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百ニャン一首 ―まこと継ぎし猫たち―  作者: くろのぼっち


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序章 第十二話:霹靂(へきれき)のかるた部

――昼休みも終わり、各部活・個人修練のオリエンテーションが始まる。

城蘭学園の部活は必須ではなく、個人修練との両方を選択することもできる。

みことは、先ほどのリンが言っていた、“かるた部”に付き添うことに決めた。

二人で手を繋ぎながらかるた部へと向かうが、

みことの胸には先ほどのリンの様子が、引っかかり続けていた。


(まだ会って二日目だというのに……まるで本当の妹のよう。

わたくしに妹がいたなら、きっとこんな感じなのかしら……。

自分自身の道を見極める……それも確かにありますが、

今はリンのことがたまらなく心配で、しようがありませんわ)


みことは財閥の三女として、幼いころから色々な英才教育を受けてきた。

成績重視の姉二人に比べ、自由に育てられたため、

学業以外の習い事もそつなくこなしてきた。

茶道、華道、お琴、バレエ、ピアノ、薙刀、弓道、合気道……

全てが様になる程度にはこなせる中で、

一番得意という訳ではないが、やっていて楽しいと感じるのは“弓道”であった。


一瞬を迎えるまでの、地道な鍛錬――解き放つ。

その刹那が心地いい。


この学園に来て、極めたいと思っていたことだ。

しかし……今は違う。

みことはリンの手を握り直し、新たな覚悟を心に誓う。


(やはり人は、出会い、影響しあって、心を育んでいくのですわ。

リンとは出会って間もないですが、わたくしにとっては全てが新鮮な経験であり、

一秒一秒、共にいる時を重ねるほど、かけがえのない存在だと実感します。

己のことなどいつでもできる。

今しかできないことを、やるべきですわ。

後悔など絶対にいたしません!)


そんなことを考えながら歩いていると、

“競技かるた部”だと思われる部室に到着した。

入口には受付らしき生徒が立っている。。


「やあ!君たち、競技かるた部に見学かい?」


性格の良さそうな先輩の男子生徒が、声を掛けてきた。


「さあ、リン。着きましてよ。見学するのでしょう?」


リンはみことの後へ急に隠れ、何やらもじもじしている。


(人見知りかッ!)


「ご、ごめんあそばせ……。

一年A組の葵生みこと、彩音リンと申しますが、

見学させていただいてもよろしいでしょうか」


「ああ!勿論だとも!歓迎させて――」


「うぉりゃー!!!」「バァーン!!!」


その瞬間、部室内から尋常ならざる“掛け声?”と“爆発音”のような音が聞こえた。


「な!何事ですの!?」


みことは“お嬢様道”として、かるたを嗜んではいたが、

ここまで大きな声と音は初めて聞いた。


「ハ、ハハハ……(汗)、ちょ、ちょっと一人……と、特殊な人がいてね……。

いやぁ~大丈夫、大丈夫……少々元気なだけで凄く面倒見のいい子だ……ょ?」


先輩の視線は遠くをさまよい、表情は青ざめている。


「な、何ですの……それ。ふ、不安になってくるではありませんか……。

リン?とりあえず入りましょうか?」


「……う、うむ」


みことは深いため息をつきながら部室の中の様子をうかがい、

まだ読手が読み始めていないのを確かめてから、リンを促し中に入る。


――部室の中に入り静かに見学していると、

再び、かるた部らしくない派手な爆発音?にも似た、

畳を叩くような音が轟いた。


「どォ~ン!!!!」


二人が驚いてその方向に顔を向けると……

鬼気迫るオーラが放たれ、もはや戦場と化している一角があった。


「うぉッしゃ~~!!!」


凄まじい雄たけびを上げながら勝ち誇り、

ガッツポーズをしているガタイのいい赤髪のボサボサ短髪!

今朝、誰かに追われながら、二人にぶつかろうとしてきた人物だ。


「はッ!?もしかして、今朝の“赤髪がさつ女子?”

