表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百ニャン一首 ―まこと継ぎし猫たち―  作者: くろのぼっち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/20

第一章 第五話:出会いは乱闘の中で

家から学園までは、それなりに遠い。

燈は電車を降り、学園までの道を歩いていた。

今日から、二年生としての新学期が始まる。

気持ちを新たに、通い慣れた道を一歩一歩たどる。

通学している生徒を眺めると、新入生らしき初々しい姿も散見され、

一年前、自分も同じ立場で、同じ気持ちだったと感慨にふける。

燈が一人で登校していると、後ろから『ばしんッ!』と、

いきなり肩をたたかれる。


(来たわねっ!)


既に腐れ縁になりつつある人物が、声を掛けてきた。


「おっす!!!ひさしぶりじゃねぇか~!燈。

元気してたか?俺がいなくて寂しかったんじゃねぇの?」


一年の時はクラスは違えど、中学の時の因縁?で、

仲良く?なった――東雲閃花である。


「げほッ……ちょっと~あんた力が強いんだから、

か弱き乙女に加減しなさいよね!」


「ガハハハッ!お前がか弱き乙女とはな!

剣を持たせりゃ、野郎なんぞ相手にならねぇだろうが、

さしずめ“裏番”ってところじゃねぇか?」


「だ~れが裏番よ!こんな見目麗しい少女に向かって!」


「ん~……お前も黙ってりゃ、イケてんだろうけどなぁ。

しかし、どうだい?骨のありそうな新入生はいそうか?」


「骨?……そんな視点でなんて見てないわよ。

あんまり新入生に絡むのやめなさいよ。

もう今日からは“先輩”なんだからね!ちゃんとお手本になってあげないと!」


「おめぇは俺のオカンか!」


登校時のいつもの会話が戻ってきたことに、

燈も閃花も、どこか懐かしい気持ちになりながらも、

言葉には出さないが、互いの居心地の良さを再確認していた。


東雲閃花とは三年前に偶然出会った。

別々の学校だったので、それまではお互い全く面識はなかった。


――話は出会いの場までさかのぼる。

ある日のこと……。

燈は友人とショッピングに出かけていた。

夕方になり帰宅するために別れ、近道をしようと裏路地を歩いていた時、

急に叫び声が聞こえてきた。


「うりゃ~!ざけんじゃぁねーぞ!」


何事かと気づかれないように覗いてみると、

少女一人相手に、半グレ風の男連中が十人以上で取り囲んでいた。

呆気にとられ、目を疑う燈。


(はぁ?どういうこと?……いやいや!まずいでしょ!

警察に……いや、囲まれてる!時間がない。

まずは三~四人こちらに引き付ける!)


そう思ったと同時に、燈の体は動いていた。

その日は先ほどまで小雨が降っていたので、傘を持参していたが、

この“傘”は、実はただの傘ではなく、

護身用として木刀と変わらぬ強度の“特製傘”であった。

人数が多いので、なるべくこちらに引き付けることを最善と判断し、

剣道の型で、掛け声を張り上げ、注意を引き付ける。


(まずは手前の三人!!!……左から!)

「キィェー!!!メーーン!!!」


燈は素早く間合いに踏み込み、躊躇なく左側の男の頭に打ち込む!


「うわぁー!」


頭を打ち抜かれた男は、うめき声を上げながら崩れ落ちる。


(一人目!!!次!肩を打ち抜く!!)


すかさず、隣の男の左肩を狙って突きを放つ!


「うおッー!な、何なんだこいつ!」


二人目もうずくまり、即座に三人目の胴を打ち抜き、這いつくばらせてから、

ひとまず態勢を整える。

いきなり燈の参戦に、少女を襲っていた男たちは、

一斉に燈へと視線を向ける。


「な!なんだ!あの女はよー!いきなり乱入してきやがったぞ!」


燈の急な参戦により、一息ついて体勢を立て直す少女。

十人以上の男たちに無謀にも絡んでいき、

窮地に陥っていたのは“東雲閃花”であった。

拳は赤く腫れ、息は荒いが、それでも目だけは死んでいない。

しかし、さすがに“少々”反省していた。

男たちが燈に意識を向けている隙に再び立ち上がり、

窮地を脱する可能性がでてきたことで、わずかだが抵抗する力が復活した。


「誰だかしらねぇが助かったぜ!

こっちは任せろ!悪ぃがそっちを何とかしてくれ!」


その言葉は燈には届いていなかった。

生まれて初めての“実践”である。

雨上がりの裏路地は薄暗く、足場は最悪。

湿った空気は呼吸を乱す。

一瞬のミスが命取りになる……(これは試合じゃない!)

――呼吸を整える。

視界が絞られ、音が消える。

相手の肩が揺れた瞬間、燈の体はもう動いていた。

考えるより先に、踏み込みが走る。


(二人同時に行くつもりで!!!)

「ハァーー!!キィェー!!!」


先ほどの奇襲と違い、相対しての攻防であったが、

燈の打ち込みと、高速の踏み込みに相手は翻弄され、

素人が達人を相手にするが如く、

軽くいなされていく程のレベル差であった。


二人をほぼ同時に倒すと、ふと我に返る。

襲われていた少女に目を向け、何とか持ちこたえているのを確認すると、

再び気を練り直し、踏み込む軌道を予測する。

閃花も限界ギリギリで相手を引き付けている。

時間が経つにつれ、囲っていた男たちの様子が変わった。


「ななな!!なんなんだよこいつらはよー!

ヤバすぎんだろうが!一旦引くぞ!」


そう言うと、男たちは負傷者を担ぎながら撤退していった。


――燈は震えていた。

手が、足が、体が……そして“脳”が。

自分の剣筋がどうだったのか?

踏み込みの軌道はどうであったのか?全く記憶がない。


「はぁ、はぁ、……な、何とか……何とかなったー!!!

ッて!あなた大丈夫?怪我してるんじゃないの?」


そう言うと、燈は襲われていた少女に近づき、手を差し伸べた。


「い、痛ててて……、お、おめぇ~相当腕が立つなぁ~」


差し伸べられた手を握り、立ち上がると、燈の肩にもたれかかった。


「ありがとよ……東雲閃花だ。あんたの名は?」


いきなりもたれかかられた燈は、予想していたより大きな体躯に、

戸惑いながらも何とか受け止めた。


「ちょっと~大丈夫?……重っ!あたしは神楽坂燈よ。

フラフラじゃない!家まで送ろうか?」


「おめ~知らねぇ奴なのに……しかもいきなり乱闘に乱入してきて、

……すげ~お人よしなんだな」


「なによ~あんなの見過ごせるわけないじゃない!

文句あるならおいてくわよ!」


「ハハっ、わりぃ……あんた気に入ったぜ、

見たとこ中坊っぽいが、どこ中だい?」


「ん?畠山中学の二年よ。そっちは?」


「なんだ!タメじゃねぇかよ。俺は北並木中だ。

さっきはマジで助かったぜ、この借りは必ず返す。

何かあったら俺を呼びな。

あんたのためなら、いの一番に駆けつけるぜ」


「はいはい、きっとそんなことはないと思うけど、

これも何かの縁ね、後で連絡先くらい交換しておきましょうか」


この時の二人は、後に互いの背中を預け合う仲になるなんて、

想像すらしていなかった。


――その後、閃花を実家まで送り届け、両親からひたすら謝罪を受けたが、

閃花の父が、娘の怪我を見て激怒してしまい、

面倒なことになる前に、燈は退散したのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


次回――「父、猛る。」


世の中には……いろんな大人がいるもんです。


毎週、火・金曜日の19時に投稿していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