冒険者登録
「…すごい賑わいですね。
は…師匠。」
と多数の人が行き交い、活発な露店エリアを歩いていたフランは
辺りを興味深そうにキョロキョロ見渡しながら博士に呟いていた。
その博士は、自身の呼び名を呼ぶ際にフランが言い淀んでいることに、
苦笑していた。
「言いにくかったら、別に変えなくてもいいぞ?」
「…いえ、師匠でいいです。」
「そうか?
…ま、たいていの街はこんなもんじゃないか?
なんか食うか?腹減っただろ。」
と博士が屋台の方を指差すと
「先ほど食べたばかりでは…?」
とフランは、呆れた表情で苦言を呈していた。
だが、博士は何も気にしていない様子で、ある屋台の店主に注文をしていた。
「いいんだよ、別腹だ別腹。
すみません、マヌとリーキを各種4本ください。」
博士はそう言いながら串に肉のみが刺さっているものと、肉の間に葉が挟まっている串を指さす。
その注文を受けて店主は嬉しそうに頷き、
袋に串を詰めるまでの世間話として博士に問いかけていた。
「はいよ!
お客さん、見ない顔だけどこの街は初めてかい?」
「ええ、観光に。」
「そりゃいいね!楽しんで行っておくれよ!」
「そうさせてもらいます。
…たしか、果物が美味しいと聞きました。」
「お、よく知ってるな〜。」
「関所の方に教えてもらいまして。」
「そうなのか。
その通り、この街の果物はめちゃ甘くてうまいぞ?
そこの嬢ちゃんにも食べさせてやんな!」
と博士の後ろで興味深そうに串が焼ける様子を見ていたフランに視線を送り、
笑いながら話す店主。
フランは急に自分に話が向けられたことに一瞬驚いていたが、
その様子に博士は笑いながら頷いた。
「ほい、マヌ串4本とリーキ串4本だ!
熱いから気をつけろよ!」
「ありがとうございます。」
と肉串が詰められた袋を受け取った博士は、店主に代金を渡した。
そして、袋からマヌ串を一本出して、フランに手渡す。
受け取ったフランは、湯気が立ち上る美味しそうな肉を眺めながらも
ある疑問を口にしていた。
「…歩きながら食べてもいいのでしょうか。」
「ん?ああ、そう言えば食べたことなかったな。
こういう屋台に、並べられているもんは食べ歩きで食べてもいいんだ。
座ってもいいけど、熱い方がうまいからな。」
「いいから食ってみろ」という博士の催促に従い、フランは口に運んだ。
そうすれば、噛むごとに口中に肉汁が広がり、
今まで味わったことのない食感と味わいに目を輝かせていた。
「…お、おいしいです!」
と興奮しながら頬張るフランに博士は嬉しそうに頷いた。
「だろ?
やっぱ、屋台といえば串だよな〜。
ほら、お前も食え。」
博士の肩に乗っていたレグに串を差し出すと、
その小さな口で器用に串から肉を取り外し、美味しそうに食べていた。
だが猫舌では少し熱いのか、口の中に空気を入れて冷まそうとする様子に二人は笑う。
そうして残りのリーキ串などを食べ終えた一同は、
警備員の案内通りに冒険者ギルドと書かれた看板がある建物の前までたどり着いた。
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「ようこそ、冒険者ギルドへ。
初めてご登録されると言うことで、簡単にご説明いたしますね。」
「はい。」
冒険者ギルドに入ったフランは、受付の女性に冒険者についての事前知識を教えてもらっていた。
「まず、もうご存知かと思いますが、
冒険者は15歳未満の方の登録を禁止させていただいております。
ですがフラン様は、先日15歳になられたと言うことですので大丈夫ですね。」
「そして冒険者になるにあたって、さまざまな依頼をこなしていただきます。
ダンジョン探索、住民からの依頼を受ける〈クエスト〉、護衛依頼などさまざまあります。
ですが、依頼を受注した中で死亡、または怪我等を負った場合でも、
ギルドは一切、責任を負いません。
冒険者間の争いで起きたものだとしても、同様にさせていただきます。
ただし、原則冒険者間の争いは禁止されていますので、
行き過ぎた行為をされた場合、ランクを下げさせていただくことがございます。
それでも、冒険者にご登録なされますか?」
妙な緊張感を漂わせる受付嬢に、フランは承諾した。
「…はい。」
その同意に受付嬢は頷き、ある一枚の紺色のプレートとペンをフランの前に差し出した。
「かしこまりました。
では、本人の同意も済んだことですので冒険者ライセンスを発行させていただきます。
この板に、ご自身の名前をお書きください。」
「わかりました。」
受付嬢の指示通り”フラン”と名を書いたプレートは、淡く光った後、
自動的にフランが書いた名前が彫られていった。
「これは、冒険者の身分証となります。
冒険者ライセンスを提示することによって、
関所で通行料を支払わずに通ることができたり、
冒険者ギルドの食堂なども利用することができます。
ただし、依頼を受注される際にライセンスを提示いただかないと受けられませんので、ご注意ください。
また、ライセンスをなくされた場合、一番下のランクから再スタートとなり、
再発行される際も費用がかかりますので無くさないようお願いいたします。」
「そして、冒険者は主に9つのランクに分けられています。
一番下のランクから、
〈エンゲル〉〈アルカン〉〈アルケー〉〈エクス〉〈メイス〉
〈キュリオ〉〈トロノイ〉〈ケルビム〉〈セラフィム〉
となっております。
フラン様は、一番下の〈エンゲル〉からのスタートになり、色は紺色になります。
ランクが上がるごとに、受注できる依頼が増えていき依頼報酬も増加していきます。
また、最低でも受けなければならない期間も、
ランクが上がるごとに増えていきますのでご注意ください。
上位のランクを目指せるよう、頑張ってみてください。」
「フラン様のランクの場合、
3日に一度は依頼を受けていただかないとランクが取り消しになりますのでご注意を。
旅をなされる場合は最低でも〈アルケー〉まで上げていただくことをお勧めいたします。」
「…では、これにて説明を終わりにさせていただきます。
何か、ご不明な点はありますか?」
と聞く受付嬢にフランは、首を横に振った。
「…いえ、大丈夫です。」
と言うフランに受付嬢は頷き、フランに冒険者ライセンスを渡した。
「かしこまりました、これにて手続きは終了です。
〈エンゲル〉が受注可能な依頼はあちらに貼ってありますので、
依頼内容の紙をこちらに持ってきていただければ手続きいたします。
では、良い冒険者ライフを。」
とお辞儀をする受付嬢にお辞儀を返すフランは、
依頼内容の紙が貼ってある掲示板の前に立っている博士の元へと向かった。




