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眠れる龍姫は、愛を知らない  作者: 冴切リタ


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第一章:眠れる龍姫、学園に行く(2)

 「もう!待ちくたびれちゃったじゃない。王女である私との約束をほっぽり出して楽しくお話しなんて———とっても、楽しそうじゃない。私も混ぜて欲しかったわ」


 頬を膨らませながら綺麗な姿勢で口を拭っているニアが座っていた。

 え?約束した覚えはないんだけど。

 

 「げっ。なんであんたがここにいんのよ」


 隣にいたリルカは先ほどの顔とは違い、とても引き攣ったような顔をしていた。

 それ!私もそれが気になってたの。


 「あら、もしかして私。歓迎されてない感じかしら。でもね、そう。これはサプライズよ!あなたたち今は寝起きって感じがするから・・・朝からこんなに可愛い女の子を見れてあなたたちはとっても幸せね。きっと素敵な1日になるわ」

 「あれ?私。ニアちゃんと約束してたっけ?」

 

 ニアはうーんと考える素ぶりをすると可愛らしい笑みを浮かべた。


 「前日から約束をしてたわけじゃないわよ。でも、ほら見てちょうだい」

 

 差し出された四角い板状のものを取り出して私に見せてきた。

 何これ、この板めっちゃ光ってるんだけど。

 

 「って、それってもしかして開発途中と言われてる。スマホでしょ?完成してたんだ」

 「ふふ、やっぱり。こう言うことには詳しいわね。リルカ先輩っ。このアーテナー学園トップレベルの技術者に褒められるなんて光栄だわ。でもね、見て欲しいところはそこじゃなくて、ここよ、ここ」


 ニアが指をさしたところを覗き込んでみるとそこには『こんにちは、ミラ。昨日は大変だったわね。それでお詫びとはなんだけど、この美貌、知性、完璧美少女である私がアーテナー学園を案内してあげるわ。それじゃあ、お昼に迎えに行くわね』と書いてあった。

 なんで文字を打っただけで私と約束をしたことになるんだろう?

 何かそういう、書いたことが現実になる魔道具だったりするのかな。


 「なんでそれが私と約束をしたことになるんだ?」

 「ふふ、ミラ。いいところに気づいたわね。この端末は魔法技術と科学、そして異世界から来た人たちの技術で作られているのよ。まだ、研究段階だけれど一番と言っていい目玉機能がこのメッセージ機能なのよ」

 「メッセージ?何それ」

 「やっぱり、ミラは目の付け所がいいわね。苦労してあなたを探した甲斐があったわ。それで話を戻すわね。メッセージとは端的に言うと遠くの人と連絡が取れる機能なの。異世界の人がいう電波?って言うのがよくわからなくて苦労したみたいだけど、私たちなりに事前に繋いだ魔力のパスを構築しておくことでいつでもどこでも好きな時に連絡が取れると言うものなの」

 「やっぱり、スマホは面白いね。ねぇ、ニアやっぱりそのスマホ研究に協力してあげてもいいよ。あとでどこの研究棟か教えてね。その前にごはん〜、ごは・・・ん?」

 

 ウキウキでリルカは食卓に近づくと突然、石のように固まった。

 ツンツンつついてみるが本物の石のように動かない。

 

 「ってぇぇええええ!私のごはんどこいっちゃったのよ!ミラここにごはんを用意してたはずだよね?」

 「え、そのはずだけど・・・」

 

 机の上をみるとそこには綺麗にピカピカと輝く私とリルカの食器が置いてあった。

 私とリルカはゆっくりと食卓の椅子に腰掛けるニアに視線を向けると、何かを察したのか私たちの動きに合わせて視線を逸らしていく。

 食べちゃったんですね。

 ニア様は私たちのご飯食べちゃったんですね。


 「えっとね、言い訳をしてもいいかしら。私が王族なのは周知の事実だと思うだけど・・・。正直に言うわね、あったかいごはんに興味があったの。いつも毒見済みの冷めたご飯しか食べてなかったから気になっちゃった。ごめんなさいね。その代わりなんだけど・・・王族お達しのレストランのチケットをあげるから許してちょうだい?」


 ニアがそう言いながら申し訳なさそうに2枚の高級レストランのチケットを差し出してくる。

 リルカは目を輝かせながら強奪に近いような感じで引ったくるとそのままポケットに入れてしまった。

 あれ?私のチケットは?


