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八 意味のない行動

超超超素人作品です。文法がおかしいところ多々あり。それでも良いよって方のみ閲覧お願いします。

『ウェーイ! 盛り上がってこうぜぇ!』


 陽気な声が室内に響き渡る。


「いいぞいいぞ! 佐渡ー!」

「かすみ〜、飲み物なに飲む〜?」

「りんごジュース……帰りたい……」


 放課後になり、クラスメイトと親しくなろうとかでカラオケに来ている。……強制的にだけど。

 時は遡り昼前……


 ⌘


「ねぇ黒峰くん。みんなでカラオケ行かん?」

「行かねぇ」


 その誘いをノータイムで断る。んなとこ行ってる暇ありゃ金でも稼ぐわ。


「即答ウケるw 行こうよ〜」

「行かねぇよ! こっちはさっさと帰りてぇんだ!」


 俺の袖を引っ張りながら、断られてなお誘い続ける天水。この頑固さ、金剛を思い出す……


「おい! こいつお前の知り合いかなんかなんだろ!? どうにかしろ!」


 俺は後ろで呆れたように額に手をつく琥珀朧に対して助けを求める。


「……諦めて。いくら言っても珊瑚は「はい」って言うまで誘い続けるよ……」


 入学早々、なぜこんな頑固な奴らに絡まれるのだろうか。初対面のくせして距離感のバグっている天水にかなり参っていた俺。

 するとその時、俺と天水の間に金剛が割って入る。


「まぁまぁ、天水さん。初対面でいきなり遊びに誘っても戸惑ってしまうだろ」

「あ、そっか〜。ごめんね、黒峰くん」


 金剛、実はめちゃくちゃいい奴なのか? こいつの一方的な友情だが、友達のために代わりに言いたいこと言ってくれるとは……

 初対面で馴れ馴れしいと言ったが、あれはちゃんと撤回しとこう。


「だから、まずは黒峰と友達になろう! 遊びの話はそれからだ!」

「そうじゃん! じゃあ黒峰くん、私と友達なろ?」


 撤回を撤回する。割って入って天水に指摘したと思えば、なんでそこから脳筋発想に移り変わるんだよ。あれか? 類は友を呼ぶ的なやつか?


「珊瑚。それはよくない……」

「え〜なんで? 霞も友達で金剛くんも友達なら、私が友達になってもよくない?」


 天水に俺と友達になることを否定したのは、意外にも琥珀朧だった。


「……彼は、平気で人に暴力を振るうから」

「テメェが言うか!? 俺に絡んできたチンピラ3人、ノリノリで蹴り倒してただろうが!!」

「アレはあなたのためじゃない。黒猫ちゃんのため」

「クソ生意気女が……! いい加減にしねぇとぶっ殺すぞ!?」

「ほら、すぐ手を出そうとする」


 呆れたような目で俺を見る琥珀朧。冗談抜きに本気で半殺しくらいにはしてやろうか……!


「まぁまぁ、黒峰くんも霞も落ち着き〜。一応ここ教室内だから」


 周りを見ると、クラスメイトの視線が俺らの方に向いているのが分かる。


「だからなんだ? んなもん気にしねぇぞ」

「私も別に。見られて困ること無い……」

「気にしよ? 入学初日からケンカ沙汰はやめたほうがいいよ?」

「ハハハッ! なんだ! 二人は案外仲いいんだな!」

「金剛くん、一回黙ろっか」


 「仲がいい」。おそらく「気にしない」という意見の一致が金剛にそう勘違いをさせたのだろう。琥珀朧もそう言われてひどく眉間にしわを寄せているし。こんな奴と仲がいいとか、


『(そ)んなわけねぇ(ない)』


 ハモった。ハモってしまった。


「な? 仲いいよな?」

「ねぇ〜」


 本気で鳥肌が立つ。こいつと仲いいなんて言われるくらいならゴキブリと仲いいと言われたほうがマシだ。


「ま、とりあえずカラオケ行こっか! 他にも何人か誘う予定だし」

「おい待て。勝手に行くことにすんな」

「まぁいいじゃないか霧矢! むしろカラオケを通して仲良くなれば問題なしだ!」

「大有りだわ。テメェはどっちの味方なんだよ」

「かすみも行こ〜ね〜」

「やだ。行きたくない……」


 そんな俺たちの願いは聞かれることなくカラオケに連行される。


 ⌘


 そして現在。カラオケの一室では他に誘われたクラスメイトの男子がノリノリで歌っている。俺は席の隅でただそれを眺め続けている。

 一方、初日に俺に絡んできた3人。金剛は歌うクラスメイトをマラカスで盛り上げ、天水もそれに乗じてタンバリンを使って場を盛り上げている。

 それから琥珀朧はというと、ずっとスマホをいじって何かを見ていて歌には全く興味を向けていない。


「……」


 不思議な女だ。今この瞬間だけを見れば無口で無表情で静かな女という印象だが、今朝のあの蹴り技の連発を見てしまった俺にはまったくの別人としか思えない。そもそもの話、あのほっそい身体のどこに、あんな力があるのだろうか。


