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第13話 ごはんそしておにぎりへ・・・

時間を・・・時間をくれ・・・orz

 まだ時間があるということで、グラントが宿泊している宿屋である『暁の地竜亭』に行く。枝豆の時以来、度々顔を出させてもらっているので、主人ともすでに顔見知りだ。自由な街への外出は無理だったが、たまに父上とグラントに頼んで連れてきてもらった。たまにブラド以外の料理が食いたかったりしたからというか、こーいう街の宿屋の食堂の料理もうまいんだ。

 今日は早速先ほど仕入れた米を使って庶民的な味を浸透させようとこの店で試させてもらおうと思っている。主人が認めるのならだけど。この辺は商売人だから仕方ない。もっともしたたかに自分でアレンジして店に出したりするからこの店主もなかなかに侮れない。


「お、クエスト様、今日はどうしたんで?グラント達なら依頼でいませんぜ」


 店に入るなり店主のデボラが俺に気づき声をかけてくる。食堂の片付けをしていたようだ。今日も繁盛していたのだろう。食器が積まれている。


「あ、クエスト様、久しぶり!!あれ、その女の子は誰?クエスト様の彼女?」


 ゲボラの声で俺に気づき、この店の看板娘で店主の娘であるエリシャも厨房から顔を出す。その他の従業員も俺に対して挨拶をしてくる。新しく入ったであろう従業員の少年だけ、誰だこのガキ?的な顔をするが、まぁ気にしない。というか、そういえばリズは初めてだった。


「はじめまして皆さん、クエスト様の専属メイドをさせていただくことになったリーゼロッテです。気軽にリズとお呼びください」

「専属メイドさんかーかわいいね、クエスト様頂戴!」

「やらん」

「お褒めいただきありがとうございます。しかし、私はクエスト様に忠誠を誓ってますので、お断りします」


 くだらない会話をエリシャとしたとに、本題に入ることにした。


「ちょっと珍しいかもしれない食材を見つけてね、ゲボラにどうかなって思ってさ。もうひとつ試作したい料理はあるんだけど、そっちは家でやってから持ってくる予定だけど」

「どんな料理なんです?」

「まずはコレを炊くんだ」


 俺は次元倉庫から米を取り出す。厨房担当の従業員が珍しそうに米を見ている。


「これは米って言って、南の大陸で食べられてるらしい穀物だよ。さっき商会で見つけてきて買ってきたんだ。ゲボラ、適当な大きさの鍋貸してもらえる、蓋付きのやつ」


 ゲボラは鍋を俺に持ってくる。俺は、近くにあったコップに10杯ほど米をすくって、鍋に入れる。とりあえず1升くらい炊けば試食とかその他で十分足りるだろう。水魔法で水を作り出すと米を数回研ぐ。


「今やったみたいに、数回水で米をまず研ぐ。コレをやって米についた汚れなどを取るんだ。ただし、水が白く濁ったと思うけど、完全にコレが消えるまで研ぐとまずくなるらしいからそこまではやらなくていい。あと、力任せに研ぐと米が割れてしまったりすることがあるから注意すること」

「ふむふむ、なるほど」


 俺は、研ぎ終わった米を入れた鍋に水を張る。米の表面から自分の腕のくるぶしよりやや上くらいの水分量にする。俺はまだ8歳なのでこのくらいが適量だろうと勝手に予測する。本来なら正確に量りたいところだが、いかんせんそういった器具がないのだから仕方ない。


「水の分量は、米を平にしてそこに手を置いてくるぶしくらいと言われてるけど、実際は米に含まれる水分量とかが関係するらしいから、だいたいの目安ってことで。例えば、ボクとゲボラとだと手の大きさが違うから同じくるぶしでもかなり変わってくるでしょ。この辺は何度か炊いてみて適量を決めたほうがいいかもしれない。

 で、この後、30分~1時間吸水させる。ここが重要だから。ってことで30分放置」

「30分の間は何します?」

「米、炊いた米は御飯っていうんだが、それに合うおかずなんかをつくろうか」

「どんなのが合うんですか?」

「ぶっちゃけなんでも合うんだけどな……魚を塩焼きにしよう。あと豚肉はあるか?それからシンプルに漬物もいいか」


 俺がそう言っているとゲボラが幾つかの魚と豚肉の塊を持ってくる。俺は次元倉庫から常に持ち運んでいる胡瓜と大根の漬物を出す。豚肉は薄く切って先ほど買って置いた生姜をすりおろし、醤油と少量の砂糖を混ぜた物に漬けておく。このつけダレを見たゲボラが肉を漬ける前に味見をさせてほしいと言われたので味見をさせる。ゲボラは「これはいい」と呟いた。俺は、砂糖よりリンゴがあればそれをすりおろして入れるのもいいと教えると今度試して見ると返答された。

 なんだかんだで30分がたち、米の入った鍋を火にかける。

「始めちょろちょろ~って米の炊き方の言葉があるんだけど、わかりにくいからそれは無視。まず強火で一気に中の水を沸騰させる。ただし吹きこぼれさせてはマズイから火加減は注意すること。沸騰は音とか蒸気穴から泡が出るだろうからそれで確認する。この辺はゲボラとかなら勘でわかる気がする。

 沸騰したら吹きこぼれない火加減で維持。これで米を煮る。蒸気がでていい匂いがしてくるだろ?」


 いい匂いってところで皆がコクコクと頷く。


「このまま煮ていると、蒸気穴から泡がでなくなって蒸気だけが出てくるようになるだろ?そうしたら中の音を注意深く聞く。沸騰している音が消えたら火を強める。強めすぎて焦げないように注意が必要だけど。焦げてるかどうかは匂いで判断するしかない。

