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・1・
「2π×2×180/360は…何?」
「ちょっと…それ、中学2年でも答えられるんだけど…」
答えられれば苦労なんてしないんだよ。
大体、分からないものは分からないし。数学は20点以上取ったことない。
「そんな問題も答えられないなんて…。どうしてそんなんで高校入れたの?」
「"勘"だ。全問4択問題だったからな。オール満点だった」
そのせいで何故か首席で入学してしまった。
そして入学後はこのザマ…。俺の運はここぞという正念場でしか発揮されないらしい。
通常のテストでは15点がいいところなのだが、全国統一模試等では必ずBest5以内にはランクインする。
「運がバカみたいに強い…まぁ実際バカだけど。その運を何かに使えないの?」
「1度だけ麻雀をしたんだが、1時間で40万儲かった。あの時はビックリした」
「それ、どうやったの?」
「1時間で半荘70回したんだが、毎回親スタートで配牌聴牌での第一ツモで自摸和了って天和だった」
つまりは、1度も一向聴にならず、二順目の一本場で全員が跳んだわけだ。
「1時間に半荘70回って…」
「俺もビックリしたさ。速攻で役満和了るんだから。まぁ、そのせいで友達が居なくなったけど」
ちなみに、高校1年の時の旧友だ。
旧友とよんでいいのか分からんが。
「それで商売すりゃいいじゃん」
「…その発想は無かった」
「いや、冗談だから。賭博は違法だから」
「そういや、昔から運だけはいいんだよな。何でだろ」
「パパの運を引き継いだんじゃない?」
「未来!今ソイツの名を出すな!」
今ソイツの名を出せば、俺があのマダ男の血を引いていることになるんだから!
「それは仕方ない。少なからずアンタはパパの子だから。パパとママがヤってアンタが生まれてきたのは事実。それを否定しちゃ、アンタと私は兄妹ではないことになるから。…あ!それでいいんだ!よし!今日からアンタと私は兄妹じゃない!おk?」
「No!そいつは駄目だ!そんなことになっちゃ、俺のライフラインが断たれるも同じだ!だって権力はお前の方が強いから!」
「どうにかしてコイツを追い出す方法は…」
マズい…。
この恐妹(造語)が何かしでかす前に対策を考えないと。
せめて金があれば…。
「お金か…」
「いくらかならあげてもいいけど?」
「『返してよ!お兄ちゃんのバカっ!いぢわるぅぅ…』とか言わないよな?」
「うん、それよりお前は私の事を普段そんな目で見ているのかこの蛆虫ロリコン野郎」
「残念だな未来よ。お前にそのようなことは微塵も|期待していない」
「そうか。それは光栄だ」
許してもらえてなによりだ。
少しだけお巫山戯が過ぎた。
てか、兄妹内でこんな会話が繰り広げられてるって普通じゃないよな?
「よし。ではいくらだ?」
「30万前後でどうか」
「フッフッフ…お主も悪よのう…」
「……そのテンション飽きたんだけど」
「そうか。わかった、止める。でもそんな大金どこにあるんだ?」
「私の机の百科事典の箱の中に150万円が」
エロ本かよ!と突っ込みたいが、殺されるので押し殺した。
でも、また何でそんなところに。
しかも肝心の百科事典はどこに行ったんだ。
「何か言った?」
「い、いや、何も」
「それじゃ、待ってて」
「おう」
・2・
「はい、30万円」
「どーも。この機会に銀行口座の開設しとくか?」
「うーん、そうしようか」
「じゃ、行ってくるわ」
「手ぶらで大丈夫なの?」
「手ブラ!?お前、何て事言ってんだ!」
「五月蝿い黙れセクハラ腐れド変態」
あ、その包丁は何処から取り出した!?
お前のポケットは四次元か!
このままじゃ俺が裸過ぎる…
何か…あ!靴篦!
これなら包丁より断然リーチが長い!
「冗談だって!ちょっと!…お前がその気ならこっちも靴篦で応戦だ!」
「とうっ!」
「包丁は投げるものじゃない!それじゃ、行ってきます!」
「あ、そうだ。ちょっとまって」
何?
殺すのだけは勘弁してよ。
傷害事件には関わりたくないから。
「多分だけど、ネットでやった方が得だと思う。ポイントが付いたりするし」
「便利なご時世になったもんだ。じゃあそっちでやるよ」
ウィーン…ガガガ…
「そういえば、最近パソコン使ってないな…。ネット料金とかは知らない間に発生してんのかな」
「知らない。あ、pass入力画面でたわよ。早く打ってよ」
…暫しの沈黙。
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「何で知らねーんだよぉぉぉぉぉ!(°皿°)」
「こっちの台詞じゃぁぁぁぁぁ!Σ(°д°)」
……ハッ!
いかんいかん。取り乱してしまった。
それもこれもあのクソ親父のせいなんだが。
「今日は、あきらめよう?」
「うん、そうだね」