(……あ、飲み物無くなった)


 新しく注いで来ようと席を立ち、部屋を出る。

 そしてドリンクバーのある場所まで行き、追加で炭酸水をコップに注ぐ。


「……なんで俺ここにいんだ」


 本来ならこの学園に入学することは無かった。そうなると東京に来る理由もなかったわけで、地元でいつものように茶原のとこで世話になりながら不良どもから金を巻き上げる。そんな日を毎日繰り返すだけが俺の日常となっていたのだ。

 このカラオケもそうだ。別に俺が行く必要は無かった。どうせ力であいつらに負けることはねぇし、無理やりにでも帰ればよかったんだ。

 ……そういえば、『願いを叶える』なんて大層なことをあのイカれ理事長は言っていたが、いま一度よく考えてみれば俺の願いも別に誰かに叶えてもらう必要は無かった。


 この学園に来る理由も必要も本当に無かったんだ。なのに……


「……なにやってんだ、俺」


 そんなことを考えているうちに炭酸水が注ぎ終わり、俺はコップを持って部屋に戻ろうとする。


「あれ、黒峰くんも来てたんだ」


 だがその時、偶然にもドリンクバーのとこに来た天水と鉢合う。


「……まぁ、な。もう注ぎ終わったから戻るが」

「そっか〜。あ、ならちょっと待ってて。せっかくだから一緒に戻ろ〜」


 そう言って天水はドリンクバーの前に立つ。ここで俺が待つ必要は無い。無いのだが……


(なんで律儀に待ってんだ俺は……)


 何故か離れてはいけないと、直感でそう感じ取ってしまった。天水は「どれにしようかな~」なんて言いながらドリンクバーのメニューを見つめている。

 この女は確か琥珀朧と仲がよかったはずだ。それも見た感じ、入学する前からの仲なのだろう。小中のどっちか、あるいはその両方が同じだったんか……?


「黒峰くんさ〜、かすみと仲いいよね」


 ふいに、天水がそんなことを言ってくる。


「まだ言うか。どこをどう見間違えたらそう見えるんだ」

「ん〜そうじゃなくて。なんか本質的にかすみと気が合う感じ? そんな感じのオーラが2人から出てる気がするんだよね〜」


 言ってる意味が分からず俺が困惑していると、天水は注ぎ終わったコップを持って俺の方へ振り向く。


「戻ろっか」

「え、あ、おう……」


 とりあえず言われるがままに付いていく。


「さっきの話だけどね、かすみは少し前に色々あった所為で感情のほとんどが表に出なくなってるの。厳密に言えば出てるんだけど、無表情が先に来てる所為で無感情に見えちゃうんだよね」

「感情……」


 いつも無表情だなとは思っていたが、そんな事情があったのか。声のトーンが変わらないのも、その影響なのかもしれん。


「だからびっくりしたんだ〜。あのかすみが黒峰くんに対してはホントに分かりやすく感情を表に出してるから」


 出してたか? 眉間にしわを寄せたり目を少し細めにしたりすることはあったが、言うてそれくらいだろ。なら普段はどんだけ分かりづらい顔してんだあいつは。


「……ねぇ、黒峰くん」


 天水が俺を呼ぶ。


「これからもかすみのこと気にかけてあげて。多分、私以外にちゃんと友達できたの黒峰くんぐらいだし」

「いやだから、俺とあいつを友達だと思ってんのお前らだけだって……」


 しかもどっちかっつーと琥珀朧が俺を気にかけてるし。理事長の頼み事(命令)で。


「ホントは私も黒峰くんと友達なりたいけど、黒峰くんが嫌なら無理言っちゃ駄目よね……」


 ションボリとする天水。なぜそんなに俺の友達になることにこだわるのか。


「……俺は友達になる気は無い」

「う……そっかぁ」

「……ただ」

「ん〜……?」


 少し言うのに躊躇ったが、どうせ今更だしと思い言う。


「……その、なんだ。お前が勝手に友達だと思うのは自由なんじゃねぇか? 金剛だってそうだし……」


 その言葉を聞いた天水は、俺から見てもほんとにいい笑顔を向けながら俺に飛びついてくる。


「ありがと〜みねっち! これからよろしくね〜!」

「ちょ、距離ちけぇ!! つかなんだみねっちって!?」

「友達だし親しみやすく呼びたいな〜って。黒峰くんだと他人行儀だし」


 俺はコップを慎重に持ちながら天水を引き剥がそうとする。


「じゃ、戻ろっか! みんな待ってるしね〜」

「ハァ…ハァ…やっと離れた……」


 そんなこんなで俺たちは部屋に戻る。結局、俺自身の理解不能な行動については未だに分かっていないが、とりあえず今はいいかなと、そう思うのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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