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第5話 「怖い監視付きにはなったが」


 ――――バチンッ!


 「あ痛っ!」


 相変わらず静電気がひどい。


 ん? それよりもこれは……。


 僕の両手両足の親指には、白くぼんやりと光る枷が嵌められていた。ちなみに両手の方は背中で拘束されている。外せない。


 僕は状況が飲み込めず、薄暗い視界の中で確かめるよう周りを見渡した。


 背面は岩場。正面には通路が見える。通路の手前には両手両足の拘束具同様に白くぼんやりと発光する格子で阻まれていた。


 うん。きっとここはアレだな。牢屋だな。


 僕は状況を振り返り理解する。そして命があることに安堵した。


 『気がつきましたか?』


 不意に頭の中に誰かの声が響く。周りを見渡すが誰もいない。


 「誰ですか!」


 思わず大きな声で返事する。狭い岩場の空間に僕の声が木霊する。


 『気が付かれたようですね。今から参ります』


 しばらくして青白い光が通路の奥に見えた。


 それが近づいてくる。人の姿だ。顔が見える。女性だ。その後ろには男性二人がついている。護衛だろうか?


 彼らは格子の前で止まった。


 女性は、手持ちの杖とぼんやりと光る格子の光を浴びて、神秘的な美しさを見せていた。


 その瞳を例えるなら、まるでエメラルドの様だった。その白い肌を例えるなら、まるで雪の様だった。そして、その腰まで伸びる艶やかな髪の色は藤を連想させた。


 その美しい女性が、まるで手話でもするかのよう語りかける素振りを見せた。


 と同時に、先ほど頭の中に響いた声が聞えた。


 『あなたに私の言葉は通じていますか?』


 僕は頷く。


 今度はその女性の唇が動く。それとなく気品を漂わせながら。


 「&%&#▲%…………」


 優しく透明感のある声が聞こえた。だが、それを言葉として理解できない。僕はどう反応して良いか分からず、戸惑いを装い首を横に振る。


 『言葉が通じないのですね』


 また例の声が頭に響く。これで確信した。この声の主は目の前の彼女だ。


 僕は頷く。


 『今あなたに聞こえているのは私のクオタ、精神感応の能力です。あなたの精神に直接訴えかけています。これから幾つか質問をしますので、頷くか首を横に振るかで答えてください。いいですね?』


 僕は頷く。捕まっている僕に拒否権はないだろう。それからしばらくの間、僕は彼女の問に答え続けた。


 その中で得られた情報を整理する。


 どうやらここは、本当に僕の知る世界ではないらしい。『何処から来たのか?』の質問に、聞いたこともない国ばかりが挙げられた。


 そして、僕が捕まっているここはアーバニート。テアナ帝国の西端に位置する辺境の町らしい。


 僕にクオタ(特殊能力)の精神感応で話しかけてくれた彼女は、この町の領主で、名はヴェルーチカ。


 僕はこの町の開拓ギルドに所属するヴェルーチカさんの娘に「不審者」として捕まり、今この状況に陥っている。


 ちなみに開拓ギルドは、領主直轄の言わば「何でも屋さん」とのこと。その名の通り開墾や整地を主な生業としているが、町の警備や未開拓地の調査も引き受けているとのこと。その未開拓地の調査中に僕は「不審者」として捕まった訳だ。


 ついでに、こんな辺境の未開拓地でウロウロしているのは、スピリット(精霊物)かバンボラ(機械人形)、もしくは罪人だけとのこと。


 スピリットとは、僕のもといた世界でいう動物のことらしい。ただ大きく違うのは、エレメンターレと言われる火、風、水、土の四大属性精霊、もしくはアポストロと言われる神格の眷属であり、その属性のクオタ(特殊能力)を使うこと。狂暴なスピリットであれば、ところかまわず火の玉をブッパしてくるらし。


 またバンボラについては、古代人が古の神々と戦うために作った意思を持つ戦闘兵器らしい。非戦闘時は人の形状を模していることからバンボラ(機械人形)と呼ばれている。こちらはスピリットと違い、人に対して「壊れていない限りは」危害を加えることはないらしい。


 まぁ、以上の説明から、この辺境の未開拓地で「普通の人」はウロウロしていないことが分かった。そりゃ「不審者」扱いされる訳だ。


 それと、僕が拘束されているこの白くぼんやり光る両手両足の枷と格子は、クオタを阻害する材質で出来ているとのこと。相当強力なクオタを持っていない限り、この枷を付けている状態でクオタは使えないとのこと。


 この後、僕はヴェルーチカさんの精神感応と理解力救われ、この国の言葉「テアナ語」が分からないこと、迷子なこと、敵意が一切無いことを伝えることが出来た。


 ちなみに、ヴェルーチカさんの精神感応はウソ発見器にもなるらい。怖い。


 さてはて、やっとのことで僕の疑いは晴れた訳だが、ここからどうしてもやらなければならない、伝えなければならないことがある。


 そう、僕はこの世界で今を生きていけない。


 それを伝えるために、僕は必死でヴェルーチカさんに拘束状態にも関わらずジェスチャーで懇願した。そして、数十分に渡る格闘の末、なんとかこの町で働きながら住まわせてもらえることになった。


 怖い監視付きにはなったが…………。

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