血糖値の低下は頭脳派の命取り
ただ、それだけに「他」との差が歴然であることも実情。
「伊野ってあいつの頭どうなってんの」
「カオスじゃね」
「俺たち凡人にはわかり得ない脳みそしてんよ」
「なんであいつここにいるわけ」
「ちょっと場違いじゃん」
「お前らがな」
図書室の大机、そのど真ん中にて立て膝ついてくっちゃべる男子生徒二人。
その背後に立った渥美は、国語辞典を思い切り二人の間に叩きつけると
歌舞伎役者ばりの「睨み」をその二人に利かせてやった。
「…は、はぁ?」
「…なんで渥美が出てくんの」
冷や汗垂らしながら見上げる男子生徒、その二人の顔に見覚えはありまくりだ。
今朝。模擬試験結果でAだBだと騒いでいた二人組。
「…頼むから静かにしてくんねえかな
あいにく俺はお前らみたいに出来がよくないから勉強が必須でな
教室じゃうるせえからと避難した先でもとなるとさすがにキレそうなんだわ」
堪忍袋。
やっとこさ貼り付けたギリギリの笑顔はよもや鬼の形相だろう。それでも何が気に食わないのか。皮肉な表情を浮かべて、男子生徒の一人は屈しなかった。
「渥美お前も不憫だね。あいつのそばにいたら、お前、ただの引き立て役だろ」
「…」
それは、一瞬。
ふっ、と意識が遠のいた。
と同時に、はたと気がつく。
伸ばした手。自分が動かしたのだ。その言葉を発した男子生徒の胸ぐらに伸びていた、自らの腕を。
静止するべくして、横から華奢な細身の手が絡みついていた。
「血糖値がまずい」
伊野である。
渥美の腕を掴んだその手が、小刻みに震えている。恐怖ではない。つーかいつからいたんだかその無表情には、怒気すら感じられず。
「え、血糖値?」
「渥美大判焼きおごって」
「あ?」
「あとフォーティーワンのアイスとクレープとワッフルとケーキ」
「ぁあ!?」
は、や、く。でないと血糖値が。
そこまで言って、渥美の間一髪を押し留めた伊野は目を回してグッタリと図書室のど真ん中に昇天した。