 こうやっているとやがて蒸気がなくなってくるだろ?なくなりかけたら火を止める。あとは火を止めたまま15分くらい放置して蒸らす。

 あ、今気づいたけどしゃもじがない…ゲボラ、大きめのヘラある?」

「これでいいですかい?」

「ありがと、十分だよ」

「それじゃ蒸らしている間に魚とか肉を焼こうか」


 ゲボラ達に魚の塩焼きを焼いてもらっている間に俺は豚の生姜焼きを作る。キャベツがあったので料理人に頼んで千切りにしてもらい、皿に敷き詰めてもらう。出来上がった生姜焼きをキャベツの上に豪快に盛り付ける。


「すっごくいい匂い。醤油と生姜の匂いが食欲をそそるわね。コレ、ウチのメニューに追加していいの?」

「材料も店にあるものだし別に構わないよ」

「いつもありがとうございます、クエスト様」

「さて、蒸らしもそろそろかな?」


 俺は鍋のフタをあける。炊きたての米の香りが広がり、久しぶりのこの香りに思わず涙が出そうになる。俺は先ほど受け取ったヘラで米を混ぜる。


「炊きあがった米は、こうやって切るよう全体的に混ぜるんだ。そうすることで余分な水分を飛ばす。

 ん、うまい。」


 俺は御飯を少し手に取り、口に運ぶ。運良く短粒種の米、それもジャポニカ米に近い粘りと甘みのある米の味に思わずうまいと口に出してしまう。とりあえず、みんなには米だけの味を確かめてもらうために小皿に一口ずつ分ける。

 ゲボラを始めとする従業員達はそれぞれ米を咀嚼する。


「ほう、これはなかなか……もう少し頂いていいですかな?」

「あ、お父さんずるい、私も食べる」

「親方、俺達も食いたいっす」

「じゃ、今度は用意した、漬物や魚、肉と一緒に食べてみてくれ」


 従業員たちは俺の指示通り、おかずと一緒に御飯を食べる。ゲボラが「コレは!?」っと驚いている。エリシャや従業員は「うぉ、コレはすごい」っと勢いよく食べている。


「クエスト様、まだおかわりしていい?」

「ちょっとまってね、コレ以外の食べ方をするから。

 リズ、これくらいの量の御飯を小皿に人数分盛ってくれる」


 俺は、水の入ったボウルと塩を用意した。ゲボラ達が何をするんだろう?と俺の行動を見つめる。俺は、小皿に御飯をよそい、手を水で濡らしたあとに塩を手につけ、小皿から御飯を手に取り、三角に握る。残念ながら海苔がないので、このままで食べてもらうことになるのだがそれは仕方ない。握り終わったおにぎりは小皿の上においていく。これを人数分繰り返す。


「これはおにぎりって言って、御飯を携帯食にする場合に考えられた物。シンプルに塩味にしたけど、中に具を入れることでバリエーションを増やすことができるよ」

「ほほう、つまりはいろいろ作れるってことですか」

「うん、本当はもうひとつ必須な物があるんだけど、それはこの辺じゃ見かけたことないから今回はシンプルに御飯と塩だけで、食べてみて」


 久しぶりにおにぎりを食べる。塩むすびはシンプルだけどやっぱりうまい。本音を言えば梅干しのおむすびが食べたい。しかし梅が見つからない。鰹節はあるのだから、おかかのおにぎりは作れるのか。


「今日は作らないけど、鰹節に醤油をかけて具にすると合うらしいよ。もしくはそれを御飯に混ぜ込んでもいいらしいよ」


 あくまでらしいといったのは米を見つけたばかりなのにそこまで断言してしまってはおかしいかなっと思ったからだった。


「このおにぎりってヤツは冒険者に人気がでそうですな。片手で食べれるのがいいし、先ほどクエスト様が言った通り、中の具にバリエーションをもたせれば飽きもこないでしょうから」

「あとは、おにぎりを固めに握って醤油を刷毛で塗りながら焼く『焼きおにぎり』ってのもある。今回は作らないけどね」

「クエスト様、そんなこといわないで作ってよ」

「ゲボラが試したりすればいいと思うんだけど?」

「あ、なるほど、そうすればいいのか」


 ゲボラはいろいろ考えているようだ。そんな感じで試食会をしているともういい時間になった。


「それじゃゲボラ、とりあえず買った分の半分を置いていくから、いろいろ試してみて良さそうだったらメニューに加えてみて。ボクの方でもいろいろレシピを調べてみるから。御飯の残りはみんなで食べてね」


 俺は次元倉庫から4袋の米を出してゲボラに渡すと、リズと一緒に急いで屋敷に戻る。次はブラドや屋敷の料理人に炊き方を教えないといけないからだ。夕飯に米を食べたいんだよ、今食べたけど。そう思うと今日の夕飯は楽しみだなっと思ってしまった。



お読みいただきありがとうございます。


思ったほどシフトによっては執筆時間が取れないなと思いました。

なんとか頑張って時間を取りたいと思っていますが、毎日更新できずすみません。


最近、土鍋で御飯炊いてないなぁと思いながら書いてました。

ちなみに一番好きなおにぎりは、鰹節を醤油で味付けした物を御飯に混ぜて、具に梅干しが好きです。

梅干しも実家で母親と一緒に漬けたりしてて、自家製ですっぱくてうまいです。

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