第17話 謁見と模擬戦
今回は新しい女の子でますよ
冒険者登録をしてから3ヶ月、俺たちはランクCになっていた。魔物の森での討伐依頼をメインに活動していた結果だった。何も考えずに魔物の森の先にある竜王山脈の方まで進もうかと考えたが、10歳と12歳が竜種が住む山々に行って竜を狩ってきたなんて行ったら何かと話題になりすぎるので自重した。なので、魔物の森の浅い所までに出るも魔物を狩っていた。時々、その辺りにある薬草などの素材の採集をしたりして。
この年齢でのランクCになっているというのは異例なわけで、既に目立ちまくっているわけだが。武闘派であるウチの家族はものすごく喜んでいたりする。褒められれば俺も嬉しいわけだけど、あんまり有名になりすぎるのもなぁっと。D+で止めておけばよかったんだけど、つい調子に乗ってCランクの昇格試験を受けてしまったのが間違いだったかもしれない。やってしまったことは仕方ない。とりあえずBランクにはとーぶんなるのはやめておこう。
「明日から、王都にいくから準備しておいてね」
朝食の時に父上に言われた。そういえば王都に連れてくって言ってたなぁ、この前に。王都行って国王陛下に挨拶するんだっけ?貴族の長子の義務とか行ってたな。人生初の王都行きだし、テンション上がるわ。
朝食後、約束していたピュリアと遊んであげる。妹という存在はやはりかわいいし癒される。「兄様~」って俺の後ろを追いかけてきたり、抱きついてきたりしてほんとかわいい。妹が可愛くない兄などいるであろうか?いやいない。王都に行ったらピュリアにおみやげ買ってきてあげないとな。そんなことを考えながら妹の相手をしている俺を、なぜかリズは生暖かい目で見ていたが、気にしない。そんなに俺、デレデレしてるんだろうか?
「兄様、今度ピュリアに魔法おしえてー」
「母上がいいって言ったらね」
「はーい」
もうじき4歳になるピュリアが魔法を習いたいと申し出てきた。そういえば母上同様に4属性に適正があるんだっけなぁ。うちには母上と俺っていう優秀な魔術師がいるわけだからきっとこの子も優秀な魔術師になるだろう。父上の血も引いてるわけだから、優秀な魔法戦士になってしまうかもしれない。彼女の道は彼女が決めなければいけないわけだから、俺は強要するつもりはない。魔法を覚えたいというなら母上が許可があれば、教えてあげるつもりだ。
「明日から、王都へ行くから、おみやげ楽しみにしてて」
「ピュリアも行きたい」
「うーん、もうちょっと大きくなったらかな?王都まで馬車で2週間かかるから、ピュリアだと大変だからね」
「えー」
「ピュリアまで行っちゃったらお留守番する母上が寂しいだろ?」
「母上寂しくなっちゃうの?」
「そうだよ。だからピュリアは母上とまってて。いい子にしてるんだよ」
「はーい」
なんとかピュリアを説得する。王都まで馬車で片道2週間くらいかかるらしい。王都までの行程で途中の街や村によることを踏まえての時間だ。時間だけなら、この街と王都を結ぶ転移門を使えばいいわけだが、転移門は使わない。貴族が移動するということは、途中の街や村に金を落とすということで、それによって経済が回る。緊急時以外は普通に移動することが貴族の義務だ。めんどくさいけど仕方ないことだ。
そんこんなで、翌日には出発する。いつもどおりに馬車の業者はフィリップで、父上と俺とリズ、それから護衛のグラント達である。途中に出てきた野盗や魔物は修行がてらにグラント達と一緒に戦った。父上もCランクになった俺の実力を見たいようだったので、簡単に許可をくれた。今思うと、野盗と戦うことによって対人戦闘の経験を積ませたかったのかもしれない。そっちの意味での童貞をまさか今回の人生は10歳で卒業するとは思わなかった。普通の日本からの転生者ならここで葛藤もあったかもしれない。俺の場合は、前世とそのまた前世の記憶が特殊だ。すでに心構えもできているせいか、至って冷静で、そのことを、父上やグラント達が驚いていた。俺だって奪わなければいいとは当然思っている。でも、やらなければやられる状況でそれは言ってられない。実際問題として、この辺の野盗ごときが俺を殺せるわけないんだけど。
俺たちは予定通りに王都の屋敷に到着する。屋敷の侍従長のメリダ――リズの祖母率いるメイドたちに出迎えられる。リズも久しぶりの再会に嬉しそうだ。今回の滞在は1週間程度で、国王陛下へに謁見と俺の希望で学院の見学(母上に頼んで学院長と会えるようにしてもらった)を行う予定だ。残りの日程は基本は王都の観光となる。グラント達は、基本は俺たちの護衛。ただし王宮に入れないので、その時は休暇ということになっている。
というわけで着ちゃいましたよ王宮に。見事な造りのホント城で思わず感動してしまった。前世とかでも王宮に行ったことはあるけどそれでも圧巻してしまう。そして謁見の間。国王陛下に数名の有力貴族、あとは護衛の騎士といった人たちがいた。
「お初にお目にかかります。ミリオン・ラインバッハの子クエストです。国王陛下にお目通りが叶い光栄です」
臣下の礼を取りながら挨拶をする。こんな感じでいいんだろうか?隣の父上は満足そうだが。
「表を上げるがいい、ミリオン、クエスト」
「「はっ」」
「ミリオン、お主の息子はなかなかの面構えだのぉ」
「ありがとうございます」
「聞くところによると、お主の武芸にピューリスの魔術の両方の才能を引いているとか。クエストよ、成長を楽しみにしているぞ」
「はい、ご期待に応えられよう精進します」
