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244  作者: Nora_
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01

 昔、人からよく大きいと言われていた、なのにいまではクラスの男子平均身長よりも小さくなってしまった。

 そのことが引っかかったままでいる、なにも変わらないとわかっていてもすぐにこのことを考えてしまう。


「お待たせ、結構時間がかかっちゃったよ」

「これはもうなにか奢ってもらうしかないな」

「別にいいけど次は奢ってもらうからね?」


 問題なのは彼だ。

 男のくせに女子から可愛いと言われ続けている彼よりも小さいものだから困っている。


「それでいまはなにが欲しいの?」

「本棚だな」

「はい無理」

「冗談だよ。あと奢らなくていい、さっきのも友達同士なら言うであろう冗談だ」


 バイトができる学校ではないから金持ちというわけではないがそれでも小遣いはなにかがあったとき対応できるように貯めてある。

 それでもちびちびと使うときもあって二万円ぐらいしかないのが甘いところか。


「それなら冬だからアイスを買ってあげるよ」

「鬼畜か、いや、冬に食べるアイスも美味いけどさ」


 それで実際に買ってくれてしまったから俺が彼の分の金を出しておいた。

 同額だからこの点で引っかかるようなことにはならないだろう。


「ん-相変わらずこのアイスは美味しいなー」

「本当に好きだよなそれ」

「うん、大好き」


 好きな食べ物でも短い期間の間に食べ続けていれば飽きがくるというものだ。

 でも、あくまでそれは俺にとっての話でしかないからいちいち水を差す必要もない。


「帰るか」

「今日ははじめの家に泊まるね」

「おう」


 宮本昇みやもとのぼる――彼は両親の帰りが遅くて寂しいとかなんとかで俺の家に泊まることが多かった。

 こちらは一人だからそういう存在を気にしなくていいからなのかもしれない。


「ご飯、先に作っちゃうね」

「頼むわ」


 あと無駄に家事スキルが高いから来たときは任せるようにしている。

 俺が家賃を払っているわけではないとしても泊まらせることがその対価――というのは微妙だから今度なにか礼をしようと思う。

 アニメが好きというわかりやすい趣味があるのはこういうときに楽でいいかもな。


「いい匂いだな」

「食材とか調味料のおかげだよ」

「待っているだけで料理が出てくるなんて最高だ」

「はは、初はぐでーんと緩みすぎ」


 家だから仕方がない。

 本当はこういう間に風呂なんかに入ってしまえばいいとわかっていても昇がいるときは一番風呂を譲るようにしているからできない。

 課題なんかもないから伸びているぐらいしかやることがないんだ。


「さ、食べよっか」

「おう」


 三十分もしない内に提供されて食べられる流れとなった。

 作る時間がそれなら食べる時間はもっと短いわけで十分とかからずに終わった。


「洗い物はしておくから入ってこいよ」

「うん、先に入らせてもらうね」


 二年の四月から二年の冬現在まで一緒にいられている。

 その間に何回もこういうことがあってここで無駄な言い争いをしなくて済んでいる形になる。


「さっきは待たせちゃったけどお風呂の時間で迷惑をかけることはないよね」

「ゆっくりでいいのに」

「そういうわけにもいかないよ」


 ただ? 先に入るようになってから速攻で出てきてしまうようになってしまったことが問題だと言えた。

 だからこのやり取りだけは何回も繰り返していることになる。

 まあ、言っても聞かないうえに既に出てきてしまっているから諦めて自分も風呂に入ってくるしか選択肢がないんだが。


「な~」

「あれ、もう駄目なのか」


 謎なのは夜に眠たくなると猫になってしまうということ。

 当たり前のように受け入れられているのは実家あっちにも変なのがいたからだ。

 とりあえず押しつぶさないような場所に寝転ばせてこちらも床に寝転がる。

 無駄に起きていても疲れるだけだからそのまま朝まで寝て、早く起きるようにしているから家事なんかを始めた。

 俺だってなにからなにまで任せるわけではない、やってもらうとしても夜ご飯作りくらいだ。


「……おはよう」

「おう、もう朝ご飯できるぞ」

「うん……顔を洗ってくるね」


 あ、面白い点は普通のときは黒色の髪なのに猫のときは白色になることだ。


「ふぁ……昨日は早く寝すぎたよ」

「猫なら夜行性のはずなのに昇は夜が駄目だよな」

「うん、前日に夜更かしをしていないのにいつもそうなんだよね。だからお泊まりができてもいつも物足りない感じでさ」

「ま、学生時代が終わればなんとかなるはずだからそれまでは我慢するしかないな」

「えーそれじゃあ楽しめないじゃん」


 眠たくない内に楽しんでおくしかない。

 その点、学校にいけば沢山の友達がいるから悪くないだろう。

 夜で家にいるときしかそうならないからリスクもない。

 他の友達が知っているのかどうかは知らないがまあ驚きはしても受け入れられないということもないはずだった。


