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贄の花嫁  作者: 彩世 幻夜
序章
2/111

ロマーノ公国

 この世界には、二つの大陸が存在する。


 一つは、ルナフィリア大陸。

 一つは、オーク大陸。


 二つの大陸が内海を挟んで睨み合うように存在し、それを外海が覆う。

 ――もしかしたら、その外海の先には、もっと別の陸地があるかもしれない。けれど、現代いまの拙い航海技術ではそれを確かめる術は無く、故に、人々の世界はこの二つの大陸で成り立っていた。

 そしてその世界には、人間と獣、魔物が存在し、前者たるルナフィリア大陸は比較的低位の魔物と獣、人間が住まい、後者たるオーク大陸には高位の魔物を筆頭に多くの魔物や凶悪な獣が棲まう。

 ルナフィリア大陸には、大小強弱も政治体制も様々な国がひしめき合っている。


 その中の一つ、ルナフィリア大陸の中でも特にオーク大陸の方へ突き出すように出っ張った大きな半島――リア半島を丸々支配下に置くのが、オルランディ大帝国だ。

 『聖なる星の乙女』と呼ばれる聖女が祈りを捧げることで神より賜る恩恵。

 オーク大陸に棲まうものに比べれば凶暴性は劣るものの、少なからぬ魔物が跋扈する大陸で、それを制する術を分け与えてくれる聖星セント・スター教の教会本部をようする皇国の皇帝が、国教を同じくする周辺諸国をまとめている。


 その、リア半島の先端。ただでさえ出っ張った半島から更に飛び抜けて突き出し、ルナフィリア大陸のどこよりもオーク大陸と近しい場所にある国。

 

 その国の名は、ロマーノ公国。

 代々、オルランディ皇帝より爵位を与えられたロマーノ公爵が治める、オルランディ大帝国傘下の公国である。


 半島の最先端であるこの国の国境の三方は海に囲まれ、残る半島と繋がる国境は山脈が連なっている。

 そう高くも険しい山でもなく、冬でも山が雪化粧する日はそう多くはない――が、やはり荷物を持って越えてくるのは楽な事ではない。

 少なくとも、馬車が通れるような街道は無く、一度に多くの荷を運ぶのは無理だ。

 荷を運ぶ動物は居るが、やはり積載量は限られてくる。

 地質としてはあまり農業には向かず、公国の民が自分たちで慎ましく食する分を確保するのでぎりぎり。

 海は豊かで海産物は豊富にれるが、すぐ対岸は魔物の国だ。あまり遠洋まで漁に出るのはかなりの危険が伴う。

 だが、そういう土地柄故に、公国は帝国内でも最強と呼び名の高い騎士団を、帝国公認で組織している。



 ――けれど。

 この、ロマーノ公国最大の特徴は、それらのどれでもない。


 この国最大の特徴は……。


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