日和見教育、その理由
「いつも。ユースケが無いとき、渥美はしぶらない。
正直ユースケに、甘い」
舌っ足らずな面あって文章に欠陥が生じているが、言いたいことは、大まかに、わかる。
要するにニコルの言う伊野の“無いとき”というのは、食料や金品に関する点全てなのだろう。
それにしても、こいつ。
伊野の傍にいてへばりついてるから、油断していた。いや、というよりはてっきり、あんなユースケユースケ言ってるから、そこらへんはうやむやになってると思ってた。
意外に…
(見てるもん、だな)
「何で…か」
渥美は、呟き、ニコルに向き直ると、ソファに腰かけた。
「いいだろう。寝る前に、昔話をしてやる」
「…」
「人間失格より、最低最悪な男の話をな」
言うと、渥美は不敵に笑ってみせた。
弁護士とハーフ&ハーフ/終 & Next
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『それ、やったの、俺です』
記憶は、鮮明ではない。
だが、思い出そうとすれば、というか、思い出そうとしなくとも、あの時、あの瞬間。
あまりにも場違いな台詞を吐いたあいつの口調や、相変わらずの覇気の無さは今でもはっきりと覚えている。
記憶は、香りでリンクするとかいう。
だが俺の場合、いつも記憶を思い返すきっかけとなるのは、真夏に蝉が大合唱する、あの蒸し暑い瞬間だ
たまには昔の話をしようか
「学生篇」・序




