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亡霊の軌跡  作者: 氷淡月
19/27

一時期の休息

「そういえばお前、なんかしたいことってあるのか?」

「やりたいこと、ですか…?

 あまりわかりませんが…」


「せめて、肉を焼けるようにはなりたいですね…」


 博士の質問に首を傾げるフランは、手元にある致死量の焦げがついた肉を眺めながら項垂れていた。

 

 例の騒動から帰ってきたフランは、博士が焼いていた生焼けの肉を修正しようと試みていたが…

 それは失敗に終わったようで、肉の柔らかさは消え、硬さが残っていた。

 

 その肉を口に運び、口に入れるが…

「…苦い。」

 と焦げ独特の苦さに眉を顰める。


「そうだなぁ〜お前が、やると…。

 …ふふ、あ〜はっはは!

 やばい、おもしれぇ〜」

 

 博士は、最初は声を震わせながらも堪えていた笑いを抑えきれず、腹を抱えて笑っていた。

 その博士の様子に、フランは不貞腐れたように反論していた。

 

「笑わないでください。

 博士だって焦がしてたじゃないですか」

「そうだけどさ〜。

 お前が、焼こうとした途端、あんな火が立ち上るなんて…

 見たことなかったんだよ。」


 と博士はフランが焼いた骨つき肉を持ち上げながら、その時の状況を思い出して笑っていた。

 焼いた本人はわからないようで首を傾げる。

 

「…なんででしょうね?」

「まぁ、でも食えんことはないからいいけどな。

 まだマシな方じゃね?

 火傷してないならいいじゃねぇか。」

 とフランが焼いた黒い肉を頬張りながら、そう述べる博士。

 だが、その優しさにフランは納得がいかない様子だった。

 

「…そうですか?苦いですが。」

「食えればいいんだよ、食ってぶっ倒れるほどじゃねぇーし。」


「毒を入れているわけじゃないんですから、当たり前でしょう。」

 と淡々と述べるフランに、またもや博士は肩を震わせ、隣で丸まりくつろいでいた猫に話しかけていた。


「だってよ、猫野郎。」

 と笑いながら話しかける博士に、レグはふいと顔を背ける。


 その会話を不思議に思ったフランは

「…レグさんがどうかしたのですか?」と博士に問いかけていた。

 だが…

 

「あのなぁ…こいつ」と博士が言いかけた瞬間。

「ミャ〜オ。」と今までフランが聞いたこともない、少し威圧がある声で被せてきていた。


「こいつが…」

「シャー…!」

 

「レグさん…?」

 と博士に威嚇するレグを見たことがなかったフランは、初めて聞く鳴き声も相待って戸惑っていた。

 

「なんだよ、レグ。

 いいだろ〜?そんな嫌がんなくてもいいじゃんか。

 そんな大層なもんじゃねーし…」

「みゃ〜う。」

「…あ〜はいはい。わかった、わかった。

 言わない、言わないから爪しまえ。

 地味に痛いんだよ、それ。」


 と宥められたレグは言われた通り、きらりと光らせていた自身の爪を忍ばせた。


 そしてフランに近づいたかと思えば、レグは彼女の膝の上に飛び移り、そのまま丸まった。

 その行動にフランは、苦笑しながらも嬉しそうにレグの背を撫でた。

 

「本当に、レグさんの毛並み良いですよね…。

 撫でてると気持ちがいいです。」

「あ〜、そうかもな。

 ま、こいつ自身が毛繕いしているからでもあると思うが…」


 と意味深なことを呟く博士に違和感を覚えたフランは、そのことと、

 なぜ自分のやりたいことを聞いた理由を問おうとした。

 その時だった。


 突然、膝で丸まっていたレグがフランの顔に飛びついたのだ。

 まるで、彼女の顔を隠すように。


 その奇妙な行動にフランは慌てて剥がそうとするが、爪が髪に絡まっているのもあり、離れなかった。

 どうしようかと思い、博士に話しかけようとした。


 刹那。


「…あ、あの。すこし、お時間よろしいですか?」


 柔らかい灰色に染まった視界の中で、突然現れたある女性がそう話しているのが聞こえた。


 その声の主は、フランが気配を全く感じ取れなかったほどの使い手とは思えないほど、

 初々しくたどたどしい響きをしていた。

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