意外な救世主
「まぁそれにしても曰比谷くんがいたから助かった」
「ホントっすよぉー。俺が偶然にもあの場に通りかかったから良かったものの、そうでなければどうなってたか」
『…ユースケ?』
意気消沈して眠りについてしまった伊野を前に、ニコルはだらだらと冷や汗を垂らす。
丘の上。人気皆無。ガス欠。休憩。
ガス欠…
、 、 、 、
人 気 皆 無
『…っ、~!』
グイグイと伊野を起こそうと揺り動かせど全く起きる気配なし。オマケに取り出した携帯は圏外を指しており、
遠くで太陽は完全に伊野と同じモードに入りかけている。
まずい。これは完全に。誰か人は。誰か、誰を…
『あ。失踪少女発見』
そこに通りかかった、一台の車。
真新しいシルバーのボディの、助手席側に乗り出して小窓から顔を覗かせる青二才。
ブス専のあいつ。
『~ったく何してんだこのアバズレさっさと…あり、ユウスケ先輩?』
『―――ッ!』←思わず抱きつく
『ぎゃぁあああ触んな寄んな!近寄んな不細工!!』…
「山奥で抱きつかれた時は、もうヤマンバに食われるのかと」
スパンと渥美のツッコミ(病院のスリッパver.)が綺麗に曰比谷の横顔にヒットする。
「にしてもなんで曰比谷くんはあんな丘の上に?仕事だっつったじゃん」
「いやぁ。それが仕事が早く片付いたんで、俺もユウスケ先輩の手伝いしようと目星付けて市内回ってたんすな
すると山添の道路脇にこれが」
そう言って、曰比谷がポケットから出したものに二人して目を丸くした。




