七 初めての友達
超超超素人作品です。文法がおかしいところ多々あり。それでも良いよって方のみ閲覧お願いします。
「さて、今日からお前らの担任になる風川玻璃だ。成績優秀、品行方正。どんな手を使ってでもお前らを模範生徒にしてやるからな。覚悟しろよ」
男勝りの口調でそう言う女教師、風川。ジャージ姿に竹刀とかいう、典型的な昭和教師の見た目をしているが、それ抜きなら割と美人である。
「特に! ルールも守らん問題児どもは徹底的にシバくからな!」
俺らの方を見ながらそんなことを言うもんだから、クラスメイトの数人がチラチラと俺らを見てくる。こっちはあの理事長に呼ばれてたから遅れたってのに、少しは漫才してくれねぇかね。
「文句なら理事長に言ってくれ。アレに拘束されてたんだから」
「あのイカれ理事長もそうだが、それを踏まえたうえでお前らにも非がある。第一! 遅れそうだと思ったんならせめて急いで来い!」
イカれ理事長は共通認識なのか? 自分の部下にまでひどい言われようだな、あの女。
「だがまあ、今日だけは許してやる。どうせこの後にやることなんぞ事前連絡の他に無いからな」
そう言うと風川は、プリントの山から数束を俺らに配る。
「そのプリント見ながら耳穴かっぽじってよく聞けよ」
そして話し始める。内容のほとんどは教科書配布のことだとか、年間行事予定のこととか、そんな感じの普通なものばっかだ。ただどういうわけか、年間行事予定の話だけバカ長い。あの理事長、たった1年の間に一体どんだけイベント詰め込んでんだ……?
「……とまあ、ざっとこんな感じか」
30分以上経ってようやく話し終わる。長すぎて途中から全く聞いてなかったんだが、まあなんとかなるだろ。
「取り敢えず、ホームルーム自体は終わりだ。あとはテキトーに自己紹介でもして級友の顔と名前くらいは覚えとけよ。私は理事長の説教に行ってくる」
それだけ言って風川は教室を出る。多分風川だな、入学式のあと理事長に大説教かました教師って。
『……とりあえず自己紹介する?』
クラスメイトの一人がそう言うと、周りもそれに同意するようにそれぞれ頷く。そしてじゃんけんによって廊下側の列の一番前の席から順にそれぞれ自己紹介をすることになった。
しばらく自己紹介が続く。大体はまず名前を言い、そして出身校、趣味や入りたい部活などを言う。そして自己紹介を終えた奴が10人を超えたあたりで、クラスメイトの中でもひときわ目立つ男が立ち上がる。
「俺は金鋼黒晴だ! 都内の公立中学出身で、運動部を掛け持ちしてた! だから体力や運動にはかなり自信があるそ! これから1年よろしくな!」
見た目は名前に反して銀髪に白色の目、だが中々に…いや、かなり元気で暑苦しそうな奴だ。できれば関わりたくない。
そして再び自己紹介が続く。このクラス、パッと見だけで30人弱はいるな……
「あ、次私の番だ~」
そんなことを考えてるうちに、次のクラスメイトが立つ。立ったのはピンク色の髪と少し着崩してある制服が特徴の小柄な女だ。
「ど~も~、天水珊瑚で~す。一応ギャルやってま~す。気分はマジ絶好調、趣味はネイルやおしゃカフェを回ること。みんなよろしくね~」
そんな感じでソイツの自己紹介が終わる。派手な爪、派手な髪色。俺が一番嫌いなタイプの一つだ。こいつともできれば関わりたくないな。
そんなこんなで半数以上が自己紹介を終えたが、そこで俺は空いてる席がちらほらと見えることに気づいた。2、3席くらいか? 入学初日から欠席とはたいした奴らだな。(※こいつも人のこと言えない。)
その後も淡々と自己紹介が続き、ようやく俺の番となった。席が窓側から2列目の一番後ろということもあり、順番が来るまでそこそこ時間がかかった。
俺はその場で立ち、そして自己紹介を始める。
「あー……黒峰霧矢。千葉から来た。趣味は……睡眠? とりあえずよろしく」
それだけ言って俺は座る。一部のクラスメイトが俺を不思議そうに見てくる。仕方ねぇだろ、他に言うことなかったんだから。
そして窓側の列の一番後ろ、つまりは俺の隣のソイツが最後となった。
「……琥珀朧 霞。好きなのは猫、趣味は猫カフェ巡り。よろしく……」
静かな声で自己紹介を終える。
そして教室内は次第にザワザワとしていき、いつの間にかグループが出来たりしていた。俺は騒がしい教室内をよそに、そのまま机に突っ伏して寝ようとした。
「かすみ~! ギュ~!」
「珊瑚、暑い……」
だが隣で突然いちゃつき始めた女二人のそばで寝れるはずもなく、俺は席を立ち廊下へ出ようとする。さっきの自己紹介で自身をギャルと名乗ったピンク髪の女……天水だっけか? 琥珀朧と随分と仲良さそうだが、ここに来る前から知り合ってたんか?