 「しょうがないから、今回だけ許してあげるっ!早くそのチケットちょうだい。最近はミラが来てから美味しいご飯を食べられてるけど、昔はあんまり食べられてなかったから今のうちに美味しいご飯を食べておかないと」

 

 起きてからと言うもの早1時間が経過していた。

 そして今、私は何をしているかというと、何もしていなかった。

 朝起きて、リルカに殺されかけて、下の階に降りるとニアが不機嫌で待っていたり、勝手に約束を交わされていたりと色々あったけど。

 今は大人しくリビングにあるソファーに腰をかけてニアの侍女が入れてくれた紅茶を飲んでいた。

 約束はどうしたのかと思われるかもしれないけど・・・その当の本人であるニアはリルカとのスマホ談義に夢中になっているようで私は放置されていた。

 いや、寂しいとかじゃないよ?

 でも、私に用があってきたのに放置するのは違くない!?

 だけど私は前向きに生きてるんだ。

 カップをソファーの前にある机に音を立てずに置くとそのままソファーの手置きに頭を置いてそのままゆっくりと目を瞑った。


 目が覚めたのは少し時間がたった後だった。

 ゆっくりと目を開けるとそこは見知らぬ教室だった。


 「・・・は?」


 状況と場所が理解できずに混乱していると私は一つある違和感に気づいた。

 枕が柔らかすぎる。

 これは普通の枕とは違う、だが、机や椅子といった無機質で固いものでもない。

 柔らかくて心地の良い暖かさを持っているもの。

 頭が綺麗にフィットして心地がいいもの。

 そして何より、きっと男が彼女にして欲しいことランキング上位に入っているもの。

 

 「どうだったかしら?よく眠れた?こんなことしてくれる王族なんてきっと私だけよ。眠り龍さん」


 そう膝枕である。


 「悪くなかった。むしろもっとここで寝てたいかも。おやすみ」

 「あらあら、でも起きないとダメよ?私の膝が気持ちよくて心地よくてスベスベなのは私が一番よくわかってる。でもこれからあなたにこれから紹介したい人たちがいるの。待たせすぎちゃったら申し訳ないでしょ?さぁあなたの物語に登場人物を増やしましょう?きっといい仲間になるわ」


 私はゆっくりと半身を起こして椅子に座り直した。

 寝心地はめっちゃよかったんだけど・・・寝る体勢が良くなかったのかな。首と体が痛いんだけど。

 ん〜!

 少し伸びただけで身体中がバキバキという音を立てていた。

 ニアの紹介したいって人たちなんだろう?でも、ニアが紹介するってことは多分、普通の人たちじゃないよね。言っちゃ悪いけどニアを見てたらね。でも、アイビィーはニアの知り合いぽかったし、可愛い女の子だらけだったらどうしよう。テンション上がっちゃうな。

 「あぁ、なら。今回はニアの言うことに従おう。気持ちよかった・・・が、少し枕が高すぎて首が痛いな」

 「あら、私の太ももがムチムチだって言いたいの?もう、怒っちゃうわよ。でも、私はミラに悪気がないことを知ってるわ。でも、他の女の子にそんなこと言っちゃダメよ?特にこれから会う子たちは———」


 ニアはそっと立ち上がると後ろに手を回しながらくるっと回りながら微笑んだ。


 「ミラと同じでとっても変わっていて面白い子たち。そして何より、私が探し、集めた英雄候補。でも、気難しい子もいるからこれからはちゃんと言葉も選ばなきゃいけないわ。さぁ、行きましょう?学園の案内はまだ始まったばかりよ」


 そっと手を差し出してきた手を取ると私は立ち上がった。


 「学園はとっても広いの。あの子達が待ってる部屋まで少し距離があるから、学園に通う上で必要な場所を見ながらいきましょう」

 「エスコートは頼んだよ。ニア」

 「ふふ、おかしいわね。背格好や姿から見ると明らかに私がエスコートされる側なのに。任せてちょうだい。私もね、普段エスコートされる側だからしてみたかったの。これで二人とも新しいことへの挑戦。ってことになるかしらね」


 ゆっくりと学園を歩いていった。

 たくさんの教室や実験室。

 

 「ここはこれから貴方が学ぶ教室よ。先生はう〜んと。うん。少し癖がある先生なのだけど・・・とってもいい先生よ」

 「その含みは何?」

 「ふふ、会ってみればわかるわ。きっとミラは気にいると思うわよ?」


 図書室には教育系の本から魔法書、世界各国について書かれた書物まで、たくさんの本が置かれていた。

 なんだろう、あれ?

