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第15話 冒険者登録

 「クエスト、あと半年でキミは10歳になる。その前にキミに行っておきたいことがある。このラインバッハ家の仕来りについてだ」


 10歳の誕生日を半年後に控えたその日、父上は俺を呼び出して真剣な表情で話を切り出した。この国で人間は15歳で成人として扱われる。その5年前である10歳になった時、この国では国教であるイセリア教の教会で儀式を行いステータスカードを入手する。(国によっては生まれてすぐというところもある)ステータスカードは身分証明書となっていて、神が発行する特別な物だという認識だ。当然偽造はできない。これによりこの国では10歳から働くことができるようになる。なぜ10歳かというのは、この世界、なかなか10歳まで行きられない子供というのも多いらしい。逆になぜか10歳まで育てばめったなことで病気などで大人にならずに死ぬということがないらしい。


「我がラインバッハ家では、10歳での儀式後に男子は冒険者になって貴族の仕事に着くまでは冒険者として活動してもらうことになっているんだ。もっとも12歳から王都の学院に通ってもらうから、そこを卒業するまでは学生なんだけど」

「ってことは、10歳になれば冒険者として街の外なんかにも自由に出ていいんですか?」

「なぜそんなに嬉しそうなんだ、キミは」

「すみません、はしゃいじゃって」


 コレは思いもつかなかったことだ。冒険者として活動できるってのはとても嬉しい誤算だ。


「そーいえば男子はってことは女子、つまり女子は特にないってことですか?」

「ピュリアが心配ってことだね。特に女子については何もないよ。彼女が冒険者になりたいっていうなら止めはしないし、教会や王室に行儀見習に行きたいっていうならそれも止めない」

「冒険者になった場合は家をでないといけないんですか?」

「いや、家から通ってもらうよ。ボクもそうだったし。それに貴族としての仕事もたまにあるからね。とりあえず1度ボクと一緒に王都に行って国王陛下に挨拶があるんだ。貴族の長子は10歳になると一度国王陛下に謁見をするということが義務付けられているんだ」

「そんなことがあるんですね。わかりました」


 国王への謁見か、緊張するな。長子をあわせる儀式ってことは跡取り息子を国王にお目通りして、顔を売るっていった感じなんだろうなと予想できる。王都は行ったことが未だにないからとても楽しみだ。


「ボクが冒険者として活動する場合、リズはどうなるんですか?彼女が希望するなら一緒にパーティーを組もうとかと思ったんですが」

「彼女が希望するならそれで構わない。彼女はキミの専属だからね。それに彼女は優秀だから学院に入学する際も一緒に入学してもらおうかと考えている」


 リズの評価高いな、おい。それはそうと引き離されるわけではないみたいだからよしとしておこう。俺一人でも冒険者としてやっていけるが、二人のほうがなにかと便利だし。


「10歳のお祝いの前払いになるんだけど、支度金を渡すからコレで二人の装備を整えるといいよ。あんまりたくさんのお金はないんだけどね」


 父上に金の入った袋を渡される。結構の額がありそうだ。この世界の貨幣の単位はドネーである。銅貨が1ドネー、青銅貨が10ドネー、銀貨が1000ドネーで、金貨は10000ドネーとなる。基本となる硬貨が青銅貨と銀貨ってところだ。1ドネーがだいたい日本円で10円くらいと思ってくれればいい。次元倉庫に入れたら所持金が3万ドネーほど増えた。ちょっと多くね?


 俺は早速リズを連れて職人街の武器工房を尋ねた。グラント達が使っている鍛冶屋でコリンドの兄であるケリンドが経営している。なんでもコリンドは5兄弟の末っ子らしい。どうでもいいことだけど。


「ケリンド、武器を打ってもらいたいんだけど」

「ほう、クエスト様もいよいよ冒険者に?」

「10歳になったらね。それで、作ってもらいたいのは片刃の直刀型のショートソードで材質は鋼でいいかな?それだとどのくらいの値段になる?」

「5000ドネーくらいになるか。予算は?」

「10000を考えてたから安いならそれに越したことはないよ」

「了解した。4日後にまた来てくれ、バランス取りとかしたいからな」

「了解」


 さすがに新米冒険者が神剣腰に刺して行動するのもどうかと思いありがたく父上からの支度金で武器を発注する。新米が鋼製の武器ってのもなんだかおかしい気がするが。なおリズにも武器をつくるかと聞いたところ「魔王杖があるからいりません」っと言われた。


