病院の禁煙制度もいつかは改正してくれると喫煙者は願ってる
《もしもし俺ですけども》
その声を聞いて、渥美は自室の時計を見た。
時刻は夜の0:30を指しており、すなわちとっくに消灯時間は過ぎているはずだ。
「何やってんだ、てめえは」
《ヤニが足りなくて…寝れんのよ
渥美にタバコ受けとるの忘れてたなって》
それ、今俺も思っていた。悲しきかな。
机上に置いた煙草の箱を取ると、ライターを持ったままのニコルが目を丸くしてこっちをガン見してくる。
《我慢しろ。つーかどっちみち病院じゃ吸えねーだろうが。喫煙所なんてあったか?》
「や、一人部屋だし。窓開けて吸えば、バレないかなーとか」
どうやら渥美の権力と金銭圧力によって得た個室を、人間失格はそれなりに満喫してくれているらしい。
とは言え、一人部屋とか関係なく病院内での携帯電話の使用も、本来なら厳禁のハズだが。とか渥美は脳裏で考える。
期待に沿って伊野はと言えば、自室の窓から身を乗り出して、夜空を見上げていた。
《堪えろよ3日くらい。この際禁煙したらどうだ、》
「無理無理。わかってんでしょーそんなの」
若干の沈黙あって、渥美は、ゆるりと口を開く。
煙草の箱を目下に、なんか言葉を選んでる自分に…
サブイボ。
「カレカノの会話じゃねんだよ」
《………はい?》
なにこの感じ。首を傾げる伊野、
不快感炸裂の渥美。その長身の脇腹に、何かがしがみついてきて、慣れない感覚にびくりと反応する。
「っぁあ!?」
《どったん。あ。ニコル?》
「なんで?」
ニコルは、ライターを持ったまま渥美にしがみつき、見上げていた。




