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第18話 二人目

「見事であったぞ、クエスト。お前は魔法も使えるとミリオンから聞いている。もしも魔法を使ってよかった場合はどのような戦い方をしたんだ?」


 国王が俺に労いの言葉をかけてくる。俺は「ありがとうございます」と礼を言っておく。謁見の間の時とくらべて、少しだけフランクな感じの接し方をし始める国王に少し戸惑うが、こちらが素なのだろう。


「私も興味があるわ。今回は剣のみとこちらの希望を聞いてくれたけど、本来ならどんな戦い方をするの?」

「そうですね、俺の本来のスタイルで戦うと、きっと騎士の方々にはかなり不評な戦い方になると思いますよ。マリーメイア殿下のように軽装の者と戦うのであれば、まずこいつを俺と相手の間に巻きます」


 そう言って俺は、撒菱を見せる。周りにいたみんなは「一体なんだこれ?」っといった感じで見ている。


「本来は逃走用に使うんですけど、これは刺が必ず上を向くように作られています。そしてこれを踏むと…わかりますよね?」


 聞いていた全員の顔が引きつる。アレを踏んで足に突き刺さることを想像したのだろう。非人道兵器と言われてるとか噂だしな、これ。


「これで、足止めをして距離を一定に保ちながら投げナイフを連続投擲します。この時、相手に対して円を描くように移動しながら。時々相手の足元に撒菱を巻いて相手が動けないようにしながらですね。

 他には、俺は無詠唱で自分の使える魔法をつかえますので、相手を囲むように土壁を作って隔離します。そこに本来の戦闘なら火球の魔法でもぶち込みますかね。今回のような模擬戦ならば水魔法で水をちょろちょろ入れて水攻めで相手の反応を見ますが。

 相手が重装の騎士なら、まず足場をぬかるみに変えて動きを阻害したあとに、そのぬかるみに電撃魔法を放って無力化するという方法もあります。ほかには……」


 俺がいろいろな戦法を語ると、みんなマジドン引きである。こちとら忍者だ、正攻法をしなくてはいけない理由がない。最初にも言った通り、騎士達には不評だろう。こちとら伊達に黄金の鉄の騎士に「きたない、さすが忍者きたない」とか言われてる忍者ですよっと。いやこの世界に忍者って職業はないけどさ。今回は魔法無しの武芸勝負って言われたから、馬鹿正直に剣で勝負したんだから文句はないだろう。


「クエスト、さすがにそれらの戦法を今日やったらドン引きだったよ」


 父上が苦笑する。いや言っただけでもドン引きだったでしょう、みんな。そして、俺から受け取った撒菱を興味深く見ている。なにか思うことがあるみたいだ。


 模擬戦はこれまでにして昼食会となった。通常は昼食会などないらしんだが、国王と父上はプライベートでは親友のような間柄で仲がいいらしい。なんでも学院では先輩後輩(父上の方が年下)の仲で学院卒業後、一緒に冒険者をしていたという。だから久々にいろいろ話したいらしい。昼食会に出席するメンツは、国王に王妃様、マリーメイアに先ほどいた青年、父上と俺の6人だ。食事はなかなか豪盛だ。俺は今までに手に入らなかった食材がないかを確認しながら料理を楽しむ。


「それでは、王妃様も父上と一緒に冒険をしていたんですか」

「ええ、楽しかったですよ。あなたも冒険者をしているんでしょう?」

「はい、我が家の仕来りで10歳になったら冒険者として活動することになってますので、専属の従者とコンビで活動しています」

「専属の従者って男?女?」

「メイドですから女性だよ、マリーメイア様」

「そう……」


 なぜ沈んだ表情をする。マリーメイア。国王からもっと気軽に知り合いと話すようにはなしていいと言われたが、さすがに目上の人には当然口調を変える。マリーメイアは同い年だから普通に友人のように接しようとした。