 次は防具工房だ、こちらはケリンドとコリンドの兄であるキリンドが経営している。5兄弟の上から2番目らしい。残り二人もこの街にいるんだろうか?とふと疑問に思ってしまう。防具は皮鎧とした。既成品を俺のサイズに手直ししてもらう。リズはメイド服でいいと言ったが、一応冒険者としての体裁があるので、メイド服の上に部分的に皮鎧という感じで納得させた。部分的な金属鎧というのも考えたが、あれはあれで重いから皮鎧でいい。こちらも4日後にまた試着してほしいと言われたのでそのように注文して屋敷に帰る。

 4日後に完成品を両方の店より受取り、装備の準備は終わる。ケリンドに頼んだショートソードは頼んで置いた通り片刃の直刀といったほうがいい形状だ。前もってイメージを教えていたので、その通りの仕上がり。さすがだと思った。防具の方もいい感じでフィットする。成長期なので成長する旅に修正が必要なんだがそれはそれとしておく。

 俺もリズも自分の次元倉庫に過去の最強装備を携帯している。これはよほどの実力者と戦う時や正体を隠したい時に使うように予め決めておいた。だって、忍び装束の子供とか魔王っぽい格好のメイドとかなんのコスプレ?って感じになりかねない。どちらも形状変化のエンチャントがされていて、体に合わせて大きさが変わるようになっているので、動きなどには問題ないんだけど。


 そして待ちに待った10歳の誕生日を迎えた。俺は今、イセリア教の教会の祭壇の前にいる。イセリア教はこの国の国教である。1000年前もあった女神イセリアを祀る伝統的な宗教だ。世界的に信仰されており、だいたいの国で国教となっている。最近(といっても300年くらい歴史があるらしいが)グランベルトが発祥である女神と勇者を祭った宗教もあるらしい。名前は忘れた。この国ではほとんど信仰されてないらしいから気にするつもりもない。

 祭壇の上にはサッカーボールくらいの水晶が安置されており、そこに指を小刀で切って血を一滴落とすという儀式が行われる。なお、傷はすぐに立ち会いの司祭の治癒魔法で治療される。俺は司祭に促されて儀式を開始する。

 俺の指から落ちた血は水晶球に吸い込まれる。そして水晶球が輝いたと思うと、水晶球から白色の縦7センチ、横15センチ、厚さ5ミリ程度の金属っぽいボードが出て来る。ボードの正面は黒いガラス質の物質でできていた……あれ?これってスマホじゃね?

 それを手に取る。どう見てもスマホだ。黒いガラスはどう考えてもディスプレイ。俺が触れるとディスプレイに


名前:クエスト・ラインバッハ

種族:人間

性別:男

年齢:10歳

Lv:1

出身:城塞都市ラインバッハ


 っと表示されている。レベルが1?っと疑問に思うと司祭が「ステータスカード発現時はデフォルトでレベルが1と表示されます。レベルの部分を指で抑えると1~現在のレベルまでで好きな数字を表示することができますよ」っと教えてくれた。つまり、現在のレベルを知られたくなければ低いレベルでの表示も可能なのか。俺やリズにとっては都合がいい。


「お疲れ様です。これでステータスカード発現の儀式は終了です。ステータスカードの使い方についての説明をさせていただきます」


 ここから司祭の長い話が始まった。要するに基本的に身分証明をする場合はこの一番最初の画面を見せればいいとのこと。とくになにもしなければこれ以上の機能はなく、ギルドに所属した場合、そのギルドによって必要な機能が追加されるそうだ。つまり冒険者ギルドにこの後行くのだが。そこで新しい機能が追加というわけだ。とりあえず、10歳がどのくらいのレベルなのかわからないので、リズにいくつにレベル設定をしてあるか聞くと10レベルと答えたので、俺もそのレベルに設定しておく。もしも高いみたいなことを言われたら、父上の特訓のせいですと答えるつもりだ。


 教会を出たら次元倉庫から皮鎧とショートソードを出して装備する。リズも同様に皮鎧を装備した。普通の服装でギルドに行ったら依頼をしに来たと間違われそうだったからだ。教会の外にはグラント達が待っていた。


