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十四 生き様

超超超素人作品です。文法がおかしいところ多々あり。それでも良いよって方のみ閲覧お願いします。

「紅茶とコーヒーあるけど、どっち飲む?」

「……」

「前にお父様が貰ってきたイギリス産のクッキーがあったわね。食べる?」

「……」

「そうそう、アロマも焚こうかしら。何が残ってたってけ……」

「……」


 ウキウキとティーカップやらなんやらを準備する生徒会長。俺は教室にあった椅子に座らされ、そのまま身動きできずにいた。


「霧矢君は甘いほうがいい? ミルクいる?」

「……いや、別に」


 すでに授業は始まっているが、何故かこの生徒会長は気にせず紅茶や菓子を机に並べていく。

 というか俺もコイツも、なんで授業サボってまで仲良くお茶会始めようとしてんの? いや別に仲良くはねぇけど。


「……なぁ、教室戻らせろよ」

「やーだ。話がしたいって言ったでしょ」

「俺はしたくねぇ」

「残念ながら拒否権なしでーす」


 ……コイツこんな子供っぽかったか? なんつーか、余裕のある女みたいな雰囲気だったけど……


「君は嬉しくないの? 自分で言うけど、私学園内ではかなり顔がいい方ではあるんだよ?」

「だからなんだ。そもそも俺はお前みたいな女が一番嫌いだ」

「……多分、学園内で一番頭いいよ?」

「どこで勝負しようとしてんだよ。微塵も興味無ぇわ」


 「えー」とふてくされながら紅茶をカップに注ぐ生徒会長。俺紅茶がいいなんて言ってねぇんだが。まず飲むとも言ってねぇし。


 俺は室内をキョロキョロと見回す。壁には何枚もの表彰状が立てかけてあり、横にある棚にはファイルが並んでいたり大小様々なトロフィーが並んでいたりする。


(……色々あんな)


 無駄に首を動かしていると、目の前に紅茶の入ったカップが置かれる。


「気になる?」


 生徒会長は俺の向かい側に座り、微笑みながらそう聞いてくる。


「……別に。ちゃんと優等生なんだなと」

「そりゃあ生徒会長ですから。生徒の模範となる人間にならないと」

「ふーん……アンタも大変だな」


 俺が紅茶を飲み始めると、生徒会長は途端に真顔でジッとこちらを見つめてくる。


「……なんだよ」

「霧矢君って、名前覚えるの苦手?」


 不思議そうに聞いてくる生徒会長。名前で呼ばないことがそんなに変か……?


「名前で呼び合うほど親しくねぇだろ」

「いやそうじゃなくて、いつも『アンタ』としか呼ばれたことないから、名前忘れちゃったのかなぁって」

「……呼ぶ必要あるか?」

「私は呼んでほしいなぁ」


 犬みたいに尻尾を振る(幻覚)生徒会長。そんな呼んでほしいのかよ。


「アンタ本当にお嬢様か? あんま上品さ感じねぇんだけど」

「そう? まあ私家出してる身だしね〜」

「……は?」


 さらっととんでもない爆弾発言をする生徒会長。だというのに当の本人は平然と紅茶を飲んでいる。


「家出ってどういうことだよ。つか両親とは普通に話す仲なんじゃねぇの?」


 俺がそう聞くと、生徒会長はニヤニヤとしながら聞き返してくる。


「興味ある? 聞きたい?」

「他人のお家事情ほどどうでもいいものってあんのかな」

「OK、聞かせてあげよう。私の苦労を……!」

「耳聞こえてないんか?」


 俺の意思を無視して自分語りを始める生徒会長。下手に聞かなきゃ良かった……


 話によれば、コイツの家……斬華神財閥とやらは代々生まれてくる自分の子供に会社を継がせているらしい。基本的には長男が継ぐらしいけど、あとから生まれた末っ子の生徒会長の方が出来が何倍も良かったらしく、次期会長候補として日々教育されてきたという。

 しかし、当の本人は家業に微塵も興味なく、将来は海外の大学を転々としながら色んな研究をしたいそうだ。なんだその変態的思考は。

 そんなんだから父親とは絶賛喧嘩中。けど母親との仲は悪いわけじゃなく、今も普通に連絡を取り合っているらしい。家出というのも母親が買ってくれたマンションの一室を使って生活してるだけだという。