 魔力を目に集中させて倍率を上げるとどこか見覚えのあるというか隣にいる人、ニアをデフォルメしたかのようなイラストがある一帯のコーナーを指差していた。

 そこには『神出鬼没、ニア王女のおすすめコーナー』と書かれていた。

 神出鬼没ってどういう意味かな。突然現れるわけでも消えるわけでもなさそうなのに。

 

 「あら、まだ残っていたのね。ミラあれは私がこの大きな図書室から見つけ出したおすすめの物語があるコーナーよ。実は私が勝手に設置しているから司書に見つかったら撤去されちゃうから場所を覚えるか、見つけたらすぐに向かうことをお勧めするわ。ちなみに今回のおすすめしているのは世界を分つ結界ディバイドを破壊し世界を繋げた勇者のお話よ」

 「ちゃんと面白そうだね。今度読んでみる」

 「ええ、読んだら感想を聞かせてちょうだい。あら」


 ニアが少し驚いた顔をすると私の手をつかむとそのまま走り出した。

 状況が理解できずにいると後ろから「ジニアール!今度こそ逃さないよ。私のエデンをどれだけ荒らせば気が済むわけ?」

 後ろからものすごい形相で追いかけてきていた。

 絶対、おすすめの物語コーナーよりやばいやらかしをこの図書室でやらかしてるよね!?それだけであんな形相で追いかけられることはないでしょ。

 大丈夫かな?ニアと一緒にいるところみられちゃったけどこれから図書室使えるのかな。

 読んでみたい本あったのに・・・。

 ニアと廊下を走って、角を曲がってまた曲がるそしてニアは目的の場所に着いたのか保健室と書かれている教室のドアを開いて入り込んだ。

 中に入ると驚いたような白衣に身を包んだ細めの男性が苦笑いをしながら問いかけた


 「どうしたんだい?ジニアール王女殿下。もしかして・・・またかい?」

 「ええ、その通りよ。あ、紹介しておくわね。この子はアルテミラよ。ぜひミラって呼んであげて。じゃあいつも通り頼んだわよ。助手くん」

 

 普通、私が愛称を呼んでいいって許可を出すんじゃないの?

 

 「はぁ、君も私を助手と呼ぶんだね。ほら、そこの病床に入っているといい。あとは私がなんとかしておこう」


 ニアが急いで細めの男性。助手?の指示された場所に入るとそこには大きなベッドが一つだけ置いてあった。

 掛かっていたカーテンを閉めた瞬間、保健室の扉が勢いよく開かれ怒号が響いた。


 「ここにいるのはわかってるよ。ジニアール。助手、さっさとあいつを出すのが身のためだよ」

 「はて、師匠少し怒りを落ち着けてはどうかな?ここにはジニアール王女殿下は来ていないよ」

 「知ってるよ。この時間に病床が埋まることはほとんどない。でも埋まっているってことはっ」


 師匠と呼ばれていた女性は私たちがいる病床のカーテンを思いっきり開けるとそこには一匹?一人の猫耳を生やした女生徒が「にゃ、にゃ!?」という驚きの声をあげているのが聞こえてきた。

 どうして見つからなかったのか少し遡る。

 師匠と呼ばれる女性が保健室に入ってきたと同時にニアが魔法を使うとベッドが置いてあった場所が回転し保健室の地下、ここは王族や重要人物が何かがあった時用の秘密通路だそうだ。

