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第十二話 「6月1日 “鏡”が写し絶望 前編」

 そんな…………鏡美先輩が…………


 木ノ原先生の車に乗り、たどり着いた“影”の発生地。そこには“なりかけ”となったばかりの鏡美先輩と、それに対峙する三人の姿があった。


「鏡美! 嘘だろ⁉」

「かがみ先輩! わたしの声を聴いて!」

「あっ、晴翔! こっちや!」


 俺はこころ先輩に導かれるまま鏡美先輩の正面に立つ。そんなことをしている瞬間も“粒子汚染”は進み続け、黒き影はどんどん巨大になっていく。


 俺も先輩に届くはずのない言葉を、届くように願いながら叫んだ。


「先輩! 目を覚ましてください! どうして…………」

「あいつ……っ、ぼーっとしていたんや」


 鏡美先輩が「ぼーっと」⁉ あり得ない。先輩がそんなことをするなんて。


「あーしと一緒に“影”と戦ってたんやが、アイツ急に『心ここにあらず』って感じで…………」

「先輩が、そんな!」

「そうやろ? あーしも鏡美がこんなことになったの見たのは初や」


 こころ先輩ですら初見だなんて、なんてイレギュラーなことなんだ。


 俺らが戸惑っているうちに、先輩の意思は“影”による破壊衝動に支配されていたらしく、形作られた巨大な槍を振り回し始めた。


「くっそ! みんな、攻撃するんや! 鏡美に当たらないようにきょーつけろ!」

「「「はい!」」」


 俺は剣を、力先輩は短剣を、もみじは大杖を、こころ先輩はハリセンを生成し、攻撃を始めた。しかし“なりかけ”の鏡美先輩は、俺らに対し自分の能力をいかんなく発揮してきたのだ。


 そいつは手(と思われるもの)を振りかざし、その瞬間、その巨体の隣に一つの“鏡”を生成した。


「あっまずい!」

「こいつは…………分身⁉」


 不幸にも力先輩の読みは当たり、その身体にそっくりのものが、一方の“鏡”から現れた。


「ふえた⁉」

「ああ、鏡美先輩の得意技だ。あの“鏡”は映っている指定の物体を一つミラーコピーできるんだ。しか“鏡”は“能力粒子”の尽きるまで、生成、維持し続けることができる」

「ってことは」

「そうや、アイツは…………左右対称の分身を多数作り出すことができるんや」


 分身も襲い掛かってきた。俺はその突きをさっとよけると、その分身が作り出された“鏡”に向かう。あれを壊せば…………


 分身が作り出された元の“鏡”を破壊すれば、その分身は消える。それがあの能力の弱点だ。鏡美先輩の能力は、そこまでの知能を基本的には持たない“影”には有効だが、対能力者ではあらかじめ“鏡”をつぶされてしまうことがある為、若干苦手らしい。


 俺はコンクリートのかけらを掴むと、その“鏡”に投げつける。そしてそれはどんどん速く、威力を増しながら“鏡”に向かっていく。そう、まなるさんの能力“直撃加速ストライク・ジェット”だ。


 しかし、それはそこまでのダメージを叩き出せず“鏡”に直撃してもヒビを入れる程度にとどまった。


「そうだった……っ、あの“鏡”そげえ硬かったんだ…………」


 舌打ちとともにつぶやく。横を見ると、もみじが伸ばした植物が分身を縛り付け、力先輩とこころ先輩は本体に攻撃し続ける。しかし二人の能力は攻撃向きでない上に、もみじの能力もいつか切れてしまう。このままちまちまかがみを攻撃し続けても、いつか限界が来てしまう。そうなったらジ・エンドだ。


 そんなことを考えていると、突然後方にいた木ノ原先生が叫んだ。


「まずいぞ! 見ろ! あれ!」


 先生が指さして方を見ると、その本体はまた手を振りかざし、いくつかの“鏡”を生成した。


「それは…………まずいよお…………」


 この後に起こることを察したもみじは絶句している。その瞬間予感は見事に的中してしまい、その“鏡”たちから次々と分身が生成されていく。


「そりゃ聞いてないぜ!」

「うっそやろ…………? 鏡美! こんなこともうやめるんや!」


 二人の先輩はうろたえ、もみじは絶望している。最悪だ。ひい、ふう、みい…………って六体! 本体ともともといた分身を合わせえるとなんとその数8体! あたまおかしい!


 確かに先輩は毎回これぐらい分身していたな。味方の時は本当に頼りになる能力だったが、敵になるとこれほどまでに絶望的だなんて。


「おいおい、むかってくるぜ、あいつら!」

「そんな、むりだよお。こんな数縛れない…………」


 もう勝てる可能性なんて1パーセントにも満たないだろう。負け確だ。しかも日の入りに間に合わなかった場合、この数が一気に闇に紛れ、街に繰り出すことになってしまう。そんなことになった場合、被害は甚大だろう。この都市が壊滅することだって見えてくるぐらいに。


「さいっあく!」

「私の研究、終わってないのに…………!」


 こころ先輩と木ノ原先生も悔しむ。どうしたらいいんだ⁉ このままいちいち“直撃加速ストライク・ジェット”で“鏡”や本体を攻撃していってもきりがない。だからと言ってさくらの時みたいに能力を奪って無力化できるか、いやいくら“治癒”によるオート回復があっても袋叩きにされてしまうと回復が間に合わず終わってしまう。無謀な賭けだ。


「どうすれば…………」


 ほかに俺ができる事、ないのか! “能力奪取”も相手の手を数秒間握ったままじゃないと発動しないし、使える能力も二つ。一方は火力になるが連続して使えないので今回は火力不足。もう一つは自分の回復に使えるが他人には使えない為、ここの誰かが致命傷を負った場合、助けることはできない。


 せめて“直撃加速ストライク・ジェット”を連続して使えれば。いや、まてよ? 確か翼と戦った時“治癒”を使いながらもう一方も使えたよな。つまり二つ以上の能力を併用できるかもしれない。そうなった場合、もしかしたら異なる“固有能力”を組み合わせることも…………?


 だとしたら。


「先輩! 俺の手を握ってください!」

「は? …………ってまさか!」

「そのまさか、です」


 これが俺の策だ! 先輩は俺に近づくと、戸惑いながらもそっと手を握る。


「こんなところでBLとかマジあり得へんわ!」


 こころ先輩が突っ込むがそんなことは気にしない。その様子を見て、木ノ原先生ははっと声を上げた。気付いたようだ、俺のすることに。


「まさか奪うのか⁉ 力の能力を!」

「はい! 奪います!」


 その瞬間、また手は輝き、俺に第三の力が宿った。


 いけるかもしれない…………“念動”と“直撃加速ストライク・ジェット”のコンビネーションで!


“生徒総会”まで残り25日


~続く~



VS鏡美先輩! やはりカギを握るのは“タロットカード”…………?

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