十ニ 救出作戦
超超超素人作品です。文法がおかしいところ多々あり。それでも良いよって方のみ閲覧お願いします。
私はあまりに壮絶なその景色に、言葉を失っていた。
数十人以上の大の男たちを笑いながら相手取るその姿は、言うまでもなく狂気に満ち溢れていた。
まさに阿鼻叫喚と化したその光景に目を奪われていると、背後から近寄ってくる人の気配を感じた。
「……誰!?」
慌てて首を後ろに向けると、そこにいたのは1人の少女だった。
「大丈夫です。今解きますね」
静かな声でそう言い、私の拘束を解こうと縄に手をかける。
よく見ると、その少女は私のよく知る人物だった。
「あなた、霞さん?」
「ん。お久しぶりです」
今年清瀧に入学するとは聞いていたけれど、だとしたらなぜこんな所に……?
「なんでここにいるのですか!? ……まさか!」
私の言いたいことを察したのか、霞さんはそれを否定するように首を横に振る。
「ここ来たのは私の意思です。……アレは役に立つと思ってついでに連れてきただけ」
「……あなたは、彼のことを知っているの?」
そう聞くと、霞さんは少し嫌そうな顔をして言った。
「…………一応、私と同じ境遇」
その言葉を聞いてすべてを察した。だとすれば、おそらく彼も壮絶な過去を歩んできたのだろう……
『ひぃっ!? な、なんなんだよテメェは!?』
そんな声が響き、私たちは乱闘の起きていた入り口付近に目を向ける。
見ると大勢の男たちが地面に倒れ込んでおり、残すはあと一人となっていた。
「知る必要ねぇよ。どうせ後にも先にも、お前らと殴り合うのはこの一度きりなんだからな」
それだけ言うと、その場に座り込む残った一人の男を蹴り上げる。男が倒れ、ようやく乱闘は終わりを迎えた。
「……おつかれ」
「『おつかれ』じゃねぇわ! 俺にだけ働かせやがってよ!」
「……だって、私がやるよりあなたがやった方が確実だったから」
「入学初日に蹴り技連発してた奴とは思えねぇ発言だな!」
私は縄で圧迫されていた部分をさすりながら二人の口論を眺める。……というか霞さん、また喧嘩したんだ。
「……ねぇ」
私は椅子から立ち上がり、襟や裾を正しながら後輩君に話しかける。
「……あ? なんだよ」
後輩君は面倒そうに顔をしかめながらこちらを睨む。あまり言いたくはないけど、こんな子が霞さんと友達ってのはちょっと、いやかなり心配だ。
「とりあえず助けてくれたことは感謝するわ。ありがとう」
「俺じゃなくて琥珀朧、そこの女に言え。俺は連れてこられただけだ」
ぶっきらぼうにそう言い放つ後輩君。
「つーかアンタ、いいとこのお嬢様なんだろ? なんであんな商店街でほっつき歩いてたんだ?」
『……一応、先輩なんだけど』という私の心の声を代弁するかのように、霞さんが後輩君の脇腹を思いっきり肘でどつく。
「痛ぇ! なにすんだ!!」
「相手は先輩。敬語くらいちゃんと使って」
今にも霞さんに殴りかかりそうな後輩君だったが、すぐにそれを抑え込むように大きく息を吐く。
私はニ人を眺めながら、思わずクスッと笑ってしまった。
「……なんだよ」
「いや、ニ人とも随分と仲いいんだなぁって」
そう言うと二人は本当に嫌そうに、特に霞さんに関しては普段よりも分かりやすく嫌そうな顔をする。
「どこをどう見たらそうなるんだ」
「先輩、流石に冗談がすぎます……」
「そんなガチトーンで否定しなくても……」
とはいえ、二人揃ってまったく同じ反応するあたり、全然仲良くないってわけでもなさそうね……
⌘
目の前でクスクスと笑いながら、スマホで何かを確認する素振りを見せる。これが清瀧学園の生徒会長……
(……なんか、生徒会長でいいとこのお嬢様ってわりには、妙に抜けてんな)
そんなことを考える俺をよそに、生徒会長はどこかへと電話をかける。
「もしもし、私だけど。……ええ、問題無いわ。ちょっと寄り道しちゃっただけだから」
俺たちを他所に淡々と電話の相手と話し始める生徒会長。……確か大企業の令嬢とか言ってたし、従者とか親とか、話し相手の候補はその辺りか……?
