1.昼休み
いつも通りの昼休み。
「あーぁ・・・イケメンの大人な男性、いないものかねーっ」
私の親友は、溜め息混じりに言った。
「ちょっとどうしたの、いきなり・・・」
「いきなりじゃないって!『高校に入ったら彼氏つくる』とか宣言して、あたし等もう二年だよ?」
私、中原紗奈と親友である友永唯は今、高校二年生。案の定、周りはカップルだらけ。唯はモテるのだが、タイプの人がいないらしく彼氏がいないとのこと。
「ま、まぁ・・・。そういえば入学式の日に言ってたもんね、唯」
「紗奈はまだ諦めてないんだよね?凌君・・・だっけ?」
「うん、もう七年くらいずっと」
「七年も?ってことは・・・小学四年生?」
唯は指折り数え、その長さに驚いていた。
私は小学四年生の頃からずっと、今は全然会えない人を好きでいるのだ。名前は岡本凌。彼が遠くに行ったのは小学六年生の始め。外国に行ったことは確かだが、何処の国かまでははっきり覚えていない。
「でもさ、もう何年も前のことでしょ?居場所も分かんないのに会うなんて・・・」
「『絶対にまた会える』って凌君が言ってくれたこと、あたしまだ信じてるの」
彼はあの時、そう言っていた。会える、会いに来る、と。私は、その時に彼がくれたネックレスを今もずっと付けている。肌身離さないように。
§
突然、外が騒がしく感じてきた。校門のほうからだ。
「喧嘩・・・?」
「向こうからだよね」
教室から校門が見えるので、窓に近付く。生徒会長の姿があった。対話しているのは、金髪の少年・・・学生だろうか。いかにも不良らしい格好をしている。少し離れて人だかりがある。
殴り合いとまではいかないようだが、何か揉めている雰囲気である。
「あの人恐そう・・・」
「う、うん」
私も唯も、身を引いた。
がその時、不良らしき彼と一瞬目が合った気がした。けれど、不思議と恐怖は感じなかった。