五 入学式
超超超素人作品です。文法がおかしいところ多々あり。それでも良いよって方のみ閲覧お願いします。
「俺と……同じ?」
その女、琥珀朧霞はそれだけ言うと、再び黒猫の方に向き直る。
『ニャ~』
「にゃー……煮干し食べる?」
するとどこからか大量の煮干しが入った袋を取り出す。その中から煮干しを一掴みし、それを黒猫の前に出す。
「お食べ」
『ニャ~!』
勢いよく食べ始め、そして間食したと同時にどこかへと去ってしまう。腹減ってたんか、あの猫……
「……じゃ、行くよ」
そう言うとそいつは突然俺の腕をつかみ、引っ張ってどこかへ連れていこうとする。
「おい待て離せ! どこに連れてく気だ!」
俺がそう叫ぶと、そいつはこちらを振り返り、言う。
「……学校、道わかんないでしょ。理事長が『道教えるの忘れてた! てへ☆』って言ってたから、代わりに私が連れてくことになった」
「じゃあ最初にそう言え! あと引っ張んなくていい! 自分で歩けるわ!」
そう叫ぶとそいつは渋々手を離した。こいつもあの理事長のこと知ってんのか。まあそりゃそうだよな……
「……じゃあ、付いてきて。はぐれたら置いていく」
「はぐれねぇわ。ガキじゃねぇんだからよ」
「子供のくせに……」
「あぁ!?」
そんなこんなで、同行者一名とともに学園へ向かうこととなった。
⌘
再び歩き始めてどのくらい経ったかは分からんが、ようやく学園の門らしきとこに着いた。着いたはいいんだが……
「なんで屋台が並んでんだよ!?」
門を越えると、そこでは謎の祭りが行われていた。そういえばさっき、門の前に立て掛けてあった看板に『入学祭』って書いてあった気が……
「これがこの学園の定例行事。なんかお祝いごとやイベントごとがあると、決まって祭りを起こすの」
「この学園には頭のネジが外れた奴しかいねぇのか!!」
どうせあの理事長が発案でもしたんだろうが! そんでよくそれに乗っかったな! ここの生徒は!
「私は慣れてるけど、他の新入生はみんな戸惑ってるみたい……」
よく見ると、祭りの中にはバカ騒ぎする奴もいれば、何が起きてるのか全く分かっていないという顔をして立ち尽くす奴がチラホラと見える。多分、そういう奴らが新入生なんだろうな……
「焼きそば、お好み焼き……側から見りゃあマジの祭りじゃねぇか……」
そう言ってアイツの方に目を向けるが、学園内に紛れ込んだであろう野良猫と戯れていた。
「にゃー」
『ニャ〜!』
「ニャーじゃねぇよ!! なんで少し目を離した隙にまた猫と戯れてんだ!!」
俺がそう叫ぶと、それに驚いたのか、野良猫はどこかへと逃げていった。
「……可哀想に」
俺を軽く睨みながら立ち上がり、スカートを軽くはたく。
「猫と戯れあってねぇで、とっとと案内しろ」
「……今、あなたへの好感度が急激に下がった」
「あっそ。どうせ元から低かったろ」
「うん。マイナス100からマイナス900くらい下がった」
「元から0以下かよ!」
無駄に言い合っていると、恐らく生徒玄関であろう出入り口から見知った顔が現れる。
「……ん? もう仲良くなったのか?」
その男は久遠天青。この学園の理事長であるあの女の秘書だ。久遠は俺たちの顔を見比べたあと、俺の方に妙な笑みを向けて言う。
「なんだ、変にその子に手ェ出してたら懲らしめてやろうと思ってたのに……初日で随分と仲良くなったみたいだね」
「こいつのこの冷めた顔が見えねぇのか?」
「……久遠さん、目、大丈夫?」
「ひどい言われようだな」
そう言うと秘書は手に持ってたわたあめと焼き鳥を俺たちに渡してきた。
「はい。今日ぐらいは好きな物食べな」
俺は焼き鳥を受け取り、しばらく見つめてから一口食べてみた。
「……無駄に美味いの腹立つな」
「誉め言葉として受け取っておくよ。これでもみんな、春休みの間にずっと練習してたからね」
隣の女はわたあめに夢中で、こっちに見向きすらしない。顔は相変わらず無表情だが、頬にはほんのわずかに赤くなっている。
「……で、お前は何しに来たんだよ」
この祭りの風景を眺めている秘書に俺は問う。
「ああ、そうそう。二人に理事長からの伝言を届けに来たんだった」
その言葉に反応し、さっきまでわたあめを食っていた女がこちらに目線を向ける。俺はあの理事長の伝言に身構える。
「『入学式終了後に理事長室に来るように』だそうだ。なにやら話さなきゃいけないことがあるらしい」
もうその時点で嫌な予感しかしねぇのよ。アレの頭がもう少しまともならまだ五分五分だったんだがな……
「……分かった。ちゃんと連れてく」
「お願いしますね、か…琥珀朧さん。どうせ入学式が終わったあと逃げるつもりだったのでしょうし」
「ん……」
「おいテメェら。本人よそに勝手なこと言ってんじゃねぇぞ」
……まあ、逃げようとしてたのは事実だが。つーかなんで見透かされてんだよ!