そんな感じで謁見をしていると、謁見の間の出入口の扉が勢いよく開けられる。そしてそこには、THE姫って感じのドレスを着た栗色の髪をした美少女が立っていた。年齢は俺と同じくらいか、ホント美少女である。そして、俺を確認するなら俺のところまで歩みよってくる。彼女の後ろを侍女が「お待ちください姫様、謁見中ですよ」っと追いかけてくるがもう手遅れだ。
「あなたがクエスト・ラインバッハね。私は、マリーメイア・ローレンド。あなたに勝負を挑みます」
「はい?」
「これ、マリー、クエストが驚いているぞ」
「申し訳ありません、父上。無礼なのも承知です。でも、同年ですでに冒険者ランクCとなっている彼の強さに興味があるのです」
マリーメイア・ローレンド――今の会話からも分かる通り、彼女はこの国の王女殿下だ。そして、俺の強さに興味があるから勝負しろと行ってきている。俺は困惑した振りをして彼女を軽く鑑定する。レベルは50だ。年齢は俺と同じく10歳。俺やリズみたいな規格外を除けば、彼女のレベルはかなり高い。一般的なCランク冒険者がレベル60前後くらいと言われているのでD+くらいの実力があると思われる。ちなみに俺のステータスカードでのレベルは56にしてある。
「マリーメイアがこう申しているが、クエスト、お主はどうじゃ?」
「失礼でないのであれば、構いませんが……手加減はしませんよ?」
「当然よ、あなたの実力をみせて」
「ならば、昼食前に済ませよう。マリーメイア、クエストよ準備するのだ。これにてクエストの謁見を終了する」
隣の父上がなにかため息を吐いていた。手加減しない宣言をしたがアレはウソだ。俺が本気でやれば一瞬で勝負が付いてしまう。なので、彼女の実力と同程度で接戦をし、どこかタイミングのいいところで負ければいいっと個人的には思っていた。
あてがわれた部屋で普段冒険者として活動する皮鎧に着替えて準備する。武器はこの城の騎士団の練習場にある木製の物を使うということなので出していない。父上は、「ちゃんと相手をするように、それからわざと負けるな」っと言ってきた。え?負けちゃダメなの?っと思っていると「それは姫殿下に失礼だろう?」っと言ってきた。父上の話だと、彼女の実力は俺と同程度らしい。あくまで父上の知っている俺の実力と。聖騎士である父上は王都に来るたびに何度か彼女と手合わせをしたらしい。その度に、息子同様筋がいいとか言っていたらしいので、そこが彼女の対抗心を刺激したんじゃないかと思うと、今回の元凶はこの人なんじゃないかと思った。
練習場につくとマリーメイアも同時くらいにその場所に現れた。一緒に国王陛下とたぶん王妃様、それから10代後半くらいの青年が一緒にやってくる。それから騎士団の連中が見学といった感じだ。こちらは父上とリズがついてきていた。
「私は木剣を使うけど、あなたは?」
「俺も木剣を使いますが、すみませんショートソードくらいの長さの物ってありますか?」
俺が騎士の方に尋ねると、騎士は「これでいいですか?」っとショートソードくらいの長さの木剣を持ってくる。俺は礼を言って受け取る。
「あなた、なめてるの?」
「いいえ、俺の一番使い慣れている武器がこれなんですよ。一応、お祖父様から槍も習っていますが、一番慣れている武器を使っての試合をお望みでしょう?」
「そういうことならいいわ」
試合の審判をしてくれるという騎士が俺たちに近づいてくる。どう見てもこの人、最低でも隊長クラスの人だぞ。ヘタしたら父上同様に聖騎士だ。彼の合図で、俺達は構える。
俺は木剣を右手で逆手に持つ。この構えをしたら父上が目を細めた。そういえばこの構えを見せたことはなかった。
「そういえば始める前に質問してなかったことが…魔法はなしですよね?」
「そうね、純粋の武術の勝負をお願いするわ」
「分かりました」
審判の開始の合図で、彼女が俺との間合いを詰めて突きを放つ。俺はギリギリを見極めてそれを避ける。そのまま彼女は連続突きをしてくる。俺は最小の動きでそれを躱し、彼女の腕が伸びきったところで、剣を払う。彼女がバランスを崩したところで間合いをあける。俺の回避をみて、父上と審判役の騎士が関心したような顔をする。今度は俺が彼女に連撃を浴びせる。マリーメイアが剣で捌ききれる程度の攻撃だ。事実、彼女は俺の攻撃をすべて木剣で払う。木剣で払ったということは見えているということか。ならばもう少しスピードを上げてもいいだろう。
そのまま数合打ち合う。彼女は俺の攻撃を受けないが、俺に攻撃をすべて躱されており、少々の焦りを顔に出していた。しかも俺の攻撃がだんだん早くなって来ている。そのうち捌ききれなくなると思っているのだろう。
「なかなかやるわね」
「殿下こそ。さて、そろそろ勝負を決めましょうか」
「いいわ、最高の一撃をお見舞いしてあげる」
彼女がタメに入った。渾身の一撃を繰りだそうとしているのだろう。彼女の剣は剛柔併せ持つなかなか見事な剣技だった。もっともまだまだ荒削りなのが惜しい。そして俺に対して上段からの唐竹切りを繰り出してくる。素晴らしい剣速だ。俺はそれを木剣で受け流すように躱すと体を移動させ、彼女の後ろに周り込み、首筋に木剣をつける。周りが静寂に包まれる。
「勝負有り!!」
審判の声に俺は木剣を首筋から外すと、マリーメイアの前に戻る。そして一礼した。
いつもお読みいただきありがとうございます。
新しい女の子出しました。クエスト君がハーレム作るかは未だに迷っていたりします。ですが、妹ちゃんとくっつけるとかは絶対にないです。でも兄っていうのはシスコンなんですよ。