「あ、そうそう、そういえば夢で初が狼になっていてね、食べられちゃうかと思った」

「二つの意味があるよな」

「あ、この場合は物理的に、ただお腹を満たすために食べられそうになっただけだね」

「自分で言っておいてあれだけど性的にだったら困るしな」

「僕が女の子、つまりメスだったら問題ないけどね」


 いや狼だってわざわざ猫を相手に選ぶことはないと思うが。


「僕が急に女の子になったらどうする?」

「来てくれる限りはサポートするぞ」

「おお、猫になれるぐらいなんだから女の子にだってなれるんじゃない? ほい! はは、流石にないか」

「そりゃあな。それにサポートをするとは言ったけど昇とはいまのままがいいぞ」


 俺より高身長になったり猫になったり、これ以上の要素はいらない。


「悔しいからちょっと練習してみるね」

「程々にな」


 俺の大きい悩みと同じでどうにかしようとしたところで疲れるだけだ。

 それでも彼が頑張りたいと言うのならやはり止める必要はないことだった。




「今日は暖かいな」


 昼休みに出てきているがベンチに座っていても戻りたくならないのはよかった。

 元々強めなのもあるもののいまも言ったように特別と言ってもいいぐらいには暖かい。


「にゃ~」

「黒色、だと……?」


 黒色もいいな。

 できれば昇に見せてやりたいところだが残念ながらここにはいないからただ抱き上げることにした。

 抵抗されるかと思えばそうではなくこちらを見てきている黒猫。


「あーそれ浮気だよね?」

「珍しいな」

「うん、友達がみんな他の友達に呼ばれちゃってね。初が過ごしている場所はわかっていたから出てみたら浮気現場を目撃することになったよ」

「見ろ、黒色だぞ」


 彼が近づいても膝の上で丸まっているぐらいだから大したメンタルだった。

 もう連れて帰りたいぐらいだ、残念なのはまだ授業があって無理だということだが。


「ぐ、いますぐにでも変わった方がいいかな?」

「いやいい、それに猫のときはあっという間に寝てしまうからな。教室まで運んでいったら騒ぎになるだろ」

「外でも変わるようになったら嫌だからやめておこうかな」


 そうした方がいい。

 仕方がないから挨拶をして別れて昇と一緒に教室に戻った。

 また会えるかどうかはわからないが俺ならいつもあそこにいると言っても過言ではないからまた来てもらいたいと思う。


「諦めきれずに放課後に来てしまったわけだけど」


 基本は友達を優先して暇なときだけ来いと言ってあるから一人だ。

 だからその時間を利用してまた同じ場所にいったらベンチの上にあの猫が丸まっていてテンションが上がった。


「にゃ~」

「お前、飼い猫じゃないよな? だったら連れ帰ってもいいか?」

「にゃ~」


 わかっているのかいないのかこちらを純粋無垢な瞳で見つめてきているだけ、俺はもうイケメンを目にしたときの女子のようにやられっぱなしだった。

 別に昇の家に住んでいるわけでもないしペットが禁止の家というわけではないから連れていくことにした。


「猫のとき困らないようにトイレとかエサ入れとか買っておいてよかったな」


 とりあえず昇が次に来るときまでは隠し通せる……って、別に隠す必要もないんだがな。

 でも、もうこの黒色――クロは俺の猫だからどこかにいかせたりはしたくなかった。

 そう、そういうのもあってすぐに昇がやって来ても慌てたりはしなかったね。


「嫌な予感がしたから走ってきたけどここまで予想通りだとそえらそれで悲しくなるね」

「クロだ」

「それなら猫のときの僕はシロ?」

「ああ、変に考え込む必要はない、見たときに誰もが言うであろう名前でいいんだよ」


 実家にいる変な存在だってやたらと俺達のことを見ていてくれて守ってくれる存在だからマモルという名前になっている。

 ちなみにそれは俺が生まれる前からいるため命名したのは父だ、その父の子ども時代から一緒にいるというのだからすごい話だ。


「んー! はっ!」

「昇、改めてすごいな」


 自由に変えられるようになる、つまりコントロールできるようになれば不安も少しはマシになる気がする。


「にゃ~」

「な~」


 あと昇は猫のときのことをちゃんと覚えているらしい。

 それでもいまはクロの動じないところを褒めるしかなかった。


「よいしょっと。ん-クロはすごいよ、全く怖くないんだね」

「俺が相手のときでも堂々と存在しているような猫だぞ、たかだかそれぐらいで負けるわけがないんだ」

「でも、初がクロにばかり構うようになったら嫌だな」


 俺としては猫にもなれる昇がいてくれてよかったと思う。


「だったら昇がいてくれればいいんだ」

「わかった、これは四月のときにも言ったけど約束だからね?」

「おう。あ、クロはなんて言ってた?」

「初のこと大きいと思っていたけど僕の方がもっと大きくて驚いている、だって」


 大丈夫だクロ、その点に関しては俺の方が驚いているからな。

 絶対ないとわかっていてももう一度成長してくれないかなんて期待してしまう。

 このときばかりは恋をすることに興味がある女子みたいな感じだった。

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