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贄の花嫁  作者: 彩世 幻夜
狂想曲
91/111

緊急会議

 ――茶会のあった、その翌日。公邸では、緊急議会が召集された。


 公爵本人も、昨日の茶会でのやりとりに思うところは当然あったのだろうが、その様を覗いていた者や、彼らから話を聞いた“お偉方”が、抱いた懸念を伝えるべく、公爵の執務室の扉がひっきりなしに叩いた事で、急遽話し合いの場を設けることになった。


 政治に直接関わる者。

 国内の主だった貴族家の当主達。

 そして公爵本人。


 だが、今この場に今回の会議の議題となるべき公孫子らの姿はない。


 「殿下方はまだ、成人を迎えられて日も浅いが、それぞれ既に職に就き、特にジルベルト殿下は軍の要職にて職務を全うしておられる」


 茶会に参加し、軍務を休んだ昨日の分を取り戻すべく、今頃ジルベルトは部下と共に訓練に励んでいる真っ最中だろう。


 「正式な公務の場に出られることはまだ少なく、民が知るのは噂話の中の彼らであろうが、直に接する機会も多い我らは、相応にそのお人柄など知る機会もある」


 政治に関わる者の多くは文官で、軍部の者と接する機会は多くないが、今日の会議には軍属のお偉方も喚ばれている。


 「この度は、我が国の将来を――目先のものと、遥か先のものと、それぞれ考える必要があっての場である。……我が国の、命運を賭けた話であり、そこに不利に働く私情を交えるのは御法度ゆえ、この場に殿下方をお呼び申し上げるのはあえて避けた」


 ――集まった者たちの前で、声を上げるのは、公爵の右腕である宰相だ。

 現公爵が侯爵になる以前より親しく付き合い、侯爵位を継いだ時も、皇帝のお膝元で共闘した間柄とあり、公爵の信頼は厚く、その辣腕ぶりからこの国の重役からも一目置かれる存在である。


 「この場は、殿下方の希望をお伺いする場ではない。殿下方にも考えはあろうが、彼らは公人である。彼らの意志より、国の意思が優先されるべきなのは言うまでもない」


 叔父、弟、次男。

 生を受けた頃には既に伯爵として島にあり、一度も会ったことのない叔父はまだしも、共に育った弟を既に亡くし、そして己の血を引く実子も、今まさに逝こうとしている。

 当然、いずれはそうなると知り、覚悟はあった。――というより、そういう教育を施されてきた。

 だから、公人としてここに在る今、彼は国の長としての威厳に満ちた冷静さを保ち、彼らの前に座っている。


 ……だが。

 吸血鬼は魔物だが、心はある。

 ましてや、この国の吸血鬼たちは人間と共存しているのだ。

 その心は、人とそう違うものではない。


 当然、それを理解した上で、それでも宰相は言った。


 「この国の益のため国の意思を定める、そのための場。――殿下方のご意思は、今、ここに必要なく、故に彼らについて客観的な情報を持つであろう者たちを代わりに呼んである」


 彼は、一際大きく、はっきりとした声で、告げる。


 「――さあ、会議を始めよう」

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