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九 霞の苦難

超超超素人作品です。文法がおかしいところ多々あり。それでも良いよって方のみ閲覧お願いします。

「ただいま……」


 夜7時。カラオケが終わり家に帰った私_琥珀朧 霞は、リビングのソファに倒れ込む。


「ハァ…疲れた……」


 入学初日だというのに、すでに1年分の疲れが溜まった気がする。そんな私の下に一匹の猫ちゃんが私の手に擦り寄ってきた。


『ニャ~』

「……ただいま、アストラ。いい子にしてた?」


 アストラはこの家で飼っているオスの三毛猫。三毛猫のオスはかなりの希少種ではあるが、昔道端で倒れていたところを拾ってきたのだ。同居人たちは最初ホントにびっくりしていたな……


「おやつ食べる?」

『ニャ~!』


 私は身体を起こし、猫用のご飯やおやつが入った棚を漁る。アストラはまだかまだかとスカートを爪で引っかきながら急かす。


「待ってて、今出すから……あった」


 やっと見つけたおやつを開け、アストラに食べさせる。


「ほら、お食べ」

『ニャ~!』


 アストラは「待ってました!」と言わんばかりにおやつに食いつく。やっぱりこの時間だけが唯一の癒しだ。


「ただいま〜!」

「ただいま帰りました」


 そんなことを考えていると、ちょうど同居人が帰ってきた。


「ただいま〜霞ちゃ〜ん!!」

「七瀬さん、苦しい……」

「帰ってきて早々なにやってんですか貴女は」


 同居人というのはこの2人。清瀧学園理事長の七瀬桜羅さんと、その秘書である久遠天青さんだ。訳あって私は七瀬さんの自宅に居候させてもらってる。


「久遠さん、おかえり」

「ただいま、霞さん。すぐにご飯用意しちゃいますね」

「ねぇねぇ霞ちゃん。私にもおかえりは?」

「うん。今日のご飯も楽しみ……」

「あれ? 霞ちゃん? 無視しないで? 泣いちゃうわよ?」


 色々と言ってくる七瀬さんを無視してソファに戻る。おやつを食べ終わったアストラが膝に乗ってゴロゴロと喉を鳴らす。


「……まあいいわ。久遠~、今日のご飯は~?」

「鮭が残っていたはずなのでムニエルにでもしようかと」


 久遠さんはエプロン姿になり、晩ご飯の準備を始める。


「あ、そうだ。霞ちゃんこれあげる♡」


 そう言って七瀬さんは一つの箱を渡してきた。


「……なにこれ」

「まあまあ、開けてみなさいな」


 何が入ってるか分からないため、慎重に箱を開ける。すると中から出てきたのは、猫の模様が入った可愛らしい1つの腕時計だった。


「霞ちゃんも高校生になったし、腕時計の1つくらい持ってたほうがいいでしょ? 入学祝いってことで受け取ってちょうだい」


 さっそく腕に付けてみると、ちょうどいい具合にサイズが合った。


「可愛い……ありがとう、七瀬さん」

「似合ってるわよ〜霞ちゃん! あ、あとこれ彼用に渡しておいてほしいの」


 七瀬さんはもう一つ箱を渡してきた。彼というのは多分、黒峰霧矢のことで間違いないだろう。


「……七瀬さんが直接渡せばいいじゃん」

「わ〜すごい。『絶対に嫌』ってオーラがビシビシ伝わってくるわ〜」


 仕方ないと思う。だって本当に嫌なんだもん。そもそも七瀬さんがそこまでする必要は無いはず。


「……彼に、七瀬さんがそこまで気にかける必要ある?」

「ん〜……あると言えばあるし、無いと言えば無いかも?」

「……?」


 言ってる意味がよく分からない。


「そもそも黒峰くんを学園に誘ったのは私だから、その責任くらいは持たないといけないでしょ? でも黒峰くんの自由を尊重するなら、あまり私から執拗に関わらないほうがいいとは思うし」


 難しい話よね〜、と笑う七瀬さん。私は他人に対して関心がほとんど無いから、その気持ちを理解することは出来ない。けど、多分七瀬さんなりに色々と考えてはいるんだろうな……


