動物園のパンダ事情
「ピザ宅配にビル清掃員とか色々あんのね」
駅前のコンビニに来たご一行。
平日の昼間っからコンビニで立ち読みする身形のだらしない男に人は見向きもしないが
それが連れている金髪の少女はさすがにスルー出来ないらしい
矢鱈と視線を感じた伊野は適当に冊子に目を通したのち、スウェットのポケットに入っていた623円で朝御飯たるサンドイッチと菓子パンと牛乳を購入し、コンビニを出た。
「君といると目立って仕方がない」
通行人の5人に1人はすれ違い様に目があって、その都度人間失格は自身の大きくない目を瞬かせていたが
もういい加減厄介である。
「学校でもこんなだったとか?
動物園のパンダみたいな」
「!」
それまで不思議そうではありながら黙って腕にしがみついていたニコルが突如、立ち止まって腕を離した。
「…」
「何?」
ニコル、やや付せ気味な顔でゆるゆると自身の髪をいじる。
これは地雷を踏んだのかと、伊野は人間ながらに人間らしい推測をした。
「…サンドイッチとあんパンどっちがいい」
そのため、話題を脱線させる。
「…」
ニコルは、黙ってサンドイッチを指差した。
伊野は、それをニコルに投げ渡してやる。
「近くに公園広場がある。
昼間はそう人が多くないからここほど人目にはつかないかもしれない」
行く?首を傾げると、ニコルはゆっくり顔を上げて、伊野に飛び付いてきた。
一々腕にまとわりついたり胸に抱き着いたりしなきゃ次の動作に移れないのか、と心中で思う。