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第28話 三人目

0時にも更新していますので、そちらを読んでいない方はまずそちらからお読みください。

 入試を終えて会場を出る。入試さえ終われば各自解散なので1週間後の結果発表までは特にやることはなく、当初の予定通り冒険者ギルドに行って登録を済ませて、適当な依頼をこなすなり、タリウスまで足を伸ばしてダンジョンにこもるなりしようかと思っていた。この辺は、リズやマリーとの相談は必要だ。俺とリズは特に予定はないが、マリーはこの国の王女殿下なのでやることがあるだろうし。

 そんなことを考えながら3人で学院の正門に向かって歩いていた。俺たちの受験番号は終わりの方だったので、既に校内にいる受験者達は少ない。まぁ、受験が終われば結果発表以外にここには用事はないだろう。


「見ぃ~つけたぁ~!! ふぎゃっ!!」


 背後からそんな声とともに何者かが俺に飛びかかろうとした。俺は気配を察知していたので、体をずらして避けると、勢いのまま飛びかかってきた人物が地面にダイブする。神官服を着た金髪の少女。ただ俺たちと違うのは、獣の耳とふさふさの尻尾――キツネの獣人だということだ。


「避けるなんてひどいよー」

「後ろから飛びかかってくるのはひどくないのか?それも見ず知らずの他人に」

「あうー」


 なぜか目で訴えてくる。こいつだれだ?女神教関連に俺は知り合いはいない。正確にはラインバッハの神殿の司祭くらいだ。


「クエスト様に飛びかかるとは、あなた何者ですか?場合によっては許しませんよ」


 リズが殺気を放ちながら次元倉庫に手を入れている。殺る気だ。それはまずいぞっとマリーを横目に見るとマリーも剣に手を置いて冷たい笑顔を浮かべている。


「はわっ!!すみません、あたしはセリア。一応女神教で司祭をさせていただいてます。それで神託がおりまして、クエストさんを探していたのです」

「神託?イセリア様から?」

「はい、そうです。無礼は申し訳ありませんでしたから、痛いのはやめてください」


 彼女――セリアはそのままの土下座で謝罪する。その姿にマリーとリズも毒気を抜かれたのか殺気が消える。どうやらOHANASHIはしないで済みそうだ。しかし、神託。ひょっとしてなにか起きて俺を再び勇者認定するのか?たしかになにかあった時は協力するとイセリアとは約束していた。


「顔を上げて。それで神託ってのは?」

「ここでは……申し訳ありませんが、神殿までご一緒してください。お連れの方にも関係ありますので、ご同行お願いします」


 セリアは俺たちに深々と頭を下げて同行を願う。別に俺たちは構わないので了承して正門を出た。そこにフィリップが馬車を用意して待っていたので、神殿までお願いする。


「おかえりなさいませ、聖女様。お連れの方々は神託の?」

「はい、なので応接室を使わせてもらうよ~」

「わかりました。大司教様にもすぐにご連絡をします。それからお茶をお持ちします」


 聖女?聖女とか言ってなかったか?マリーとリズも顔を見合わせている。女神教の聖女の話は噂程度には聞いていた。気さくな少女で貧富の区別なく民と接し、孤児院などの手伝いも積極的にする。またその治癒の力は絶大で死にかけた人々を癒やしたという噂もある。なにより女神イセリアの神託を教主以外に受けることができるという。本来ならば、教主と対立したり利用されそうだが、彼女自身が教主の孫であるためそんなこともないという。しかし、彼女はローレンド王国ではなく、女神教の総本山であるラーズリーグにいるはずである。


「セリアはなんでこの国に?」

「神託を受けて、その関係でこちらの学院に入学するためによ」

「神託の内容ってのは?」

「それは、お父s――大司教様がいらしてから話すわ」


 通された応接室で出されたお茶を飲みながら大司教を待つことにする。セリアと会話をするとなぜかマリーとリズが少し不機嫌な感じがするのを感じた。まぁ、婚約者が他の女と話してればやや不機嫌にもなるか。


「おまたせして申し訳ありません」


 いかにも高等そうな神官服を着た腰の低いおっさんが応接室に入ってくる。なんていうかこの神殿で一番偉い人のはずなのにとてつもなく腰が低い感じがする。ちなみにこのおっさんもキツネ耳でキツネの尻尾をもった獣人だ。さっきセリアがお父さんと言いかけていたから彼女の父親なんだろう。


