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亡霊の軌跡  作者: 氷淡月
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初めての依頼

「…お、終わったか?」

「はい、無事にライセンスをもらいました。」


 自分に近づいてきたフランに気づいた博士は褒めるように、

 自身のライセンスを見せるフランの頭を、掻き回すように撫でていた。


 その乱雑に撫でる手をフランはどかし、恥ずかしそうに呟いていた。

「…もう、子供じゃないんですからやめてくださいよ。」

「そうか?私からしたらまだまだ小童だぞ?」

「もう成人してますので。

 …師匠も何か依頼を受けるんですか?」


「…ん〜。

 なんか受けたいんだが、あんまいい感じの依頼がないんだよなぁ…。」

「そうなのですか。」

「ま、私のことよりお前だ。

 何にする?」


「そうですね…。

 …これにします。」

 とフランが掲示板をしばらく見つめた後、

 ある草の絵が描かれた依頼の紙を掲示板から外した。

 

「…お、クラル草の採取の依頼か。

 いいんじゃね?」


 と師匠の同意ももらったフランは、

 先ほどの受付嬢がいた窓口に、この依頼の紙を持っていく。


 そしてフランが自身のライセンスとこの紙を提示した。


「はい、クラル草の依頼ですね。

 取った薬草は、この袋に入れてください。

 この依頼の規定本数は15本となっていますが、それ以上多く持ってきてもらっても構いません。

 その分多くの報酬をお渡しいたしますので。」

「わかりました、ありがとうございます。」


 小さめの巾着を手渡す受付嬢に、フランは頷いて頭を下げた。


「いえいえ、気をつけていってらっしゃいませ。」

 

 と微笑む受付嬢は、ライセンス発行の当初よりも緊迫した雰囲気がなくなっていた。


 そのことに気づいていたフランだが、

 そういう演技をしていたのだろうかと内心思いながら巾着を受け取り、その場を後にした。


 ーーーーーーーー○


 フランを担当していた受付嬢とその隣にいた受付嬢が業務後の雑談として、

 こんな会話をしているとは、本人たちからすれば思ってもみなかっただろう。


「…ねえねえ〜、ちょっと話したいことがあるんだけどさぁ。」

「…ええ、私もよ。」

「「かわいかった〜(よね)…」」


「ちょっと小柄で、本当に年齢を満たしているのか不安だったけれど…

 ちゃんと話を聞いてくれるし、感謝も伝えてくれた。」

「そうなのよねぇ〜、聞いていたけれど本当に礼儀正しかった〜。

 声もコロコロしてて可愛かったし。

 それに、あの猫の仮面もめっちゃ可愛かったわ〜。」

「駆け寄って行った女性の方も、同じような仮面をつけていたけれど…

 お姉さんなのかな?」


「かもねぇ〜。

 だってその人、あなたがあの子の依頼を受理してる間、

 偶然かもだけれど、クラル草の生息地に発生するモンスターの依頼を受けてたしぃ…

 その人もめっちゃ礼儀正しかったんだよね。

 あ〜、次も私のところに来てくれないかなぁ…」

「それは同意。

 最近、横暴な人が多くなってきてるし…

 依頼をこなせなくて受付嬢にあたってくる人が多かったからね…

 ほとんど自業自得なんだけど。」


「…明日には、また来てくれるかも〜?

 そんなに危なくない区間の薬草取りだけど、まだ帰ってきてなかったからぁ…

 おそらくお姉ちゃんのモンスター狩りの手伝いでもしてるのかなぁ?」

「え、何それ。可愛すぎ…」

「だよねぇ〜、明日も出勤しようかなぁ?」

「私もそうしようかな、そろそろ有給使おうと思ってたんだけれど…

 あの子が来てくれる間は、働こうと思う。」


「癒しが増えていいよねぇ〜、でも女の子だと思うし…

 あんまり、無茶はしないでほしいよねぇ。」

「そうだね…

 でも、初めに薬草採取を選ぶ子だからそれはないんじゃないかな?」


「…それもそうだねぇ。

 成人になったばかりの人が冒険者登録をして、初めに選ぶのはモンスター討伐が多いし〜。」

「うん、そんなに強くはないけれど…

 舐めてたら普通に怪我するからね。」


「…多分、この街に初めてきた子だと思うから。

 おすすめのお店でも紹介しようかな…?」

「いいんじゃない〜?」

「…でも、急に受付嬢がお店紹介って変に思われない?」

「あ〜…、そうかもぉ?」


「だよね…。

 …また私の受付に来てくれるかもわからないし、機会があれば言ってみるよ。」

「お。いいじゃん〜、がんばれぇ〜?」


 といったように知らぬところで好印象を持たれていたフラン。


 そのフランだが…受付嬢の妄想とは裏腹に。


 大抵の冒険者が寝静まっているこの夜中に、

 博士が受注したモンスターであるメット()の群れ、

 合計10体に追いかけられて逃げ惑っていた。


「ほんと、勘弁してくれませんかぁ!?博士ぇ〜?」


 と悲鳴混じりの叫びを上げながら。


「なんだぁ?師匠って呼ぶんじゃなかったのか〜」


 追いかけられているフランの遠くから、そう言う博士の声が聞こえる。

 

「今は、それどころじゃないんですがぁ!?」

「大丈夫だって〜。

 ちゃんと急所狙えば、死なねぇから〜。

 早く、その正確性皆無な火魔法ぶっ飛ばせ〜」


 「…後で覚えておいてくださいよ!?」


 と嘆くフランの声が、メットの鳴き声と共に夜の草原へと吸い込まれていった。

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