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百ニャン一首 ―まこと継ぎし猫たち―  作者: くろのぼっち


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序章 第十三話:果てにつながり、灯せしあかり

――全ての勝敗が決まり、教室内に雑音が戻ってきた。

リンとみことが教室の端で静かに眺めていると、

読手を担当していた生徒が近寄ってきた。


「どうも、見学に来てた一年生だよね?

三年で、部長の樫木一鋼かしき・いっこうです。

見に来てくれてありがとう。君たちは経験者かな?」


あまり気が強そうとは言えない感じで、

黒枠眼鏡を掛けているせいか、秀才君ぽい印象だ。


「一年A組の葵生みことと、彩音リンです。

わたくしは……まぁ、嗜む程度ですけれど、そういえばリンは?」


「……ない」


首を振るリン。

教室に入ってから、明らかに何かがおかしい。


(えッ!? で、ではなぜかるた部に来たがってたというの?

ただ興味があった“だけ”かしら?……)


みことはリンの返答に頭が混乱していた。

昼食をとる前と後では人格が違うような、しかも口調も違う。


(そ……そういえば!手を繋いでくれない……しくしく)


「そうか!でも安心して、初心者にはちゃんと部員全員でカバーしていくから。

……ただ……ちょっと問題児というかなんというか……

でも!大丈夫!“お目付け役”もいるし。うん、問題ない……ょ?」


樫木部長がその“問題児”の方へ視線を向けようとすると、

先ほどの激闘を終えた部員の一人が、みこととリンに近寄ってくる。


声を掛けてきたのは……赤髪がさつ先輩だ。

みことは少々ばつが悪い表情を浮かべるも、

赤髪がさつ先輩は、全く気にしている節はないみたいだ。


「樫木ッ!!てめぇ……一年に変な事吹き込んでるんじゃねえだろうな!

大体うちの部員はたるんでるんだよ!サボりが多いんだよ!サボりが!」


赤髪がさつ先輩が樫木部長に食ってかかる。


「ひッ!……ち、違うでしょ?そもそもなんで、札取るのに拳を使うんだい!

そのせいで……今年に入って、も、もう四人も病院送りにしたのは、誰だい?(汗)

こ、これ以上はもう、やーめーて~ッ!」


オドオドしながら、最後は涙声になりながらも精一杯の反論をする樫木部長。


「はんッ!鈍いだけだろうが!反射神経を鍛えろ!

そのために俺もやり始めたんだからよ~!」


……どうやら彼女も、まだ初心者みたいだ。

みことがポカーンとなりながらやり取りを聞いていると、

急にこちらに話しかけてきた。


「おう?お前ら新入部員か!俺は二年の“東雲閃花しののめせんか”っつーんだ!

うちに入るんだったら、みっちり鍛えてやるから覚悟しておきな!」


滑舌も良く迫力のある通る声で、リンとみことの目の前に立つ。


(で……でかい!!近くに立つとこんなデカかったの!)


お嬢様はいかなる事があっても心は折れない……

例えフィジカルに圧倒的な差があったとしても!

見上げているとはいえ、決して屈せず、反抗的とも挑発的でもない、

あくまで“高貴なる視線”で、(がさつを圧倒して差し上げますわ!)

と、言わんばかりの勢いで視線を送る。


「一年A組の!葵生みこと、ですわ!“今朝”は、お世話になりまして!

色々と申し上げたい!ことはございますが、

本日は見学の身、また後日とさせていただきますわ。

ですので以後、お見知りおきを!フンッ!」


決め台詞よろしく、ドヤる。

そんなみことを見ても全く気にせずに、


「お?朝なんかあったか?……つ~か、

会ったことあったっけかぁ?覚えてねぇなぁ~……」


……はい、そんな些細なこと覚えてません。

そうです、その通り“脳筋”です。

みことは既に、東雲閃花の特性を見切った!

これからは脳筋対応していくことを心に決める。


「(いらッ)……も、もうよろしくてよ……リン、あなたもご挨拶なさいな」


リンは恥ずかしそうに両手をこねくり、もじもじしながら挨拶する。


「あ、彩音リン。よ……よろしく……」


みことは気づいている……やはり口調が戻っていないことに。


「あぁ?(みことに目を向けて)こっちの嬢ちゃんはイキがいいじゃねぇか!

……いいねぇ……そういうの、嫌いじゃないぜ?

で、そっちの小っこいのは……

おいおい~、そんな怖がらなくたって食ったりしねぇ~っての!」


閃花はリンの前にしゃがみ込み目線を合わせ、頭をなでる。


「はッは~!随分小っちゃくてかわいいじゃねえかお前。

もっとたくさん飯食って!

大きくなって腹から声出せるようにならねぇ~とな!

こんなに小っちぇんだ、何か困ったことがあったら俺に言ってきな!

お前にちょっかい出そうもんなら、

俺が全て“殲滅せんめつ”してやるからよ~……(ニヤリ)」


そう言われるとリンは顔を赤らめ、コクコク……とうなずく。

みことは隣で二人の話を聞いており、プルプル震えている……。


(ま、まずいですわ……このままではリンが“脳筋”に落とされてしまう!)


「ちょっと!!!のうき……東雲先輩!?

リンをたぶらかさないでもらえますこと!」


「んぁ?何だおめぇ~やきもちやいてんのかぁ~?

ははッお前も可愛いとこあんじゃねぇか!」


スッと立ち上がり、今度はみことの頭を撫で始める閃花。


「ち!違います!そうではありませんわ!!」

(こ、この脳筋!!)


東雲閃花と話しているうちに、もう一人が近づいてきた。

先ほどの閃花との対決で、洗練された刃気全開の印象とは真逆で、

まるで太陽のような、それでいて爽やかであたたかな風が吹いてくるような、

吸い込まれていくような圧倒的な存在感。


「おっ!もう仲良くなってるの?何かいい感じじゃない!」


タオルで汗を拭きながら、結っていた髪をほどいたその容姿は、

キラキラと輝きを放ち、その表情はカリスマを感じずにはいられない。



「見学の一年生でしょ?初めまして!二年の“神楽坂燈かぐらざかあかり”よ。よろしくね!」



燈が言葉を発した瞬間、その場の空気が変わった気がした。

誰もがその言葉の余韻に包まれ、眩い存在感に圧倒されるみこととリン。

みことは頬を赤らめ、心まで熱くなるような感覚を自覚して、思わず恐縮する。


(な、何ですの?この方の存在感は?ま、負けてる?

わたくしの高貴なるお嬢様オーラが、霞んでしまうくらいに……!)


一方、リンはまるで古の記憶が呼び覚まされるような、

確信に近い感覚が脳を貫いた。


――間違いない。この人……そうだよね……“お姉ちゃん”――

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これにて序章は終了となります。

次からは新章へ。


次回――「知らない型」


ここからが“スルメの本番”。

読み進めるほどに、欠けたピースがはまっていきます。


毎週、火・金曜日の19時に投稿していきます。

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