再びの空で
ミリアを抱え、軽く窓の外へと飛び出したジルベルトの身体を、勢いをいなすように翼を羽ばたかせたディーノが受け止め、そのまま空へと舞い上がる。
前回乗せてもらった時以上にがっちり抱えられたまま、強い風に暴れさせられた髪が、彼の肌に触れる。
だけど……
見下ろす景色は、以前の記憶よりずっと近い。
髪を乱す風も、前と比べれば随分と当たりが弱い。
ジルベルトが庇ってくれているのもあるのだろうが……
「……お前、こんな事も出来たんだな」
彼の小さな呟きに、どうやらこれは主にディーノの功績であるらしいと知る。
普通は決してしない飛び方をしてくれているようで。
「俺たちの誰も、こんな事はまず求めないからな……」
個体数も少なく、“乗って操る”以前に彼らと絆を結ぶ事がまず難しい竜を、遊ばせようと考える者は居ないから。
「こうだと決めつけて、見落としていることは他にも色々あるんだろうな」
例え速度を抑えても、その速度は馬車よりはるかに速く、しかも地上と違って最短直線距離で向かえる。
馬車とて、結局は揺れるし、負担はかかる。
それでもジルベルトは馬車の方がより負担が少ないと判断したのだが。
「……今回の件も、きっとそういう事なんだろう」
花嫁候補は、多くの者にとって、自分の生活を守るための人身御供で、彼女たちを害すれば、結局は自分たちの方がもっと酷い被害を被るものというのが常識なのだ。
「だから、どこかで大丈夫と驕る気持ちがあったんだ」
ジルベルトは、自嘲の笑みを浮かべ、吐き捨てるように言った。
「――済まなかった」
苦しげに、謝罪の言葉を口にする。
「……それは! 私が、考えなしに一人で動いたせいで――」
「いや。お前に歳の近い義姉がいて、実家との関係も良いものでないのは、既に聞いて知っていたはずなのに。実際、先日の夜会でその事実を俺はこの目で見ていた」
なのに――
「きちんと調べて対策を打っておけば充分防げたはずの事態を、それを怠り、結果起きたことは、間違いなく俺の責任だ」
同じ事を、もしも部下がやらかしたなら、ジルベルトは、軍規に則り、罰則を課しているところだ。
「ついこの間も、同じ反省をしたばかりで二度目をやらかしたなら、キツく灸を据えてやる」
彼は、軍の上官としての表情を張り付け、冷徹に言った。
「謹慎、減棒、懲罰用追加訓練メニューくらいは当然として……」
少しだけ、ミリアを抱える腕に力がこもり――
「使い魔を従える者は、主として己の使い魔を罰する事ができる」
低く囁いた。
「俺はまだ、お前の使い魔ではないが、いずれそうなる身だ」
だから――
「何でもいい。償いを、させてくれ」