しかし、な、何ですの?この状況はっ!」


リン「……」


「ガハハハッ!!さぁ来いよ!決着をつけようじゃねぇか!!!」


仁王立ちして、でかい声で挑発している様は、とてもかるたの礼儀ではない。

しばらく様子を見ていると、赤髪の先輩?が目立ってはいるが、

対戦相手の気迫も負けてないことに気づく。


「あら?……あの方はもしかして……髪を結ってるから気づきませんでしたが、

あの赤髪がさつ女子?を追いかけていた橙髪の方なのでは?

お二人とも競技かるた部だったのですね」


今朝の“あの二人”に気がつくみこと。


リン「……」


“赤髪がさつ女子”の、がさつな気迫は四方に飛び散っているが、

対戦相手は全く意に介しておらず、

むしろ静かにたたずむ様子から放たれるオーラは、

触れた瞬間にすべてを切り裂くような、凄みを感じさせる。


「がさつ先輩……は言うもがなですが。

相手の方は何者ですの?威嚇?いえ違いますわ!

と、研ぎ澄まされた……“刃気とうき”?」


リン「……」


二人の対戦に見入って興奮してしまったみことは、

一時、リンを気にかけることを忘れていた……。


その時、読手を担当している部長らしき眼鏡を掛けた男子生徒が、

赤髪がさつ先輩に向けて注意し始めた。


「あ、あの~……そ、その~私語は慎んでもらえないかと……」(びくびく)


青ざめた表情の眼鏡男子生徒が恐々と声をひねり出す。


「ああっ?いいから早く先を読めや!」


「ヒッ!」


眼鏡男子生徒は眼鏡を掛けなおし、汗を拭きながら息を整えた。

周りの部員たちは苦笑いしつつも、

いつものことだと言わんばかり意に介さずに集中している。


――再び静まり返る部室。

先ほどの状況と比べると、あまりの落差に心が震えるみこと。

そして読手は次の句を読み始めた。

一言目を発したと思った刹那、橙髪女子の右手が消えた……。


「え?見えない!!!」


リン「……」


“シュッ!”――

必要最低限の波形だけが響くような……

それでいて刹那を感じさせるに十分な音がかすかに聞こえ、一枚の札が消えた。

しかし!その直後「どォ~ン!!!!」という破壊音?が轟き、

みことは目を疑う……


「なっ……なぜ!?こ、“拳”で……!?(汗)」


リン「……」


そう、橙髪女子が札を払った直後に、

“赤髪がさつ先輩”が取りに行こうとした……“拳”で……(汗)。


「いやいやいやいや!あ、ありえませんわ!

……ここって……はっ!?かるた部ですわよね!」


ワナワナしているみことをよそに、

リンは下を向き、何やらブツブツと呟いている。


「……よね……ん……ゃんも……そ……あやに……」


常識はずれな行為を見てしまったみことは、少々気が動転してしまい、

リンの様子に気づいていなかった。


「リン!リンってばー!」


リンの髪をわしゃわしゃにしながら頭を揺らす。

髪をボサボサにされたリンは、ジト目でみことを見上げ、


「みこと……うざい」(いらッ)


……と、らしからぬ言葉をかける。


「ガーン!(白目)……はっ!……と、取り乱してしまいましたわ。

こ、これしきのことで取り乱すなんて、まだまだ修行が足りませんわね。

それはそうと、リン。どうしますの?入部しますの?」


みことの取り乱し具合を不思議がるリン。


「……もう確定……みたい」


うっすらニヤリとする瞬間を、みことは見逃さなかった。


(雰囲気が変わった?リン、あなたは一体……)


そこからの時間、みことはあまりよく覚えていない。

リンの視線はある一点に集中しており、

声をかけるのもためらうほどで、先ほどとは真逆の様子に、

みことは何もできずにいた。

一つだけ覚えていたことは……


(ばあや……あなた、一体リンの何を知っているの?問いたださなくては……)

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


次回――「果てにつながり、灯せしあかり」


ようやく序章の最終話です。

スルメ展開はまだまだ続きますがw


毎週、火・金曜日の19時に投稿していきます。

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