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従姉のヘアピン

作者: 時峰 鈴

わたし、山里美代子。どこにでもいるようなごく普通の小学6年生。

わたしには、兄弟姉妹がいないんだけど、お姉さんみたいな人はいる。

従姉の竹山麗亜、中学1年生だ。わたしは普段、れいって呼んでいる。

れいの家は大金持ちで、本人も頭が良くて、スポーツ万能で、でも、勉強だけじゃなく、周りの人ともよく遊ぶ…そんな人。

当然ながら、いろんな人に慕われている。

あと、れいのお母さん…つまり、わたしの叔母さんは、道子っていって、わたしのお母さん、山里 優子のお姉さん。


そうそう…。れいは、いつも同じピンをしている。

四つ葉のクローバーの飾りのついた、銀色のヘアピン。

あのピンがれいのトレードマークみたいなものなんだ。



ある日…

家に電話がかかってきた。

お母さんが出て、何か話している。

どうってことない普通の風景。

でも、話していくうちに、お母さんの顔が青ざめていく…。

そして、お母さんは電話を切ってこういった。

「麗亜ちゃんが亡くなったそうよ。」

その瞬間、時間が止まったような気がした。

だって、れいはわたしの兄弟みたいなものだったのよ!

なんで…?

すると、お母さんがわたしの思ったことが分かったみたいに

「自殺ですって。」

とつぶやいた。

自殺!?れいが?なんで?なんでそんなことしちゃったの?れい??

わたしは、心に穴があいたような気がした。

暗く、底の見えない穴が…


3日後…

わたしは今、れいの家にいる。

れいが書いた、遺書が見つかったんだ。

遺書は、白い封筒の中にはいっていた。

そして、その封筒の中には、れいのヘアピンが入っていたんだ。

四つ葉のクローバーのついた、銀色のヘアピンが…

遺書には、そのヘアピンは美代子にあげるって書いてあったの!

わたしはそのヘアピンを大切に使うことにした。



それから、1年ほどして…

わたしは今日、友達と遊園地に行く。

駅に待ち合わせなんだけど…

とっても楽しみだったから、昨日はすぐには眠れなかったの。

それで結局寝坊しちゃったから急がないと!!

点滅している青信号をダッシュで走る。

あっ…!

あのヘアピンがないっ!

その時、横断歩道の上で、銀色のものが光った。

信号はもう赤、だけどっ!

わたしは、思わず飛び出していた。

そして、ヘアピンを手に握る…

わたしの意識はそこまでだった。



わたしは、森の中を歩いている…

なんでだろう??

足が勝手に動いていく。

どこに行こうとしているんだろう…?

分からない…

ぼ~っとあるいていたら、見慣れた人影を見た。

れいだ…!姿がぼんやりと見える!

「わたしは…もう、死んでいるのに…。こんなことしてまで、守らなくても、よかったのに…」

かすかな声…でも、れいの声だ。

わたしは思わず答えていた。

「わたしが、落としちゃったのよ!これはれいの思いが詰まってる気がして…」

れいがおどろいたように振り向いた。

「美代子?」

「うん。」

「わたしの声、聞こえるの?」

「うん。聞こえる。」

「わたしの姿は?もしかして、見えるの?」

「ぼんやりとなら…」

れいはためいきをついた。

「よかった。はっきりと見えなくて…」

「なんで?」

「はっきりと見えるってことは、死んでるってことだもの。」

「えっ…!」

「わたしの…力を…あげる…戻って…っ!」

ふっ…

れいの姿が次第に見えなくなっていく…

そして、声も…

「生きて…幸せに…なって…わたしのぶんも…」



「ハッ!!」

ここ、どこ?

「あ、美代子!気がついたのね!!あなたが死ぬかもしれないってお医者様に言われて…それに、あなた、1週間も寝てたのよ!親に心配をかけさせて…」

お母さんだ。

目が真っ赤で、頬には涙の跡がある。

お母さんの隣には、道子叔母さんが座っている。

やはり、泣いたのだろう。目が赤い。

起き上がろうとすると、お母さんに

「まだ、寝てなさい。」

と言われた。

そして、医者を呼びに行った。

医者はしきりに首をかしげながら

「このまま目覚めなくてもおかしくはないと思っていたが…。なぜじゃろうな…。でも、まだ傷が治っていないから退院は出来んぞ。といっても、この分だとあさってには退院できるじゃろう。」

と、言って戻っていった。


退院した、次の土曜日、わたしはれいのお墓参りに行った。

花束と、あのヘアピンと、スコップを持って…。

花を花たてにさして、手を合わせる。

そして、スコップで穴をほりその中に、クローバーの飾りのついた銀色のヘアピンを埋める。

心の中で、

「れい、これからはこのピン、ずっとつけててよ。」

と思いながら。

なんでかって?

わたしが、森の中でれいと話したとき、れいはこのピンをしていなかったから。

このピンは、れいのトレードマークだったことを思い出したんだ。

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