「……わっかんねぇな」


 その一言に首を傾げる生徒会長。俺は手元の菓子を食いながら言葉を続ける。


「アンタの家が何やってんのかはよく分かんねえけど、親の言う通りにすれば何一つ不自由なく生活できるわけだろ。それを捨ててまで夢に没頭する理由があんのか?」


 一瞬、驚いたような表情をする生徒会長。しかしすぐにいつもの笑顔に戻し、口を開く。


「……君は、夢を捨ててまで楽な道を歩きたいと思うの?」

「下手に苦しんで死ぬよか100億倍マシだ。決まった道があるなら素直にそれに従うべきだと、俺は思うね」


 ……夢を追っても良いことなんて無い。それがどんな些細なことであったとしてもだ。


「君の過去に何があったか知らないけど、あまり人の生き方にケチをつけないほうがいいよ」


 そう言うと生徒会長は紅茶を飲み干し、そして席を立つ。


「霧矢くん、屋上にはもう行った?」


 席を立ってすぐに、俺にそんなことを聞いてきた。


「行ってねぇけど……」

「じゃ、行こっか!」


 俺の手を引っ張って勢いよく教室を出る。


「ちょ、おい!」


 俺の声を無視して廊下を走る生徒会長。さっきから一体何がしたいんだ……!


 ⌘


「着いたわよ」


 屋上のドア前まで来て、ようやく俺の手が解放される。


「……屋上になんかあんのかよ」

「まあまあ、見てからのお楽しみってことで」


 そう言うと生徒会長はどこからか鍵を取り出し、慣れた手つきでドアを開ける。


「……!」

「どう? すごいでしょ」


 ドアが開かれ、屋上の景色が目に入る。

 青みがかった緑色の柵とタイルの地面。だがこのごく普通の屋上を絶景たらしめてるのが、屋上の中心に1本だけ立つ桜の木だ。


「デケェ……」


 屋上に立つにはあまりにも大きすぎる。5mは超えてんじゃねぇのか?


「シキオリグサの樹。一年中、枯れることなく春夏秋冬様々な草花を咲かせる不死身の樹。今は4月だから桜が咲いてるわね」


 なんだその小説とか漫画でしか出てこない謎植物は。……小説か。


「……じゃあ、10月とかだとコレが紅葉で溢れるんか?」

「そうそう。四季折々の草花を咲かせるから、『四季折草(しきおりぐさ)』」


 生徒会長は樹に向かって真っすぐ進み、そしてクルッとこちらに振り向く。


「そして花言葉は……『届く想い』。この花言葉を信じてこの樹の前で告白する人が後を絶たないんだけど、どういうわけか100%以上の確率で成功してるらしいのよ」


 目の前で告白すると100パー成功する樹、ねぇ……


「じゃあなんだ? 俺をここに連れてきたのも告白するためか?」

「まさか。霧矢君タイプじゃないし」

「ならよかった」


 若干ムッと不満げな表情をした気がした。が、何事もなかったかのように普段の冷静な顔に戻った。


「私か君と話したいのは、霞さんのこと」

「……琥珀朧のこと?」


 ここに来てなぜアイツの名前が出てくるんだ。


「理事長から聞いたよ。君が学園で過ごすためのサポートを霞さんがしてるって」

「あー……」


 まあ、間違ってはいない。俺が他の特別枠の推薦者と関わるためのサポートがメインだけど。


「君と霞さんの学園生活がどんな感じかはあまり分かってないけど、少しは霞さんの話もちゃんと聞きなさい」

「……は?」


 全くもって意味がわからん。なんでコイツにそんなことを言われなきゃいけないんだ。


「……アンタにとって、アイツはなんなんだよ」


 俺は吹き出そうになる怒りを抑えながら、彼女にそう問う。


「……あの子は、私にとって妹みたいな子なの。君は知らないだろうけど、あの子の()()はあまりにも悲惨すぎるのよ」


 過去。それはアイツの“傷”にも関係してるんだよな……?


「だから私は、霞さんが不幸になることも、霞さんを不幸にする奴も許さない。……だから君に警告してるのよ」


 会長は、これまで以上の冷たい視線を向けながら言う。




「__あの子を傷つけたら、容赦しないから」




 凍りつくように身体が固まる。そんな俺を見て満足したのか、会長は何も言わずに屋上を去った。


「……クソが」


 風の音だけが響く屋上で、俺は一人そう零すのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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