ロマーノ公国
この世界には、二つの大陸が存在する。
一つは、ルナフィリア大陸。
一つは、オーク大陸。
二つの大陸が内海を挟んで睨み合うように存在し、それを外海が覆う。
――もしかしたら、その外海の先には、もっと別の陸地があるかもしれない。けれど、現代の拙い航海技術ではそれを確かめる術は無く、故に、人々の世界はこの二つの大陸で成り立っていた。
そしてその世界には、人間と獣、魔物が存在し、前者たるルナフィリア大陸は比較的低位の魔物と獣、人間が住まい、後者たるオーク大陸には高位の魔物を筆頭に多くの魔物や凶悪な獣が棲まう。
ルナフィリア大陸には、大小強弱も政治体制も様々な国がひしめき合っている。
その中の一つ、ルナフィリア大陸の中でも特にオーク大陸の方へ突き出すように出っ張った大きな半島――リア半島を丸々支配下に置くのが、オルランディ大帝国だ。
『聖なる星の乙女』と呼ばれる聖女が祈りを捧げることで神より賜る恩恵。
オーク大陸に棲まうものに比べれば凶暴性は劣るものの、少なからぬ魔物が跋扈する大陸で、それを制する術を分け与えてくれる聖星教の教会本部を擁する皇国の皇帝が、国教を同じくする周辺諸国を纏めている。
その、リア半島の先端。ただでさえ出っ張った半島から更に飛び抜けて突き出し、ルナフィリア大陸のどこよりもオーク大陸と近しい場所にある国。
その国の名は、ロマーノ公国。
代々、オルランディ皇帝より爵位を与えられたロマーノ公爵が治める、オルランディ大帝国傘下の公国である。
半島の最先端であるこの国の国境の三方は海に囲まれ、残る半島と繋がる国境は山脈が連なっている。
そう高くも険しい山でもなく、冬でも山が雪化粧する日はそう多くはない――が、やはり荷物を持って越えてくるのは楽な事ではない。
少なくとも、馬車が通れるような街道は無く、一度に多くの荷を運ぶのは無理だ。
荷を運ぶ動物は居るが、やはり積載量は限られてくる。
地質としてはあまり農業には向かず、公国の民が自分たちで慎ましく食する分を確保するのでぎりぎり。
海は豊かで海産物は豊富に漁れるが、すぐ対岸は魔物の国だ。あまり遠洋まで漁に出るのはかなりの危険が伴う。
だが、そういう土地柄故に、公国は帝国内でも最強と呼び名の高い騎士団を、帝国公認で組織している。
――けれど。
この、ロマーノ公国最大の特徴は、それらのどれでもない。
この国最大の特徴は……。