「じゃ、そろそろ体育館に行ってきなさい。あと20分くらいで開式するだろうし」
「ん、分かった」
そう言うと女は俺の手を再び引っ張って体育館まで連れてこうとする。
「だから自分で歩けるわ!! テメェは案内だけしろ!!」
「……逃げないでね?」
「…………………………逃げねぇよ」
「間が多い。信じない」
そう言って再び引っ張りだす。
「分かった! 分かったから! 逃げねぇから離せ!」
そう言うとパッと手を離し、そしてそのまま歩き出す。
「……最初からそう言えばいいのに」
「聞こえてんぞ」
* * *
そんなこんなで体育館らしき場所に着く。体育館内はすでに大勢の生徒と教師でいっぱいになっていた。
「間に合った……」
「だな。今の時間知らんけど」
そして俺は前を歩くソイツに案内されながら空いてる席へと向かい、そして座る。
(……結構いるな)
恐らく今ここにいる生徒は皆新入生なのだろう。この中に俺や隣のコイツのような特別枠とやらでの入学者が、少なくともあと7人はいるのか……
『静粛に』
そうしてしばらくすると、その声とともに体育館内が静かになる。そして起立の合図とともに俺たちは立ち、壇上のど真ん中に立つ理事長に注目する。
「……ええ、新入生の皆さん、そして保護者の皆様。本日は本校、私立清瀧学園への入学、誠におめでとうございます」
意外にも真面目な挨拶から始まる。あんなまともに挨拶できたんか……
「……理事長、ああ見えてやる時はちゃんとやる人だから」
隣で琥珀朧がコソッと俺に言う。ならいつも真面目にやれよ。
「……さて、本日の式典にて私が伝えたいことはただ一つ」
その言葉とともに、再び理事長へと視線が集まる。
「一つ、『自由に生きなさい』。あなたたちにはその資格がある」
あまりピンとこなかったのか、それとも意外にもシンプルな言葉で驚いたのか、体育館は物音一つせずしんとしていた。
「私が思うに、この世に本当の意味での自由は存在しない。法律しかり刑事法しかり……この世には守らなければならないことが無数に存在する。
__けれどそれは、決してあなたたちの自由を縛る為のものではありません。自由を得るためには、社会のルールを守ることを前提とする、それ相応の自立精神を必要とします。学校はその自立のしかたを教える場所なのです」
ところどころ、すすり泣く声が聞こえる。一方、俺には全く響いてない。自分が自由であると認識できたことなど、あの日以来一度も無い。
「もちろん、社会のルールに従って生きる選択をするのも、また一つの自由の形です。この学園ではあなた達の、自分だけの自由の形を見つけてほしい。それがどんな形であろうと、それを行使する権利はあなた達にあり、そして……その自由を正しい道へと導く義務が、私たち教員にはある」
すすり泣く声が次第に増えていく。こんなことに感動する気持ちが本当に分からん。
……ただなんだ、入学式で祭り開くレベルのヤベェ奴かと思ってたが、案外色々考えてんだな。
「この学園での経験を糧とし、日本の未来を明るくしてください。以上、理事長式辞」
拍手と歓声が体育館内を響かせる。……拍手くらいはしてやるか。
「……はい! しんみりタイムは終わり! このあともまだ入学祭は続くから、みんな楽しんでね〜! 後夜祭もあるからそっちも出たい人は出ていいわよ〜! もちろん保護者の皆様も! 子供のうちに出来ることは全力で楽しみなさい! 以上! 入学式終わり! 解散!」
そう言うとどこかへ去ってしまった理事長。周りの教員らしい奴らも予想外とでも言わんばかりに顔を歪めてる。
「……少しでもまともと思った俺がバカだった」
「あの人をまともと思ったら終わりだと思うよ」
最後まで読んでいただきありがとうございます。