「心配しなくても大丈夫。ちゃんと一人で帰れるから。……うん……うん……わかった。じゃ、またあとで」
そう言うと電話を終え、こちらに向き直る。
「改めて、本当にありがとう。霞さんと、えっと……」
「……霧矢だ。黒峰霧矢」
そう言うと、生徒会長は『ああそう』と納得したかのような表情を浮かべる。
「霧矢君ね。……君、どこかで会ったことあるっけ?」
多分、中庭でのことだろう。あの時はすれ違いざまに一瞬目があっただけで、俺もたった今顔を見ても顔も名前も思い出せなかったし。
ていうか、まさかあの一瞬で俺の姿をある程度記憶できたのか? この生徒会長は。
「……今日が初めてだと思うが」
「あらそう? 記憶力は良い方だとは思ってるんだけど……貴方がそう言うなら、今回は私の勘違いね」
あっさりと自身の間違いだったと結論づけてしまった。それでいいのか生徒会長。
「お互いに色々と聞きたいこととか話したいこととかあるかもしれないけど、今日はもう遅いし帰りましょ」
それだけ言って、生徒会長はさっさと倉庫から出る。なぜに早足だったのかは分からんが、その日は俺たちもその場で解散した。
* * *
翌朝、俺は制服を着て通学路を歩く。……ホントになんで律儀に通ってるんだ俺は。
「おはよう」
「うおっ!?」
背後から琥珀朧が気配なく現れる。声かけるのはいいんだが気配を消して近づくのはやめてほしい。普通に心臓に悪い。
「……返事は?」
「は?」
俺が心臓の躍動を抑えていると、突然琥珀朧がそんなことを聞いてくる。
「返事ってなんだよ」
「……朝の挨拶ぐらいはちゃんとして。常識」
「んなもんどうでもいいわ。母親みてぇなこと言うな」
そう言うと琥珀朧はムスッとしてジト目でこちらを睨んだきたが、
「……じゃあいい」
そう言ってそっぽを向いて、そのまま俺の前を歩く。これ以上言っても無駄だと思ったのだろう。こちらとしても無視してくれた方が助かる。
……やけにあっさりしすぎてる気もするが。
⌘
『おーっす!』
『おはよ~』
教室に来ると、中ではクラスメイトたちの朝の挨拶や会話で賑わっている。それを横目にも見ずに、俺はさっさと席に着く。
琥珀朧も隣の席に座り、スマホの画面を眺め始める。チラッと画面が見えたが、どうやら何か猫関連の動画を見ているみたいだ。
まあそんなのには全く興味が無い。そして俺は惰眠を貪ろうとうする。
ピンポンパンポーン……
『1年A組、黒峰霧矢、琥珀朧霞。至急、理事長室まで来てください。繰り返します……』
そんな放送が繰り返し流れる。
けれども俺はそんなことを気にせず、再び眠りにつこうとする。
「ほら、早く行くよ」
……うん、まあ、知ってたけどね。どうせコイツに無理やり連れてかれるって。
完全に諦めの態勢に入った俺を引きずりながら琥珀朧は教室を出る。クラスメイトの連中が変なものを見るように俺たちを見ていたが、もうそんなことすら気にならない。
⌘
理事長室に着くと、そこにいたのは毎度おなじみイカれ理事長とその秘書。
……そして、いつかの生徒会長だった。
「今なにか失礼なこと考えなかったかしら?」
「ハハ、気のせいですよ」
「……まあいいわ。それより、朝から呼び出してごめんなさいね。昨日の件でちょっとお願いしたいことがあるの」
……まあ、絶対その件だろうなとは思ったよ。だって入った瞬間、すぐに生徒会長が目に入ったもん。
「二人ともごめんね。昨日のことを両親に話したら、ものすごい勢いで理事長先生にクレーム入れちゃって……」
何してくれんねんこの生徒会長は。わざわざ面倒事増やすようなことすんな。
「それで、親御さんから一週間以内に事を収めろって言われちゃってね。さっき斬華神さんから詳しい事情を聞いたら、二人に助けられたって」
俺は苦い顔をする。間違いではないが、だからといって今この場に呼ばれる筋合いはないし、何より昨日の一番の功労者はどう考えても俺だろ。いまだに納得できんのだが。
「そこで! 約二名ほど、斬華神さんにボディーガードを付けようと思ったのよ!」
そこまで言われて俺はようやく察した。琥珀朧も察したらしく、俺と同じく嫌そうな顔をする。
「というわけで! 二人には一週間、ボディーガードとして斬華神さんを守ってもらいます!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。