 そして疑問に残ることが一つある、それはどうして猫耳の少女が私たちのいた病床にいたのかそれはニアに聞いたら簡潔な内容だった。


 「ふふ、簡単な話よ。私が魔法を使った時のこと覚えてるかしら?その時ベッドが回転したと思うんだけどどうしてかあの猫ちゃんが秘密通路にいて回転に巻き込まれて外に追い出されちゃっただけの話よ。あの子手癖が酷いから今回のことでおとなしくなってくれると嬉しいわね」

 

 ニア曰くこの通路から紹介したい人たちがいる場所にいけるらしい。

 光源魔法を使いながら薄暗い通路を歩いていくとニアは少し声のトーンを落としながら話し始めた。


 「あなたはネザっていう言葉を知っているかしら?」

 「小耳に挟む程度には」

 「それならここで知っておいて頂戴。ネザは一般的には魔力が暴走して動物を凶暴化させたり、人間を化け物、もしくは狂気に貶める。一般的には一種の病気として公表されているわ」


 それなら聞いたことがある。たまに遠距離投影魔道具テレビから流れるニュースで見たことがある。ネザに汚染された生き物から他の動物に感染し勢いがすごく騎士団が対応をこまねいているなど色々と最近耳によく聞く言葉になっていた。


 「だけど実際は病気でも魔力の暴走でもないの。これは一部の人間、このサイエスティア王国ではこの学園の幹部クラスもしくは王族、公爵クラスでは知り渡っている事実なのだけどネザはエーテルが反転したものなの」

 「エーテルは世界を創造したとされるやつか?」

 「あら話が早いわね。そこまでわかってたらすぐにわかるんじゃないかしら。その創造って言葉がわかりやすいわね。その言葉の逆はなんだと思う?」

 「それは———終焉」

 「そう、賢いわね。終焉って言葉を聞くと簡単に理解できると思う。ネザとは簡潔にいうと世界を滅ぼす力ということ。今、このアーテナー学園が創設された理由でもある。このアーテナー学園の教育目標を知ってるかしら?」

 「無理やり連れて来られたから知らない」

 「あら、無理やりなんて酷いじゃない。教育目標は簡潔に言うと自分の身は自分で守れってことよ。それに加えて他者も守ってあげてっていう簡単な話よ。まず、この学園について軽く触れておくわね————」


 ニア曰くこの学園、アーテナー学園がある場所は世界で最も技術的にも発展しており、ネザ汚染の最前線にあるサイエスティア王国に設立された複数の国が出資してできた学園だそうだ。この学園は各国の王族、貴族、下民と制限なく門戸が開放されており、志望して試験に合格した人が入学できるらしい。この学園は最新技術や魔法を学べるほか剣術から体術まで幅広く学ぶことができるらしい。そしてこの学園最大の特徴は部活の代わりに戦闘技術が突出した人たちがチーム組むクランというものがある。どうしてクランを組むのかというとアーテナー学園がネザ汚染の最前線ということもあり、時々国から学園側に魔物討伐の協力要請が出され、依頼クリアによって特別単位がもらえるといった、褒賞を受け取ることができる。そのため昔はたくさんのクランがあったらしいが弱いもの同士が組んで死亡事故が絶えなかったため、今ではクランの数も学園が認めたものしか残っていない。そこで疑問になるのがクランに入っていない一般生徒たちだろう。彼らは帰宅部と呼ばれ好きなクランの援護や戦闘に参加でき、それに応じた特別単位も取得できる。彼らに縛りはなく気になっているクランや気に入ったクランに力を貸したりしてくれる頼もしい存在らしい。


 「これがこの学園の面白いところよ。たくさん話しちゃったから、覚えられなかったらいつでも聞いて頂戴。わかりやすく教えてあげるわ」


 話を聞いた限り、一番楽そうなのは帰宅部だよね。

 私はもう、帰宅部でいいかな。のんびりするのが私の性に合ってるし。

 単位が足りなくなったらどこか強そうなクランについて行ってサボればいいでしょ。


 「クランに入っている人は大変そうだね」

 「??ええ、そうね。大変ではあるわね」


 ニアは私の問いに少し首を傾けながら返事をした。

 あれ?

 変なこと言っちゃたかな。

 そして私以上に変なことを言う人が私の目の前にいるのを忘れていた。


 「着いたわよ、歓迎するわ。私たちのクラン———」

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