大森さんはやりたい。
22時。
「じゃあまたね。次のデートも楽しみにしてる。」
と彼は最後に私の頭を撫で、手を振った。
家まで見送られたのはまだ夜の始まりのような時間帯で私には少し寂しく感じていた。
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大森 桜 25歳 私には悩みがあった。
なんで???
もう付き合って今日で3ヶ月。お互い未成年じゃあるまいしそろそろ良いだろ!!
そう、私は待っているのだ…彼が誘ってくるのを!
今日こそは夜のお誘いがあるだろうと毎回デートの日は可愛いランジェリーを身につけて、身だしなみを整えて普段は見えないであろう部分のムダ毛処理だって怠ることなくやっている。
でもどうしてだ!そんなに私に魅力が無いのか。1人暮らしの私に門限があるとでも思っているのか。もしかしてお前は童貞なのか。
デートが終わる度に起こるこの敗北感が今日はいつにも増して強かったのでやけくそになった私は家の冷蔵庫にある缶ビールを片手に今までの行いを振り返ってみた。
___2ヶ月前___
初めてこの家に彼を呼んだ時。結構良い感じだった。付き合って間も無くまだ初々しいキスをした日。
「ねえ、いい?」
「う、うん」
ソファーで映画を見てまったりしていた時、彼は私の肩を抱き寄せて私の顎に手を添えそっとキスをした。
最高だった。キスの途中なんならそのままお泊まりコースだって考えた。だけど
「今日は俺、帰るね。ありがとう。
大森さんの料理すごく美味しかった。また食べにきていい?」
「うん!いつでも来てね。」
違かった。軽いキス止まりだっだ。
まあまだ1ヶ月しか付き合ってないし?案外奥手なんだなあ、大事にしてくれてるんだなあとそんな気持ちで過ごせてたんだけれど。
___1ヶ月前___
金曜日の仕事終わり、ご飯に誘われた。
金曜日ということは明日お互い休み。
これこそ朝帰りチャンスだと思った私はその日、朝から準備し心構えをし一日中ドキドキわくわくして速攻仕事を終わらせ期待しながら彼に会いに行った。
「あ〜お腹いっぱい!今日はごちそうさま!」
「んーん!たまには格好つけないとね。」
「うふふ。ありがとう。
…今からどうする?」
「ん?家まで送ってくよ。夜道は危ないし、俺の大事な彼女誘拐されちゃったら困っちゃう。」
「え〜?誘拐されたく無いから今日は帰りたく無いなあ、もうちょっと一緒にいよ?」
「俺も帰りたくないなあ。大森さん酔ってる?飲みすぎちゃってない?」
彼をなんとなく誘惑しようとしたが綺麗に流され結局いつも通り22時に家に返された。どうしてかは分からない。この頃から手を出される日はいつなんだろう?と思い始めるようになった。
彼の容姿は色白の肌に綺麗にセットされたパーマ、そして世間からは塩顔と呼ばれるようなバランスがよく整ったお顔。
清潔感もあり私にはもったいないくらいだ。
「やっぱ釣り合ってないのかな。
もうやだ。奥手男子とか意味わかんない。」
ぐずぐず独り言を呟いて、気が付けば深夜0時。
手元の缶ビールは3本目になっていた。
眠いなあ。
___次の日___
酔い潰れてソファーで寝たはずが朝目が覚めるとなぜかベッドの上で寝ていて、横には昨日22時に解散したはずの彼の顔があった。
「え?」
びっくりしすぎて声がでたと同時に彼の目が開き、
「あっ起きた?」
と彼は、ん〜と伸びをして私に抱きついてきた。
「おはよう。お邪魔してます。」
「え?」
なんでいるの?なんで一緒のベッドで寝てるの?どうやって家入ってきたの?
寝起き早々頭をフル回転させるが昨日の記憶が全く無い。それに初めて見る寝起きの顔がカッコ良すぎるし、
「大森さん、昨日すごく可愛いかった。」
とか意味深なこと言うから余計理解が追いつかなかった。え?記憶無いけどもしかして昨日やったとか?彼との初めてはもっと大事にしたかった。
いや待ってそれはないか。と困惑していると
「もしかしてこれ覚えてない?」
「え!?」
彼の首にはキスマークがあった。
「朝からぎゅーとか俺幸せ。
ねむっこのままもうちょっと寝よう」
「え?」
え?という1文字しか話せなくなり、追い討ちをかけられるかのように頭痛と吐き気に襲われた。
「ごめん。気持ち悪い。」
「俺そんな気持ち悪い?ごめんね?」
「ちがっ、うっっ、吐きそう」
「だ、だいじょうぶ?」
いろいろやらかしてると思いながら一旦トイレに駆け込んだ。