「ラインバッハ家みたいに冒険者として修行をする貴族は多いね。というか、王族である僕達も同じようにしているから余計にそうなんだろうね」


 青年――第2王子のマグナリス様がそういう。国王が父上と冒険者をしていたことからわかるように王族もどうやら冒険者として活動するらしい。この冒険者として活動することには意味がある。戦闘などの訓練という意味もあるが、俺はそれ以上に平民たちの生活などを知るという意味があると思っている。そういった意味を考えずに横柄に振る舞うバカもいるだろうけど。


「そういえばクエスト、お主、料理にはうるさいらしいな。ラインバッハ領からこちらにも広がりつつある味噌と醤油と言った調味料の開発にも一枚噛んでいると聞いたが」

「エリオット、実は一枚噛んでいるどころかクエストが最初に作ったんだよ。なんでも書物に載っていた遠い異国の調味料を再現したらしいんだけどね。

 それからそれらを使った幾つかの料理をうちの料理長と開発したりしてるね」

「ふむ。今回の料理はどうだったかな、クエスト」

「大変美味しいですよ、陛下。」


 料理人の腕はさすが王宮ということでうまい。残念なのは特に新しい食材に出会えなかったことだ。今は食後のデザートを食べている。個人的にはこの世界のお菓子には不満がある。なんというか甘いだけなんだ。甘すぎる。だから俺はデザートは果物ばかり食べる。というか父上、国王を呼び捨てですかプライベートではこれなのか。


「クエスト、さっきからデザートは果物ばかりね」

「個人的にですが、お菓子は甘すぎるので」

「お菓子ってそういうものでしょ?」

「うーん、俺の感覚からいくと砂糖を使いすぎなんだよ。そういう文化なのかもしれないけど」

「そうなんだ」

「今度自分でも作ってみようかな、お菓子を」

「作れるの!?」

「簡単なものなら。王都に滞在中になにか作ってみようかな」


 俺のその発言になぜかみんなが反応した。父上は俺の料理の腕を知っているから期待してるみたいだ。言われてみれば家でもお菓子は作ったことがない。作ればピュリアが喜ぶかな、作ってみよう。


「そういえば話は変わるんだが、前からお前の家には打診はしてたんだが、クエスト」

「はい?」

「お前、マリーメイアの婚約者に決まったから」

「は?」

「父上、聞いてないです!!」

「前々から決めてたことだが、俺とアンゼがクエストを気に入ったからな、さっき決定した」

「まぁ、アンゼとピューリスの間でも子供同士をくっつけたがってたからね」


 母上も共犯者かよっ!!


「それともクエスト、俺の娘に不満でもあるか?」

「いえ、むしろ光栄ですよ。マリーメイア様はアンゼロット様に似て美人ですし」


 アンゼロット様ってのは王妃のことな。この人はマリーメイアに似ている。まぁ母親なんだから当然なんだが。彼女は将来、こんな感じに育つんだろうなぁ。


「家としては大変光栄なことだし、ボク達も乗り気だから受けるつもりだけどクエストも反対じゃないようだし、この話は進めていこうか」

「そうだな。俺たちの友情も更に深まるな」


 がっしりと握手する父上ズ。アンゼ様もとても嬉しそう。マグナリス様はなんか影が薄い。マリーメイアはなんかブツブツ言ってる。俺はどうしたらいいかわからないが、かわいい婚約者ゲットって喜べばいいんだろうか?前世もその前の前世もあんまりこういったことはなかったから戸惑いはないわけでもない。


「クエスト。婚約者になったんだし、これからは私のこと『マリー』って呼んでよね」

「わかったよ、マリー」

「それから、お菓子作ったら食べさせなさいよ」

「それはもちろん、口に合うといいけど」


 昼食会も終わり、別れ際にマリーとこんな会話をした。今回の謁見の目的ってホントはこれだったんだろうなぁっと今考えるとそうとしか思えなかった。帰路の馬車の中で、父上がものすごく上機嫌だった。なんかムカついた。





お読みいただきありがとうございます

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