「お二人とも、出来ましたよ」


 出来上がった料理をテーブルに並べながら、久遠さんが私たちを呼ぶ。


「やったー! 久遠のご飯だ〜!」

「楽しみ……」


 私たちは食卓に着き、手を合わせる。


『いただきます』


 そして今夜も久遠さんの料理にありつく。とりあえず、今は色々と考えなくていいかな……


 *   *   *


 翌朝。私は自室で制服に着替え、学校に行く準備をする。今日は確か教科書類が配布される日だから、少し大きめのバッグを持っていこう……


『ニャ~』


 アストラが私の足にすり寄ってくる。最近は甘えたがりなのか、よく私の部屋に入っては枕や服に自身の身体を擦りつける。多分マーキングのつもりなのだろう。


「アストラ。帰ってきたら遊ぼうね」

『ニャ~!』


 言ってることを理解したのか、アストラはゴロゴロと喉を鳴らしながらさらに頭を擦りつけてくる。そんなアストラを置いてくのは名残惜しいけど、それでも行かなければならない。


「いってきます」


 そうして私は家を出る。


 ⌘


 七瀬さんの家から出てしばらく、私は学園へ向かうために歩き続ける。私の通学路は割と人気が少ないから、ちょうどいい静けさの中で歩ける。

 スズメのさえずり、風で木の葉が揺れる音。

 そして……


『死ね!このクソガ……ギャアァァァァァァ!?』


 ……どこからともなく聞こえる怒号と絶叫。

 多分、声の源は近くの公園。試しに覗いて見ると、案の定そこで喧嘩沙汰が起きていた。


 地面には4、5人ほど大の男が倒れている。そして、その真ん中で立っている、おそらく喧嘩の発起人であろう見知った顔の男に後ろから近づく。


「……なにやってるの?」


 私は彼__黒峰霧矢の背後に立ち、そう問いかける。


「うおっ!? ……って、お前かよ。気配なく近づいてんじゃねぇよ」


 一瞬、体をビクッと震わせたかと思えば、私と気づくとすぐに地面に倒れる男たちに目を向ける。


「なにって、日銭稼ぎだよ。ぶっ飛ばした不良から金巻き上げても誰も文句言わねぇからな」


 んー……はっきり言ってバカなのだろうか。相手が相手だから理屈は分からなくもないけど、やってることは普通に犯罪だよね……


「……そんなにお金に困ってるの?」

「困ってるっつーか、そもそも俺家族に縁切られてるし中学も中退してるから、楽して金稼ぐんにはこれくらいしかねぇんだよ」


 普通に働こうよ。中学中退でも工事現場とかなら働けるでしょ。大の男数人相手を無傷で倒せるなら力仕事も余裕でしょ。

 そんなことを考えてるうちに、彼は抜き取ったお金をボケットに雑に入れ、側に放ってあった鞄を持って公園を出ようとする。


「どこ行くの?」

「あ? 学校に決まってんだろ」


 その言葉に私は少し驚いた。てっきり入学式以降はもう来ないものだと思ってたから。


「つか、お前がいんのにサボれるわけねぇだろ」

「…………ああ、そういうこと」


 つまり私が見てなければ来ないと。


「……なら、今ここで会えたのは運が良い」

「お前はそうだろうよ」


 ムスッとした顔で私を背に歩き始める。私もそれに着いてくように歩き始める。


 *   *   *


「……じゃあ、今日から始めようか」


 私は彼の自身の机を向かい合わせにし、座る。結局今日一日、今朝の喧嘩沙汰を除けば特にこれといって特別なことは起きなかった。なので今日から専属教師的なことをしようと思う

 私が彼のサポート役にされたときから決まっていたことだけど、これ以上に面倒くさいことなんて無いと思う。ただまあ、私としても彼を気にかけてて猫ちゃんたちに癒される時間が無くなるのは死活問題なのである。


「……アー、あれか。なんか勉強教えるってやつ」

「うん。でもどうせあなたは面倒だって言うでしょ」

「よく分かってんじゃねぇか」


 まだ出会って2日程度だけど、彼の性格や人柄はなんとなく理解できた。だからこそ私は言う。


「……だから、()()()()()()にも早く終わらせよう。私もあなたに時間取られたくないし」

「……珍しく本音が一致したな」

「……ね。自分でもびっくり」


 私はそう言って、すぐに今日配られた教科書類を開く。


「まずは数学。中一の応用でできる小テストを受けてもらう」

「へいへい……」


 彼は小テストを受け取り、持っていたボロボロのシャーペンを使って問題を解いていく。

 そして5分後、できた小テストを私は確認する。


「…………」


 結論から言うと、かなり酷かった。応用どころか、基礎もできてる部分が極端に少なすぎる。


「どうやって今まで生きてきたの……?」

「うっせぇな……理事長も言ってたろ。まともに授業受けれてねぇって」


 だとしてもこれはあまりにも……


「……本気でやらないと、これ駄目だね」


 そして始まる。お互いのための猛特訓が。この先私がいないと生きていけないとか、そんなことは絶対に言わせない……!

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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