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第十話 「5月28日 念動力とロリと信念と」

「まったく、小学生は最高だぜ!」

「なんかどっかで聞いたことありますよそのセリフ!」


 解散後、俺は力先輩に誘われてある公園にやってきた。しかし当の本人が何を言い出すかと思ったら急にこれ。


「なんです? こっちも忙しいのに誘っておいて急に性癖暴露ですか?」

「いや、まあ仲間たるもの自分の秘密ぐらい話しておいたほうが」

「そんなのみんな知ってますよ」

「…………」


 俺が帰り支度をして帰ろうとしたとき、急にグイっと裾を引かれ強引にベンチに座らせられた。


「なんか飲み物おごってやるからさ、話付き合ってくれよ」

「俺がそれで先輩の性癖大暴露会に付き合うと?」

「だからこれは性癖暴露ではなくって…………あ、ほら見ろよあの幼女。シーソーにスカートのまま乗っているからマジで見えるぜ眼福だろ?」

「帰ります」

「あ、ほんと! それじゃないから! 見放さないで!」


 やだ、この人の将来が心配だ。なんか関係者だと思われたくない。


「俺、早く帰ってある犯罪者について通報しなきゃですから」

「それ絶対オレじゃねーか! オレが捕まったらいよいよサイキック部復活なんて夢のまた夢になるぞ!」

「話を聞きましょう」


 くそっ、タチが悪いなこの人。確かにここで通報したらサイキック部復活できないし、武笠学園も防衛できない。地味にこの人重要な立ち位置にいるからなあ…………


「というわけで、好きな女児のタイプ言ってみよう!」

「やっぱ通報しますこの犯罪者予備軍」

「まじでやめて!」


 俺は半分呆れを含んだ溜息を吐き、スマホを操作し始める。その様子に先輩は慌ててスマホに“念動”をかけた。


「うわああ! 浮く浮く! スマホにつられて俺も浮くって!」

「おろして欲しけりゃ操作をやめろ!」


 さすがに数十メートルから落下させられたら“治癒”が発動する前にぽっくり逝ってしまう為、操作を渋々やめた。


「それでよい」

「卑怯だあ!」


 その後無事に地面に戻された俺は先輩に飲み物二つを要求した。そしてしばらく先輩と自販機に行って飲み物をそれぞれ購入(先輩の金で)すると、さっきのベンチに戻りまた話し始めた。


「ほんとは違う話だ、今後のことについてな」

「今後…………」


 確かに今後一か月間、俺らがやらなきゃいけないことは山積みだ。サイキック部に上層部との対立、それに俺の“目的”そして正義翼。考えただけでも頭痛くなる。


「まあ、まずはな…………いつもありがとな」

「⁉」

「ほら、いつもサイキック部復活に協力してくれて、それにさくらと正義翼の事とか。お前はオレが知っているとこ知らないとこでいつも戦っているし」

「…………なんですか急にほめて。機嫌取りですか? キモチワルイ」

「ちがうって! どれだけオレの事信頼していないの? あたり強いぞ今日のお前! さくらぐらいあたり強いぞ!」


 なにせ今日の気持ち悪さは頭飛びぬけているからな。正直軽蔑の域をはるかに超えている。


「ほんとに今回はマジで感謝してるんだ」

「マジっすか? それはそれで…………」

「気味、悪いだろ?」


 先輩はそっぽ向いている。どうやら本心みたいだ。なんだかこれ以上あれこれ言うのもやめておこう。


「すいません、先輩今度はBLに目覚めてしまったかと」

「ロリコンのBLってなんだよ! 性癖盛りすぎだろ!」


 やべっ、また余計なことを。


「つか、本題はこれじゃなくてな…………」

「今後の事、ですね」

「ああ、そこでもっとも優先すべきことなんだが」

「鏡美先輩、ですね」

「そうだ」


 そう、今後のことについて優先して取り組むこと。それは元サイキック部部長である鏡美先輩への“説得”だ。鏡美先輩には“生徒総会”に登壇してもらわなくちゃいけないし、部が復活した場合、能力者を率いてもらわないとだし。


