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涼風からの贈り物

カモメ高校の女生徒に伝わる


涼風のささやきなる伝説にまつわる物語が

ヒロイン平山瑠璃の視点から語られていきます。


忘れてしまっていたトキメキを記憶の隅から呼び起こす純愛物語をお楽しみ下さい。

それは…

カモメ高校の校門の側から駅前まで続く商店街の中にある。

看板には…


平野貸本店と書いてある


今時…貸本屋等

経営自体成り立たない。


中を覗いて見ると…

やはり…

文具がかなりを占めている。


文具を扱っているので

近くのカモメ高校の生徒の姿も見える…


放課後の客足が途絶えた。その時に

一人のカモメ高校の女性徒が尋ねてきた。


『あの~、涼風のささやきを。

貸し出して欲しいんですけど…』



店主は微笑み…


『先程帰って来たばかりだよ…


君も…あの伝説を

聞いたのかい?』


『はい…

涼風のささやきを

一言一句間違い無く書き写せば…


恋が実るって聞きました』


『私は確かめてみた事は無いがね。


ただし…

お礼の手紙は沢山届くよ…


でも…書き写すだけじゃなく。


色んな手順を踏まなければいけないよ。』


『私…入学以来…

ずっと好きだったひとがいるんです。

どうしても、

その…涼風のささやき

の伝説をためしたいんです。』







その涼風のささやきの伝説とは?…



カモメ高校の女性徒に伝わる伝説で…

その文章を一言一句間違えずに

書き写し

その…元の本を大切に保管し…


書き写した方を

平野貸本店に返す。

そして…

相手に告白すれば…告白は受け入れられ…

恋は実る…


こんな、伝説だ…



店主は語る。


『まだ…それだけじゃ無いんだよ…

ほら…学校のうらてにある。


涼風の祠に一週間。それを奉納しなければいけない。


これが…最大の難関だよ。

何せ、誰にも見られてはいけない。


だから…


夜の遅くにみんな行くみたいだけど…


競争率の多い相手だと、必ず邪魔が入る。


涼風のささやきは

一冊だけしか

ここには無いからね、

直ぐにあの伝説を試していると噂が広まる。


だけどね…


これ程のお礼の手紙が、届いてる。

試してみるかい?



『はい!』と

その女性徒は元気に返事をした後に尋ねた。


『貸し出し料はいくらですか?』


『貸し出し料は要らないよ…

本とは呼べない代物だからね…


ただ…それを写す

原稿用紙位はうちで買ってくれるかい?』


女性徒は頷き、

原稿用紙を買い求め

涼風のささやきを大事そうに持ち帰った。






その女性徒が出ていって暫くして

一人の女性徒が

入って来た…


『涼風のささやきはありますか?』


『残念だね…たった今貸し出した所だよ。 一週間は帰って来ない…



予約をするかい?』

『予約が出来るんですか?』


と驚く女性徒…


『出来るよ…うちは貸本屋だからね。

この予約リストに名前を書いて、

一週間後に、また、うちを訪ねて来なさい。』


と一冊の予約リストを差し出した。



女性徒は、ペンを取り



“平山瑠璃”と書き込んだ…




その時、平野貸本店の前では

一人の女性徒が手持ちぶさたの様子で

ぶらぶらしていた。


平野貸本店の横開きのサッシを開け…

瑠璃は出てきた。


『待ったぁ!』


『もう…瑠璃!

なにをしてたの?』

『うん…あのね…

シャーペンの芯が

少なかったのと、

可愛い便箋が無いかなぁ…なんて思って』


『ふぅ~ん…

あんた。この間。

ハローキティのペンシルと芯を買ったばかりじゃない?…


さては…


涼風のささやきを借りに行ったとか?』


“ドキッ!!”


『ち…違うわよ。…理恵…ほら…

鞄の中には何も無いじゃない。!』


『ムキになるところが…


アヤシイ…


あんた…あの先輩に告白するつもり?…』


“スルドイ”…

いくら、親友の理恵にだって。

こればっかりは

話せない…


絶対に人に知られずに涼風の祠へ

奉納するのよ。



あの先輩に告白するまで…


誰にもしられては

ダメなの…

理恵ゴメンね…


と、心の中で手を合わせた。


『瑠璃。あんたも物好きね?


あんたの好きな先輩って野球部の中で

確かに目立ってたけど、


女の子の人気はサッパリじゃない。?』

『良いの!

私が憧れてるのは、たとえ、9回の裏

ノーアウト満塁でさえ…

慌てずに、みんなに指示を出してグイグイ引っ張っていくところ。


それと、今年の文化祭。先輩が占いの模擬店を開いたでしょ?

