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未定ー。  作者: 国士無双
2/8

プロローグ


…………………


「…ちゃん、お兄ちゃん!遅刻しちゃうよ!」

「んぁ…」

寝ぼけ眼で時計を見る。

短針が8、長針が3を指している。

つまり、8時15分。

「まずい!何でこんな時間に!」

ふと部屋を見渡すと、点けっぱなしのテレビとPS3。

俺が居るのは、ベッドではなく、座布団の上。

…大方理解できた。

昨夜、徹ゲーをしていたところ、急に眠くなり、そのままパタリ。

…………

「遅刻だぁぁぁぁぁぁ!ちょ、未来(みく)!着替えるから出ろ!」

慌てる未来(みく)を押し出し、力強くドアをしめる。

急いで干してあるカッターシャツを奪り、ネクタイを通す。

こういう時に限って、なかなか輪っかが作れない。

普段なら絶対10秒以内にやってるのに!

…いや、15秒?

ええい!そんなことはどうでもいいのだよワトソン君!

無駄な思考が一番時間を食うんだよ!

え?急がば回れ?

うっせぇ!どこを回れって言うんだよ!

部屋?

回れねぇよ!

くっそ!こんなネクタイ、どうにでもなれぇぇ!


-3分後-


「お兄ちゃん…キュートなアクセサリーだね…」

「気休めは止せ妹よ。これの何処がキュートだってんだ」

「ほら…団子ってところが現代っ子っぽくていいじゃん…あ、チャイナか」

「それは団子ヘアだろぉぉぉ!俺のは首からぶらさがってんの!見てみ!?これ!」

「…激しく鬱陶しいよお兄ちゃん…」

「す、すまん。熱くなりすぎた…」

「どんだけ不器用なの…貸して」

「おぅ!?」

グイッとタイを思い切り引っ張られて首が締まる。

このネクタイ。団子結びになってるくせに、何で滑るんだよ!腹立つ!

「……これで良しと」

「すまん…。でもお前、もう遅刻確定だぜ?」

「あ…」

「いやぁ、とんだ災難だったな。でも俺はこんな良い妹を持てて幸せだな…あ?」

「うっさいバカ兄貴!お前ェのせいで遅刻だろうが!単位落ちたらどうすんだよ!あ?言ってみ?コラ」

「……不甲斐ない兄で申し訳ござらん。この件については切腹するしか…」

「だぁぁぁ!うっせぇ!死ね!死ね!消え失せろ!二度と現れんな!」

ドガッ!ドガッ!

腹、顔面、肩、尻。

色んな所に蹴りが入る。

はぁ、ヒールじゃなくてよかったぁ…。

どうやらウチの妹、不都合があると黒くなるみたいです。

いや、オーラが。

目元じゃなくて。

目元が黒くなるのは、俺。

殴られたアザだったり、恐怖に伴う寝不足だったり。

いかんせんダメ男です。


              ☆


「うぉう、凄ぇな、お前の顔」

「いろいろあってな…。恐妻ならぬ恐妹だよ」

こちらは親友Aこと森永結衣(もりながゆい)

女のくせに、男言葉で話す、色気とはかけ離れた人間である。

「今もの凄く失礼なこと考えなかったか?」

「お、察しがいいねぇ。何?今調子いいの?」

「何がだよ!つか何?殴られたの?」

「そんな甘っちょろいもんじゃねぇ。首締められて恐喝、蹴り入れられて今に至るって所かな…」

「壮絶な…戦い?」

「一方的な。背水の陣でも敵わねぇよ」

「大変だな…」

「お前はバイト続いてんの?」

こいつ確か…ロー○ンでバイトしてたような気がするんだが…

その前がPI○ZA H○Tの配達員で、ST○RBA○KS CO○FEEの従業員……

「からっきしだよ。この前、客がエッチ本買ってて、防衛本能で殴っちゃって…」

「お前、コンビニで働くな。今後一切。路上ライブでもやって駄賃集めてろ」

「いや…それがさ、全然集まらねぇんだよ」

「何!もうやっちゃったカンジ!?」

「ギターケース前に置いてんだけど、コレ投げ込んでくれる奴少ねぇんだよ」

コレだよコレとか言いながら人差し指と親指で丸をつくっている。

へぇ、何それ、仏様の真似?

「それも100円とか500円でさぁ。千円くらいくれって話なんだよ。ギターの整備費の方が高くついちまって、大赤字だ」

「で、辞めたのか」

「察しの通り」

「長続きしねぇな。ギターにハマったり…そうだ、お前、一回だけ会社立ち上げようとしたよな?」

「懐かしいな。あの頃ははっちゃけたもんだ」

「いや、半年前な…」

「外資系の会社を立ち上げようとして、家の口座から全額下ろしたときにゃ、酷く怒られたからな。懲りたよ」

「金を下ろしたお前が悪い」

「一時のテンションに身を任せると大変なことになるぜ!」

「わー、すごいせつとくりよくー」

「……日本銀行に勤めてみたい。あと、ヨーグルト食べたい。BIOチャレンジしたい」

「脈絡無いにも程があるよー。日銀はわかるけどヨーグルトはわからーん」

「もうすぐ進路希望提出かぁ。鶏冠井(かえで)は何って書くんだ?」

「一応、進学。高卒で就職はキツいかなって」

「利口だねぇ。あたしは一生バイト&パート&ニート生活でいいよ」

「泥沼生活キタ!いいのそれで!?人生棒に振るよ!?」

「だってあたしが大学進学なんて考えられるか?この高校入れたのだって奇跡の中の奇跡なんだから」

……確かにそうだ。

結衣の中学校の頃の成績はオール3。

んでもってテストの平均点は250点。

また奇跡が起きない限り、大学校進学は到底無理だろう。

神様もそこまで暇じゃないだろうし。

「そうだな。諦めろ。お前の人生はそれでいいんだ。お前らしく生きれば、それで」

「あたしがニートだと言いたいのか?」

「そういう意味じゃないんだが……」

「ならいいけど…。鶏冠井(かえで)はどこの大学に?」

「決めてない。地元でもいいし」

「ふぅん。じゃ、飯食ってくるから。じゃな」

「俺も飯食うかな…」




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