「クエスト、10歳の誕生日おめでとう」

「ありがとう、みんな。」

「これから冒険者ギルドへ登録にいくんでしょ?一緒にいきましょ」

「Bランク冒険者パーティーに引率されていくんですか?ちょっと恥ずかしいかな?」

「気にしなくていいですよ。さ、いきましょう」


 大方父上に案内を頼まれたのだろう。特に問題があるわけでもないから一緒に行くことにする。ギルドまでの間、入会時に説明されることをみんなから教えてもらった。グラント達に教えてもらったと言われれば省くことができるそうなのでありがたかった。

 冒険者ギルドの建物は結構でかい。依頼を受けたり、登録の手続きをしたりする場所と、冒険者専用の酒場兼食堂があり、冒険者達の訓練所や素材の買取所などがあるためだ。建物自体も3階建てとなかなかのモノである。

 グラント達と中に入ると、中にいた冒険者達がグラント達をみて声をかけてくる。


「なんだグラント、ガキを連れてきて?お前の隠し子か?」

「ちげーよ。知り合いの子供で今日登録するから連れてきたんだよ。クエスト、そっちのカウンターで登録できるからリズと二人で登録してこい。俺たちはそっちで飲みながらまってるから」


 グラントに言われてカウンターの方に行く。カウンターではギルドの職員が冒険者達の対応をしていた。俺とリズは列に並び自分の順番を待つ。そんなに混んではいなかったため、すぐに受け付けカウンターまで行けた。受付をしてくれたのはエルフの職員だった。


「はじめまして、冒険者への登録ですか?」

「はい、今日10歳になって儀式をしたので登録したいです。こっちのリズは12歳ですんで二人共登録可能ですよね?」

「大丈夫です。ではこちらの用紙に名前の記入と、ステータスカードの提出をお願いします。代筆もできますが文字のほうは大丈夫ですか?」

「大丈夫です。」


 俺達は用紙を受け取り名前を記入する。その後にステータスカードを取り出し、受付嬢に渡す。ステータスカードは普段は体内にある(といわれている)。心の中で召喚と返還を唱えることによって出し入れをする。本人から10m以上離れると自動的に返還されるので、盗んでもほとんど悪用はできない。

 受付嬢は俺たちの登録用紙とカードを受け取り、なにかの魔道具を使って処理をしている。たぶんアレがステータスカードの機能追加処理だ。


「おまたせしました、ステータスカードをお返しします」


 受け取ったステータスカードの初期画面に冒険者ランクという項目が追加されており、二人共「E」と表示されている。一番下のランクだ。このランクは依頼の達成数や討伐したモンスターのレベルと数によって上昇していく。D+までは自動であがり、それ以上に+のつかないランクは昇格試験があるとのことだ。カードの画面をタップすると、現在受けている依頼内容の確認や討伐したモンスターの数などの画面に切り替わる。スマホっていうか小さいタブレットだこれ。


「ギルドについての説明をしたいと思いますが」

「あ、グラント達に教えてもらったので大丈夫です」

「そういえば一緒に入ってきましたね。あの人達から教わったのなら大丈夫でしょう。これからよろしくお願いします」


 登録を済ませた俺は、グラント達の待っているテーブルへ向かおうとする。そうするとガラの悪い冒険者が足を引っ掛けて因縁をつけてくるイベントが――発生しなかった、残念。まぁ、B+冒険者であるグラント達と一緒に入ってきて、その知り合いってわかっている時点でそんなことしてくるヤツはいないだろうなぁ。グラントたちにOHANASHIされてしまう可能性があるから。


「無事登録してきたよ、グラント」

「おつかれさん。ジュースで悪いが乾杯といこうぜ。せっかくだからお前らにも1杯ずつおごるぜ、新しい冒険者の誕生に乾杯ってことでな」

「マジかよ、グラント。マジ太っ腹」

「さすがBクラスは違うぜ」

「「「「「乾杯!!!」」」」」


 そして、冒険者ギルドの酒場で宴が始まった。その宴は、俺が帰るっても続いたらしい。酔っ払ったグラントが1杯とかいいつ気前よく全員におごってしまったらしい。


お読みいただきありがとうございます。


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