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百ニャン一首 ―まこと継ぎし猫たち―  作者: くろのぼっち


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序章 第三話:崩せぬ品格

気高く、優雅に、完璧に。

その予定は――入学初日で終わった。

※この作品はフィクションであり、一部史実をもとに創作しています。



『私立城蘭学園高等部』――


エリート校の部類に入るものの、その校風はかなり異質だ。


いわゆる進学校ではなく、あらゆる分野の戦略・戦術校。


自由だがその分だけ責任も重い。


学業での赤点は許されず、部活やその他、


生徒自身が選択した分野で『結果』を求められる。


各専門分野で毎週、進捗レポートを提出し、


各専門官の査定をもとに戦略・戦術計画を練る。


自身で「成果」を定めてコミットし、月一の諮問会議で方針を再設定――それを繰り返す。


そのため、クラスとしての授業は午前中のみ。


午後は各自、所属分野の研究施設や演習場、部活へと散っていく。


厳しい制度の代償として、卒業後の進路には強力なパイプが用意されている。


一芸に秀でる者にとっては、これ以上ない環境だった。



葵生みことの実家は、五大財閥の一角を成す名門である。


三女である彼女にエリート校への進学は必須ではなかったが、


家の品格を守る責務は免れない。


幼少より英才教育を受け、何事もそつなくこなせた彼女は、


この学園でこそ、何か一つを極めたいと思っていた。


……のだが、入学初日からすべてが覆された。


同学年にして、妹……いやペットにさえ思えるほど、


愛らしい存在と出会ってしまったのだ。



――校門を通り抜けると、


校舎へと続く広々とした石畳の道が朝露に濡れてきらめいていた。


整然と行き交う新入生たちの中で、


まるで絵画から抜け出してきたかのような、ふたりの少女が目を引いた。


お嬢様然としたみこと、小学生のような愛らしさをまとったリン。


ふたりは手をつなぎ、ゆっくりと歩を進めている。


その不思議な光景は、あっという間に“映え”に敏感な新入生たちの視線をさらい、


ざわつきが広がっていく。


教師たちも思わず足を止め、


窓辺からのぞく生徒たちも目を奪われる。


中には携帯デバイスを取り出し、


写真を撮り始める者すら現れ始めていた。


みことは内心、冷たい汗をかきながらも、気品を崩さぬように笑顔を作っていた。



「見てみろよあれ!何か凄まじく可愛いぞ!」

「え、妹さん?……いや、制服着てる……」

「なんで手を?小学生?……い、意味わからん!」



ざわつく空気の中でもリンは全く動じず、みことの手をクィっと引き寄せる。



「どこに向かうのじゃ?」


「の、のじゃ!?」



愛くるしい容姿に反則的な言葉づかい――


脳内に雷が落ちたかのような衝撃が走り、みことは思わず顔をそむけた。


……落ち着きかけていた脈拍が再び跳ね上がる。



(い、いつの時代の言葉だってぇ~の!!

その容姿と、可愛いおめめの上目づかいっ!もう反則過ぎ~ッ!)



周囲の視線がこちらに向いているのは理解しているので、


財閥令嬢としての気品は崩せない。


しかし、せっかくリンに尋ねられた以上、やさしく応えたい。


ゆっくり顔を戻すが……表情が笑っているのに引きつっているという、


とても品位があるとは言えない顔になっていた。



「みこと、顔こわい」



……平然とリンに言われる。



「はッ! お~ほッほほほ、ごめんあそばせ~」



何故か意味不明な決めポーズまで飛び出てしまい、


心の中では机をガシガシ叩き、不覚を嘆く。


正気を取り戻して深呼吸する。



「エントランスにクラス分け表があるはずですわ!これから確認しに参りましょう」


「うむ、わかったのじゃ。みことに任せる」



みことは再び顔を背け、小声でブツブツ――



(……キョウハオヒガラモヨクサイコウノトウコウビヨリデゴザイマスワ……)



何とか自我を崩壊させないよう、思考逃避するみことであった。



――春の日差しはやわらかく、朝の匂いと共に寄り添っている。


ざわつく視線を背に、二人の手はしっかりと離れないまま、


学園のエントランスへと歩みを進めるのだった。

最後まで読んでくださってありがとうございます。


第三話では、葵生みこと&彩音リンの“はじまりの朝”を描きました。

二人の関係は、これから物語を通じて大きく変化していきますので、どうぞご注目ください。


次回は、【来週金曜日19:00】に更新予定です。

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