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第30話 入学

学院編とかいってたのに、やっと入学しました

「――以上、新入生代表 クエスト」


 入学式でまさか新入生の宣誓をやらされるとは思わなかった。現在無事にその役目を終えて壇上から降りる。家名を名乗らなかったのはこの学院の方針である『学生平等』によるものである。ローレンド王国は、王族、貴族とそれに準じる者以外は家名を持たない。学院内では身分は関係なく平等であるという決まりがあるため、家名を名乗ってしまうといろいろ弊害があるということで、生徒は家名を名乗らない決まりなのだ。

 しかし入学までいろいろあった。合格発表は特に落ちる心配はしていなかったので、ゆっくりと見に行こうと思ったら屋敷にアトモスがやってきて『主席で合格したから新入生宣誓よろしく』っと言ってくるし、辞退して次席に譲ると言ったら次席のリズが『クエスト様を差し置いてできません』っと辞退したので、学院のメンツってのもあるらしく、アトモスに説得されているところを、お祖父様に見つかり『名誉なんだからやれ、っていうかミリオンもやったんだからやれ』っと言われて結局やるはめに。父上も成績優秀者だったののかとこの時始めて知った。

 結果を一緒に見に行く約束をしていたマリーとセリアとともに結果を知っていたけど、学院に向かい、フィリップが俺とリズの入学手続きを行ってもらった。合格発表の場にラインバッハ領の領民の親子が数名いた。俺を見ると挨拶にきた。なんでも合格できたらしい。父上に進言して学院に行きたい領民に一定を試験を行い、合格した場合は奨学金を出すという制度を実施した結果だった。才能ある領民が金の都合で埋もれさせるというのはもったいないということで始めた制度だ。

 入学手続きの後は、4人で迷宮都市に向かいダンジョンでレベル上げ。その前にケリンドからの紹介状をもらっていたので王都で店を構えるカリンドの工房に挨拶をしておく。グラントの剣を鍛えた工房で、王都でも随一の工房だ。C+ランクくらいの冒険者では高嶺の花といった店ではあったのだが、いい装備を整えることができるということで妥協はしない。実際はカリンドの名声が高すぎるだけで、初心者冒険者からベテラン冒険者まで幅広い価格で良質の商品を取り扱っていた店で、さすがはケリンド達の長兄の工房だと思った。紹介状を渡し、4人で予め決めていた予算――学生冒険者が出せそうなくらいの――で防具を新調した。カリンドからは素材の持ち込みをすれば技術料だけで装備を造ってくれると約束してもらい、ラインバッハ領から持ってきた酒――米を発見してから清酒の醸造を始め、やっと最近いいものができはじめた――を土産に渡した。一口飲んだらものすごく上機嫌になった。

 ダンジョンの中では、俺とマリーが前衛、リズとセリアが後衛という布陣で挑んだ。レベル上げとともに、まだEランクであるセリアを俺たちと同様のC+に上げることが当面の目標である。マリーもラインバッハにいた時にC+になっていたので、セリアだけ上げればいい。B以上になる試験はその後に受ける必要があれば受けようということになった。セリアは光と治癒の魔法と格闘術で戦うスタイルだった。試しにレベルを聞いてみるとすでに70となかなかに高い。ラーズリーグにいた頃、修行ということで神殿騎士団たちと魔物の討伐などを行っていたころがあるそうだ。美少女神官が笑顔で魔物を撲殺する様はなかなか怖いものがある。アンデットとかも平気で殴りつけるんだもの、躊躇なしで。なかなかの度胸である。若干マリーが引いてたのは秘密だ。あとで話を聞いてみると、アンデットを殴るときは予め浄化魔法を全身にまとっているため汚れないそうだ。そんなこんなで日々は過ぎ、セリアのランクはDになっていた。続きは学院に入ってからってことにした。


 俺の宣誓も終わり、入学式は特に問題もなく進んだ。このあと、クラスに戻りクラスでの自己紹介を行った。俺達4人は同じクラスで、特に入試の成績がよかった16人が集められた選抜クラスだそうだ。変に気位が高いやつがいないといいんだけど。そんな心配は杞憂に終わり、第一印象はみんなそれなりにいいやつっぽかった。そーいった気位が高そうなやつとかは他のクラスにはいそうだ。『なんで貴族の俺が……』ってなってるやつが絶対いる。アトモスからは暗にそういうヤツからクラスメイトを守ってくれと言われた。リズ辺りは自力でなんとかしそうだけど。


「クエスト様、まさか同じクラスになれるとは思いませんでした。これから1年よろしくお願いします」

「クラスメイトなんだし、同じ学生なんだから呼び捨てでいいぜ、クライン」

「そんな恐れ多い、でもなるべく馴れるようにします。ありがとうございます」


 クラスメイトになったラインバッハ領の領民であるクラインに声をかけられる。選抜クラスに入れる領民がいるなんて鼻が高い。彼の家はラインバッハ領で稲作を行っている村の村長だ。たしか次男だったと思う。何度か会ったことはあったし、同い年ということで村に行った時は遊んだこともある。せっかくだから昼食を一緒に取ろうということで、一緒に食堂へ向かう。

 学院での食事は基本的にはすべて支給される。全寮制なので朝夕は寮の食堂で、昼は学院の食堂でっということになっている。寮の食事は固定だが、学院での食事は3種類の定食メニューから選べるようになっている。今日はメインがチキンステーキ、クリームシチュー、白身魚のムニエルのようだ。


「クエスト、彼は?」

「うちの領地の領民でクラスメイトのクライン。マリー、自己紹介しっかり聞いてなかっただろ?」

「お初にお目にかかります、マリーメイア様」

「クラスメイトだし、学院では身分は違うからマリーでいいわよ」

「わかりました、それではよろしくお願いします、マリーさん」

「よろしい。こちらもよろしくね、クライン」

「クライン様、お久しぶりです。同じクラスということでよろしくお願いします」

「クライン君、セリアだよ、よろしくね」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 そのあとは5人で昼食を取りながら談笑した。ちなみに選んだものは、俺とセリアがチキンステーキ、クラインとリズがクリームシチュー、マリーがムニエルだった。ちなみに学院にいる間は基本的にリズは俺の専属メイドという立場ではないようにしている。そもそも住んでいる寮が違うからだ。寮は3人部屋なのだが、偶然にも3人は同じ部屋だそうで、マリーのお付に近い形で行動するつもりらしい。今日は特にこの後は何もないということで、寮の自室に戻ることにした。



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