ま、あいつらがどんな関係だろうと俺の知ったことじゃねえし、俺がいてもお互いにうぜぇだけだろ。
「……あ、帰らないでね」
「帰らねぇよ。少しは信用しろや」
「逃げたくせに……」
「……チッ」
舌打ちだけし、その場を後にする。
「え、かすみ彼と知り合い?」
「……まぁ」
何か話声が聞こえてきたが、俺は気にせず廊下に出る。
⌘
「……広いな、ここ」
改めてこの学園の規模に少し驚く。たしか都内にこのレベルの学園があと3校あるんだっけ? 一体いくらかけたんだか、俺には想像もつかねぇな……
「……お、トイレ」
歩き回ってる途中、男子トイレを見つけた。好奇心で中に入ってみると、トイレとは到底思えないほどの装飾が施されていた。たかがトイレごときにここまで金をかけれるとは……
「ちょうどいいな。しばらくここで過ごすか」
さすがのアイツも男子トイレにまでは入ってこれまい。そう思いながら俺は個室のドアに寄りかかり、しばらく休憩をとる。
だが休憩に入ってすぐに、この男子トイレへ誰かが入ってきた。
「うおっ! すごいな! ここまで綺麗なトイレは見たことないぞ!」
入ってきたのは暑苦しい銀髪の男、金剛とやらだった。金剛はあまりにも派手に装飾を施されたトイレを目を輝かせながら見回し、やがて個室のドアに寄りかかる俺に気づく。
「お! 君は確か……同じクラスの黒峰くんだったか?」
気づいた瞬間、すぐに話しかけてきた。こいつの特徴に「馴れ馴れしい」も追加しとくか。
「……そうだが」
「やっぱりか! 俺は金剛黒晴だ!」
「知ってる。さっき自己紹介してたろ」
その言葉に途端に嬉しそうな顔をする金剛。名前を知られていただけでそこまで喜ぶか……?
「ならよかった! 中学までは俺の名前は覚えられないことが多かったからなぁ」
「あっそ」
知らんがな、お前の名前事情なんざ。
「ところで、黒峰くんはここで何を?」
すると金剛はいきなりそんなことを聞いてきた。
「騒がしい場所が苦手なもんでな。それにここならアレの邪魔も入らん」
「アレ…? まあとにかく、落ち着くってことだな」
「そんなとこだ」
会話が途切れ、沈黙が流れる。金剛はまだ興奮が冷めてねぇのか、トイレ内をキョロキョロと見回している。
「……なぁ、黒峰くん。失礼を承知で君に1つ聞きたいことがあるんだが、いいか?」
すると突然、金剛が俺にそう問いかけてきた。
「聞きたいこと? ……なんだ?」
「いや、俺の記憶違いだったら本当に申し訳ないんだがな
____君は、『廃工場集団暴虐事件』で捕まってた少年じゃないか?」
一瞬、思考が停止する。だがすぐに我に返り、目を見開きながら金剛を見る。
「その、な? ずいぶん前に話題になったニュースだったからずっと覚えていたんだ。その時捕まった容疑者の少年の名前が君と同じだった気がして……!」
途端に口を噤む金剛。おそらく俺の今の顔を見てそうするべきだと判断したのだろう。
「……だったらなんだ? 俺をサツにでも引き渡す気か?」
金剛はかなり筋肉質な身体をしているが、一目見て喧嘩慣れしていないことが分かる。たとえ俺を捕まえようと掴みかかったとて、俺が負けることはないだろう。なんなら返り討ちにすら出来る。
「いや待て違う! 気分を害したのなら謝る! ごめんな! ただ確証を得たかっただけなんだ!!」
金剛は本気で焦っていた。まるで俺に襲われることを恐れるかのように。
「……なんのために?」
「……もし君に会えたら、一度話をしたいと思っていたんだ。テレビで少し顔を見ただけだが、それでも君が本気でやったとは思えなかったんだ」
あまりにも意味不明なことを言う金剛。
「勝手なこと言いやがって、なんでそう思える」
「目を見ればわかる。確かに君は荒んだ目をしているが、同時に悲しみの感情もこもってる。これは単なる推測だが、なにかしらの事情でそうせざるをえなかったのだろう」
そう言うと金剛は俺に近づき、片手を俺の方へと差し出す。
「黒峰、俺と友達にならないか?」
唐突な誘いに思わず動揺してしまった。
「はぁ!? なんで俺がお前と!?」
「なに、単純に友達になりたいからだ! 相手を知るにはまず相手と親しくなるところから始めなければならないしな!」
「嫌に決まってんだろ!!」
「もちろん、嫌ならそれでいい。友達になれるよう努力するだけだからな」
そんなまっすぐな笑顔を向けてくる金剛。俺は知っている。この手のタイプは何言っても無駄だということを……
「……チッ、ああもう! 勝手にしろ!」
「よし! ならこれからよろしくな!霧矢!」
そう言って無理やり俺の手を取り握手をする。この先こんな暑苦しい奴に絡まれることになると考えると気が気でない……
* * *
そんなこんなでまた教室に向かう。あれから終始俺に話しかけてはほとんど自己完結させて話を終わらせるの繰り返し。こっちが無視してるからなのだろうが、それなにが楽しいんだ……?
そうこうしてるうちに教室に着き、ドアを開ける。すると中に入った途端、誰かとぶつかる。
「うおっ」
「わ」
ぶつかってきたのは見たことのあるピンク髪の女だった。
「……天水?」
「あ、黒峰くん。ちょうどよかった。今探しに行こうとしてたんだよね〜」
なんだろう、すでに嫌な予感しかしない。後ろにいる琥珀朧に目を向けると、額に手を当て項垂れている。
「……お前も俺になんか用あんのかよ」
「あるよ〜。ねぇ黒峰くん」
天水は上目遣いで俺を見つめて言う。
「このあとみんなでカラオケ行かん?」
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