から参加すると行った手前いまさらやめたと言えないのか少し悔しそうにしている。エピオンに断って、俺も制服から部屋着に着替える。さっそく明日から授業が始まるわけだが、基本的に必要そうなものは次元倉庫に入れてあるので、忘れ物などはないだろう。


「そういえばクエストって、次元倉庫が使えるんだよね?」

「使えるぞ。エピオンも覚えたいのか?」

「うん。それがあれば忘れ物とか思想にないしね」


 考えることは案外一緒である。せっかくなので夕食の時間までの間、エピオンに次元倉庫の使い方を教える。素質があるのか、夕食前にはすでに次元倉庫を体得して、嬉しそうにいろいろ出し入れをしているエピオンがいた。


「俺がぁっ!帰ってきたっ!!」


 突然、部屋の扉を勢いよく開けて、赤毛の竜人が飛び込んでくる。もう一人の同居人のリュースである。身長は3人の中で一番高くすでに180cmくらいあり、耳元から伸びた竜人特有の角が特徴だ。背中の羽根は必要な時以外は消しておくことができるのは竜人族の生態的構造の最大の謎なのだが、深く突っ込まないで置こう。寝るときとか邪魔だしな。


「おう、お帰りリュース」

「腹減ったぜ。飯いこうぜ、飯!!」

「とりあえずお前は汗まみれなんだから生活魔法つかって汗おとしてから着替えろ」

「おっと、そうだな」


 生活魔法は便利だ。こういった時本来ならシャワーや濡れたタオルなどで体を拭くものだが、魔法で一発で汗や汚れを落とせる。一応清潔にはなるんだが、気分的にはやっぱり風呂には入りたい。寮にも風呂が用意されており、7時から23時まで入れるというありがたいシステムだ。寮は3つ存在していて、学年ごとにまとめられている。なので風呂で先輩と出会って気まずくなるとかいうこともない。


「リュースも着替え終わったようだし、御飯に行こうか」

「おう、もう腹減ってしかたないぜ」


 3人で食堂で夕食を取る。リュースが足りねぇ!!とか言っていたが無視をする。休みの日の昼食だけ用意されないシステムなので、一応自炊の為の厨房が用意されており、いつでも使用は可能になっている。リュースにあとで夜食を作ってやると言うと、目を輝かせていた。


「そうだ、リュース。俺たち明日朝練するんだが、お前もやるか?正確には俺とリズが故郷で毎日やってたことをやるだけなんだが。エピオンも参加するって話だったんでな」

「どんなことやるんだ?内容によっては参加するぜ」

「基本は体力向上のためのランニングと簡単な模擬戦って感じかな。朝だし軽く流す程度。朝練が終わったら風呂でも入ってその後飯くって学校って感じだ」

「悪くねーな。俺も付き合うぜ」

「じゃ、5時開始だからそれまでに準備な」

「さっき5時起きって…」

「5時にグランド集合な」

「おうっ!!」


 エピオンが更に恨めしそうな目で俺を見る。こいつ朝が弱いのか?そしてリュースはなんか何も考えてないような気がする。夕食を食べながらそんなやりとりをしていると、クラウスがルームメイトを連れて俺の所にやってきた。


「クエスト君、話を聞いてたけど、ボクらも参加していいかな?朝練っていうと、練兵場で有名なアレなんだろ?」

「おう、アレだ。そっちの二人も?」

「うん、彼らも。同じラインバッハ領出身で、二人共兵士の息子さん。父親がやってたアレに興味があったんだって」

「了解、それじゃ朝5時にグランドな」

「よろしくお願いします」


 朝練、結構な人数になりそうだな。案外、マリーたちも何人か連れてきたりしてな。土のうの数足りるかな?模擬戦用の武器は学校のを借りれるように申請は出してあるから問題ないとして。普段やっている俺やリズ、マリーはいつもどおりでいいとして、残りのメンツは初めてだろうし少し軽めにしないとな…などと考えながら部屋に戻る。


「風呂あがりに夜食作るけど、リュース、リクエストはある?」

「肉」

「あいよ…わかりやすいなお前」


 リュースは肉をご所望だ。たしかこないだ狩った鳥型の魔物の肉があったはずだからそれを照り焼きにして、パンに挟むか。こいつ食いそうだし多めに作るとしよう。


「エピオンも食うか?」

「ボクは遠慮しとくよ。夕食で十分だから」

「食が細いな、エピオンは」

「いや、普通だろ?学生向けでやや多めだし」

「全然たりねーよ」


 これはひょっとして夜食が気に入られたら毎日つくるパターンか。それは勘弁したい。料理を作るのは好きだが、あくまで自分で食べるためにやる趣味だからな。いや食べてもらって感想を聞くのも好きではあるが、毎日とかは個人的には勘弁なのだ。


「お前、本当に男なんだな」

「リュースはボクを何だと思ってたの?」

「女っぽい男エルフ」

「まんまじゃねーか」


 風呂に入るために脱衣所で服を脱いでいた俺たちは、偶然エピオンが男であることを確認してしまった。なかなかでかかったです。俺たちより先に何人か入っているみたいなので、ドッキリを仕掛けようかって話になってエピオンは胸までタオルで隠して風呂場に入る。


「お、おい…なんで女が?」

「ホントに女か?」

「いや、あんなにかわいい子が女のはずがない」


 先に風呂に入っていた連中がざわつく。その後で俺たちが入り、体を流している時、何人かがエピオンを確認にくる。そして、男だと確認してほっとしたような表情で風呂場から出て行く。


「あーいい気持ちだな」

「ホント、気持ちいいね、お風呂は」


 ほんのりと顔を赤くしていうエピオンはホント女にしかみえずに思わずドキっとしてしまう。っていうか心臓に悪いぞこれ。落ち着け、落ち着け俺。俺には3人のかわいい婚約者がいるんだ。落ち着け!!

 風呂に入ってる連中がエピオンのそういった仕草などにドキドキしているのが感じられる。リュースだけ『どうしたの、おまいら?』って顔をしているのは放っておこう。


 風呂あがりに作った夜食はリュースに大変好評だった。





お読みいただきありがとうございます

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