その時、あの気持ち悪い出川が、毎晩、私の家の前で

呪いの様な歌を歌うのを相談したの…



そしたら…



何とかしなきゃ

って言ってくれて、それから…

出川は来なくなったの…


とても、頼りになるんだから!』



『ハイハイ…

恋は盲目…

っていうからね…


ハイハイ。

ごちそうさま。』



と軽くいなした所で駅に着いた。


『瑠璃。じゃあまた明日ね。

こっそり応援してるよ。』


と…改札口の駅員に定期を見せて中へ入っていった。


『ありがと…

理恵…また明日ね。』と手を振り別れた。


一週間後…

瑠璃は


涼風のささやきの

貸し出しを受けた。



店主の言うことには『君の名前は書かなくても良いから、


書き写した日付は

最後の行に書き写して置くんだよ。


それと…裏表紙の短いメッセージもね。


君の思いを描いた一枚の

原稿用紙を最後に閉じて…


そうして、

涼風のささやきの伝説は受け継がれていく。』



涼風のささやきは、かなり分厚い…


これが、全てカモメ高校女子の恋の伝説にの歴史だと思うと。

瑠璃は改めて

緊張した。





瑠璃は母と二人暮らしのアパートへ帰った。

瑠璃には父親が居ない。


必然的にファザコン気味に育った。

近所の公園等で

父親に遊んで貰ったり肩車をされて居る子供達を見掛けるとチクリ…と心が痛くなる。


だからなのか?

瑠璃の異性の好みは必ずと言えるほど

頼りがいの有りそうな異性に惹かれる





瑠璃と母親の二人だけの生活。


居間とキッチンは一緒。

もう一部屋有るが

そこは寝室に使ってる。


とてもじゃ無いが

誰にも知られずに

涼風のささやきを書き写すなんて無理だ

それが、喩え母親で在っても、知られる訳には行かない…


『ごめんなさい…

お母さん…もう…

先輩に告白するって心に決めたの…』と小さく呟いた。


母が帰って来るまでには少々の時間がある…


涼風のささやきに

今の内に目を通しておこう…


と…

瑠璃は鞄から

涼風のささやきを取り出した。


今までに何人もの

女性徒が書き写し

その度に産まれ変わる

涼風のささやきは

少し光って見えた


表紙を開くと

一枚目には…


貴女の想いに応える為にも

この本を一言一句間違えずに…

最後には貴女の気持ちを一枚添えて下さい

この涼風は貴女の

机の中にしまって下さい。

書き写した涼風を

学校裏の涼風の祠に一週間奉納して下さい…


そうすると貴女の勇気を出した

告白は

報われる事でしょう。

と書いてあった。


告白は報いられる…胸の鼓動が体全体に響く


もしかして…


これが…


トキメキ?








その時…


『只今ぁ!

瑠璃…帰って来てるわね』

瑠璃は慌てて

涼風のささやきを

机の引き出しに仕舞った。



母親が思いの外早く帰って来たために、

その日…

涼風のささやきを

一行も書き写す事が出来ずに…

ジレンマばかりが襲って来て眠れない…



瑠璃は一睡も出来ないままに朝を迎え

そのまま登校した。


涼風のささやきを写し取るには


図書室の隅で

息を潜めなから

身を小さく縮込ませ…て


まるでくの一にでもなったかの様に

気配を消さなければ…


瑠璃は思う…


大親友の理恵に休み時間に誘われても

貴重な時間は…



無駄には出来ない…

理恵に心の中で

手を合わせ。




…ごめんね…

と呟き図書室へ向かう…



別に、図書室へ向かう時までコソコソしなくても構わないのだろうけど…



何か後ろめたく

どうしても、

うつむき加減で

廊下の隅をハムスターの如く移動して行く。



勿論…涼風のささやきを大切に


胸に抱いたまま…


図書室の扉を開けて図書師のお姉さんに挨拶を済ませると


入って右側の隅の

机のところの席に腰を降ろした…


カムフラージュする為にも何冊かの

本を手に取ってきた。


どうせ…只のカムフラージュとはいえ

あまりに不自然な本は手に出来ない。


ここは、女の子としては…

数冊の占いの本を手に取った。…


机に占いの本を広げいかにも、調べ物をしているかの様に

カムフラージュしながら


涼風のささやきを

書き写していると…後ろから…



『あれぇ…ゴッソリと占いの本が無い。』


ドキンッ!

カモメ先輩!


『おやっ…瑠璃ちゃん…何か調べ物?』

ヒャアッ!

もう少しで悲鳴をあげるところだった…

『ごめん…邪魔をしたかな?』


『ひぇんぱい…

じゃまじゃありまひぇん』


舌がもつれてる…

みるみる…

頭に血が上っていく。

頬が猛烈に熱い…

目の前がクラクラする。

追い討ちをかける様に


『あっ…瑠璃ちゃんその…星占いの本を見せてくれるかな?次の文化祭で占いの模擬店を出そうと思ってるんだ。』


瑠璃は星占いの本を手に取り

『ひぇんぱい、ろうろ』

さっきより酷くなってる。


顔すらあげられない

先輩が…瑠璃の手から星占いの本を手に取ると…








瑠璃の隣の椅子を引き…座った。


アワワワ…

とてもじゃ無いが、先輩に

告白するために

涼風のささやきを書き写しているというのに

よりによってその本人が…横に座るなんて…



静かに星占いの本を読む先輩

昼休み中

嬉しいのか?

恥ずかしいのか?

区別のつかない複雑な時間を過ごした。

結局…涼風のささやきは書き写す事が出来なかった…




次回のアップは未定です。

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