「鏡美、オレが話しかけても知らんフリだし」

「でもさくらの時は来てくれたりだったから、完全に俺たちを見放したわけではないですしね。ますますわからん」

 

 サイキック部については絶対反対するのに、俺らがピンチの時はどこからともなく現れて助けてくれる。行動原理が正直分からない。


「たぶんアイツはオレらの事を一番に心配してくれていると思う。でも“サイキック部に対しては”何か彼女なりに何かある気がするんだ」

「何か…………ですか……」


 サイキック部に対しての何か。そういえば確か鏡美先輩、部を去るときに何か言っていたな。確か


「『続けたって、何も守れないもの』」

「そうだ、きっとそこに何かのヒントがあるのだろう。彼女が抱えているものの」


 何も守れない…………、それって


「響先輩のこと、ですかね」

「ああ、オレもそう思うんだ。でもな」

「なにか? ほかにもあるのでしょうか」

「響が死んでからあの月まで数か月あったんだ。その間鏡美はあまり陰りを感じなかったんだ。もっと言えば()()()()()()()()()()。そして陰りを感じたのは廃部数日前からだったんだ。その直前に何かがあった。それがきっとカギだ」


 なるほど、つまりトリガーは響先輩の事ではなくその後の事。


「とまあ、いろいろ言ったが、鏡美がオレらの事を気にしてくれているというのは事実だ。そこだけは、わかってくれ」

「先輩…………」


 不覚にも、かっこいいと思ってしまった。ここまでサイキック部復活に協力してくれて、アドバイスしてくれて。なんだかんだ頼りなんだな、と。


「ところで先輩、先輩がそこまでサイキック部に執着する理由、聞かせてもらえませんか?」

「え? なんでだ?」

「どうしても、聞きたかったので」


 俺は知りたくなった。念動力という人間の思想を、ここまで味方してくれる理由を。


「そうだな、オレをここまで動かしているワケは…………」


 先輩が前方に目を向ける。そこには元気に遊ぶ、小学生たちの姿があった。


「ここにある笑顔を守りたいから、かな」

「かなりありきたりですね」


 もっとなんか変わったものかと思っていた。先輩は俺の言葉に対して少し首を振ると、もう一度語る。


「ありきたりでいいんだよ、戦う理由なんて」

「ありきたり、ですか」


 俺の“目的”もある意味ありきたりかもしれないな。たしかに戦うのにそこまで複雑な理由は必要ないかもしれない。


「だからさ、その機会に少しでも多く遭遇するように、サイキック部を復活させたいんだ」

「みんなを助ける…………機会」


 翼が特別警察委員を選んだように、先輩にもまた信念がある、か。そして、どこからともなく聞こえてきた泣き声に、ふと目線を変えると俺の目の前にいた少女が風船を手放して、それが木の枝に引っかかってしまった。


 その様子に先輩が微笑を浮かべると短く「すまん」とだけ言って、その風船に“念動”をかけ、少女の目の前まで持っていった。


「…………今でも、十分守れてるじゃないですか、笑顔」


 俺は満面の笑みを浮かべた少女を見ながらつぶやいた。それに先輩はこくりと首を縦に振ると、次は俺のほうを向いた。


「どうだ、これがワケだ。」

「そうですね」


 ははは……とお互い笑いあう。そして先輩は真剣な顔をして語った。


「でもオレはもっと多くの笑顔を守りたい。その為にこれからも、協力してくれるか?」

「…………はい。よろしくお願いしますね」


 俺たちはお互いうなずく。


「つーかさ、今すげえこと気が付いた」

「なんでしょう?」


 俺の問いに対して先輩は、穏やかな表情で言った。


「あの風船幼女、好みかもしれねえ」

「通報しますね」


 一瞬でも尊敬してしまった俺が馬鹿だった。そういやこの人の行動原理をわかりやすく言うと「ロリのにんまり顔だーい好き」だもんな。やっぱ今のうちに痛い目見せなきゃ。


 その日は夜になるまで、ずっとスマホ争奪戦に勤しんでいた。


“生徒総会”まで残り28日


~続く~


今回は力先輩掘り下げ回でした!

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