「セリアさんに神託が我々に関与していると聞いてこちらにきたのですが」

「はい、神託の内容は『聖女セリアをクエスト・ラインバッハの妻の一人とすること』です」

「「「はぁ!!??」」」

「神託を受けたのは教主様です。セリアが受けたのならば彼女の狂言ということになりますが、教主様自ら女神イセリア様より受けた神託なのです。当然、教主様はラーズリーグにおりますので、クエストさんがどんな方かは知りません。私の方に問い合わせがありましたので、『マリーメイア殿下の婚約者です』とはお応えしましたが、神託は神託ですので、我々としては殿下にま申し訳ありませんが、側室の一人に加えていただきたいとお願いしたい所存です」

「神託で嫁を押し付けられるのか、俺は」

「納得行かないのもわかります。我々としてはまだ成人もしていない男女ですので、同じ学院に通って親睦を深めてから考えてもらうつもりでセリアをこちらの学院に入学させるべく、入試を受けさせました」

「神託っていうけど、セリア、あなたはクエストと結婚することに納得しているの?」

「あたしは納得してるわよ。クエストさんは私の好みだし、マリーメイア殿下やリーゼロットさんの二人を囲う甲斐性もあるみたいだし」

「私は、クエスト様が決めることなので私からは何もありません」

「私もクエストが決めることだと思うわ。以前にも私たち二人だけですむとは思っていないって言ったから。まさかこんなに早く3人目とかは思わなかったけど」


 納得はしていないようだが、俺に決めろと言ってくる。いきなりまた婚約者が増えるってのは俺的にもどうだという思いもあるが、セリアについては少し気になることもある。


「すみません、大司教様、それからマリーとリズも少し部屋から出てもらえるか?セリアと二人だけで話がしたい」

「別に構いませんよ」

「わかったわ」

「わかりました」


 3人は部屋から出て行く。応接室には俺とセリアの二人だけになる。


「単刀直入に聞く。どういうつもりだ…イセリア?」

「あれ?バレた?」

「名前くらい捻れ。たしかに見た目は全然違うが」

「この娘は私の分身なのよ。だから能力的には普通に獣人よ。まぁ神の分身の時点で特別ではあるけど。それに本体とは意識は別よ。あなたに協力して今回の人生を幸せにするのが私の使命だから。

 まぁぶっちゃけ、忍のときから含めてあなたとはいろいろとあったから、あなたのことがずっと気になっていたってのはあるのよ。女神がちょっと本気になっちゃったんだから、責任とりなさいよ」

「むちゃくちゃだな、お前。ま、俺も男だし、かわいい女の子に言い寄られるのはやぶさかでもない。まぁ、相手は選ぶけどな。だからお前の求婚は受け入れる。ただし、あとでマリー達から言われるかもしれないけど、マリーが正妃、お前とリズは側室になるけどそれはいいんだな?」

「ノープロブレムよ。体裁的にそうってだけで、平等に愛してくれるんでしょ?」

「それはまぁ、俺はそのつもりだ」

「なら、不束者ですがよろしくお願いします」

「はいよ」


 予想通りセリアはイセリアだった。ただし分身ということで本体とは違うらしい。本体が世界の監理ってのを忘れて俺との色恋にかまけてたら大変だからな。女神様はそこのところの分別はちゃんとあったらしい。俺は3人を部屋に呼び戻す。


「セリアと話し合った結果、彼女を3人目の婚約者として受け入れることにしました。マリーとリズにはあとでその経緯を詳しく説明する」

「「わかったわ(わかりました)」」

「マリーメイア殿下、リーゼロッテさん、よろしくお願いします」

「ありがとうございます、クエストさん」

「いえ、大司教様――いや、義父上とお呼びしたほうがよろしいですか?コレはまぁ、あんまりいいたくないんですけど、運命なんでしょう。女神様の導きです」


 女神様の導きって単語でなにか大司教も感慨深いなにかがこみ上げてきたっぽい。ああ、この人大司教だけあってやっぱ信仰心あるんだな。


「婚約者が増えた件を陛下にお話したいので、マリー申し訳ないけど、予定を聞いてもらえる?その時に一緒に来てもらうことになると思うんで、セリアとリズも予定を開けておいてくれ。あと、今日は少し時間がないから、明日、屋敷の方で話をしたいから、マリーとセリアは10時くらいに迎えをよこすから屋敷に来てくれ」

「「わかったわ」」


 とりあえず今後の予定を話し合ったあとに、俺達は屋敷へと戻った。屋敷にはお祖父様がいたはずだから今回の報告をしないといけない。ついでに手紙を両親にも送らないといけないな。案外やることがある。リズには俺たちのことをマリーに伝えると断っておいた。『セリア様にはよろしいのですか?』っと聞かれたので『彼女のことについてはその時に話す』っと言っておいた。まさかこんな短期間に婚約者が増えるなんて…もう、増えないよね?







お読みいただきありがとうございます。


ご意見ありがとうございました。各話にタイトルをっということで今後そのようにさせていただきます。

またなにかありましたらよろしくお願いします。

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